フロントランナーの視点 Vol1
『FUJIMARU』藤丸智史さん

フロントランナーの視点 Vol1『FUJIMARU』藤丸智史さん

今ある"資源"を生かし、投資をせずに新たなサービスを生み出す

14年前、ワインショップとして歩みだした『FUJIMARU』。代表・藤丸智史さんは、ワイン商でありながら、ブドウ栽培や醸造、レストランに至るまで、あらゆる事業を展開する。ワインショップを始め、飲食店8店舗、ワイナリー2軒を経営する中、緊急時にどう動いたかー? 3回シリーズでお届けする。(文・船井香緒里)



『ワインショップ&ダイナー FUJIMARU 東心斎橋店』2Fにあるダイナー。緊急事態宣言時は、ネット&電話注文限定のテイクアウトを実施。

3月30日、フジマルグループは、東京2店舗の休業を皮切りに、緊急事態宣言前にはテイクアウトを実施する1店舗『ワインショップ&ダイナー FUJIMARU 東心斎橋店』だけを残し、他の全店舗を閉鎖した(〜5月末まで)。また、ワインや加工品を販売するショップ部門は、オンラインのみの営業へ移行。それ以前にも、自社での対策は抜かりがなかった。

1月中には、商業施設で働く全スタッフ・営業や配送メンバーのマスク着用、そしてアルコール消毒の携帯を義務化。2月末には、妊婦や小さな子どもを持つ女性スタッフを一時帰休させた。「衝撃的に増える感染者、飛び交う不確定な情報、国や政府の対応も右往左往していたから、自分たちで自衛をするしかなかった。いずれにしてもスタッフを危険に晒すことだけは避けたかった」と藤丸さんは話す。

フジマルグループは、何もしなくても人件費や家賃といった固定費だけで、毎月3〜4千万円は消える。切実な問題が山積みの中、「自分自身に課したことは"思考を止めないこと"でした。進まない行政からの支援にもがきながらも、自粛営業中に"今できることは何か"を考え、一つ一つ進めたのです」。

「オンラインソムリエbyフジマル」

まずは自社オンラインショップの"見直し"と"活用"を始めた。「感染拡大の危機感を持つまで、真面目にネットショップをしていなかった...」と藤丸さんは苦笑する。なぜならワインは業務卸と、対面販売の小売りが主だったから。2月中旬から本腰を入れ始め、ワインの小売りをオンラインへシフトしていく。


店と客とがLINE上で向かい合う「オンラインソムリエbyフジマル」。メッセージを入れ、1分も経たないうちにソムリエから返信が入る。

時を同じくして、LINE公式アカウント「オンラインソムリエbyフジマル」を立ち上げた。お客が友達登録すると、まるでお店へやって来たかのように、LINE上でソムリエに相談しながらワインを買える、画期的なオンラインサービスだ。ソムリエの資格を持つスタッフが在宅で仕事。お客さんからLINEが入ったら担当者がすぐにアクション。コメントの中から、好みやどういうシーンで飲まれるのか?などを伺いながら、ワインを提案し、購入が決まったら、ネットで決済するという仕組み。LINEでの迅速なやりとりに、"AIがやっていると思っていた"と驚くお客もいたそうだ。

「私達にとって、新たなショップの始まりでしたね。今まで、実店舗で一本一本、手売りに近い形を取っていたから、違和感なく進めることができたのかも」。お客さんも然りである。これまで店舗に出向いていた方々がほぼ全員、ネットショップを覗きに来てくれたそう。なかでも、いつものようにスタッフと会話したい方がLINEを活用した。現在、登録者数は1100名以上。驚くことに、4月のネットショップ売り上げは、去年1年間の通販の売り上げのなんと、2倍に。「オンラインソムリエからの流入に至っては4月分の粗利だけで、従業員1人程度の1ヶ月分の給料に。これからも細々と続けつつ、第2波に備えていこうと思っています」。


講師の木村有希さんは、東京・下北沢で一日一組限定の『レストラン マナ』を開いていた。1000組を達成した13年に閉店。同年、藤丸さん率いる株式会社パピーユ入社。現在、子育てをしながらフジマル飲食部門を陰で支える敏腕ディレクター。

「Zoom料理部」始動

"オンライン"といえば、3月から「Zoom料理部」を開始した。「もともと、実店舗で開いていた料理教室をオンライン化しました。講師は、フジマルが東京に出店した時の立ち上げメンバーであり、料理ディレクター・木邨有希が担当しています」。木邨さんは現在、北九州市在住だがZoomなら距離は関係ない。4〜8人の少人数制。双方向にやりとりする、通常の教室に近いレクチャーが繰り広げられる。さらに。東京在住のソムリエが、ペアリングなどについての説明を行うのも、フジマルグループならではの強みだろう。ネットショップを持つ強みを生かし、レッスンで使う食材の一部や、ペアリングするワインの販売も行う。

「ワインを日常に」という軸からブレることなく、再び来るかもしれない営業自粛に備えた、藤丸さんならではの視点。「最も重要だったのは、今ある資源を生かし、どう連携させて新しいサービスを作るかでした」と、藤丸さんはきっぱり。大きな投資をせずして、いかに新しいビジネスモデルを構築できるか? 藤丸さんならではの提案は、まだまだ、止まる所を知らない。

会社情報

株式会社パピーユ
https://www.papilles.net/

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『FUJIMARU』藤丸智史さん

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