【連載】フロントランナーの視点
『パティシエ エス コヤマ』小山進さんVol.1

【連載】フロントランナーの視点『パティシエ エス コヤマ』小山進さんVol.1

行列必至の店に「絶対に人を集めてはいけない」
一歩先を読んだ、小山進のアクションとは

兵庫・三田から世界へ向け、ものづくりのクリエーションを発信し続ける『パティシエ エス コヤマ』。年間約100万人のお客さんが訪れるパティスリーも、コロナ禍で状況は一変。オーナーシェフ・小山進さんは、4月中旬から2週間強の臨時休業に踏み切った。5月以降、段階的に営業を再開し、本格的に動き始めたのは7月。長期にわたり店舗販売を自粛する中、未来を見据え、小山シェフが起こしたアクションとは? 3回にわたりお伝えする。


『エスコヤマ』は、"お客様に集まっていただける場所づくり"を大切にしていました。しかし、衝撃的に増える感染者の情報を目の当たりにする中、絶対に人を集めることはできない...。イチからやり直す勢いで、行動を起こしました」。当時を振り返る、小山シェフの表情に悲壮感はない。なぜなら、「コロナ禍を経験しなかったら、考えもしなかったアイデアがどんどん出てきたから」。いかなる状況においても、小山シェフはネガティブを原動力に、行動を起こす人。そこには、お菓子好きのお客様、さらには地域の人たちへの想いが込められていた。

スペシャリテを地域住民へ「配達」。「ドライブスルー方式」の販売も

臨時休業が明けた5月1日から1ヶ月間、店頭販売は行わず、3つのサービスを軸に展開した。

  • 1.「地域限定の配達サービス(es-DELI DIRECT)」
  • 2.「ドライブスルー方式による駐車場での商品お渡しサービス(es koyama FACTORY to CAR)」
  • 3.「オンラインショップ(お取り寄せ)」

5月に実施した「配達サービス」は、3営業日前の18時までの予約受付とし、製造ロットや人員配置などを調整。同時期に行なった「駐車場での商品受け渡し」は当日、ドライブスルー方式の注文も可能に。いずれも、オンラインショップで予約・決済ができたため、その手軽さもウケた。

「配達サービス」は、三田市内、神戸市北区の一部エリア限定で5月2日からスタート。「地元の方々に、改めて『エスコヤマ』を"自己紹介"しようと思ったのが、デリバリー発案のきっかけ」とシェフから意外な言葉が。なぜなら、「いつも混んでるから買いに行けない」「近くて遠い店」といった地域住民からの声を、度々耳にしていたから。「こんな状況下だからこそ、僕が一番食べて欲しいスイーツを近所の方々に届けたい」。例えばそれは、「小山ロール」、「小山ぷりん」といったシェフ自慢のスペシャリテ。また、パティシエが創ったクリームパンなど、ブーランジュリー部門の名物から、卵アレルギーのお客さんに向けたケーキセットまで、多彩な顔ぶれ。「注文が多い日は、スタッフ10数人が自家用車で走り回りました」。1日に200件近いオーダーが入った日は、付き合いのある運送屋がヘルプに来てくれたことも。約1ヶ月の注文件数は、全2181件。コロナ禍だからこそ実現した、「改めての『エスコヤマ』の自己紹介」。商品の中には、買い手がなくなった平飼い鶏の白い卵を使ったバウムクーヘン「つながりのホワイトバウム」はじめ、「生産者を応援したい」という想いから生まれたメニューも多数。その美味しいメッセージが、近隣の人々へ伝わった好例といえる。

「小山流バウムクーヘン~つながりのホワイトバウム~」1404円(Sサイズのみ)。「人と農と食とアート」がテーマのサステナブル ファーム&パーク「クルックフィールズ」(千葉県木更津市)の平飼い鶏の卵をふんだんに使用。誕生のきっかけは、クルックフィールズの総合プロデューサー・小林武史さん(音楽プロデューサー/キーボーディスト)との繋がりから。白っぽい黄味、その見た目から想像もつかない、コク深い味わいが印象的。

一方、駐車場での商品受け渡しについては、「飛び交う不確定な情報も多い中、今だからこそできることを」と、こちらも5月限定で実施。スタッフが駐車場に待機し、商品のお渡しから支払いまでの対応を行う、事細かなサービスである。地域限定の配達サービスと同様に、商品紹介は自社オンラインショップを活用。そのサイト上では、「配達」「受取り」と「お取り寄せ」のコーナーに分け、各アイテムをシズル感ある商品画像とともに紹介し、オンライン決済も可能に。FacebookやInstagramで毎日発信し続けた事で、即時性と拡散力を生み出した。『エスコヤマ』のスタッフ一人一人を介した「アナログ」と、デジタルの融合により「誰もやっていない事」をやってのけたのだ。
余談だが、地域の自治会には、『エスコヤマ』管理部門のスタッフが必ず顔を出す。「自治会へのヒアリングはもちろん、社としてどのような取り組みを行っているのかを報告します」とシェフ。例えば、警備員の配置について。またGWやお盆休みなど大型連休のときには、従業員駐車場を開放し臨時駐車場として使用。その駐車場と店を結ぶシャトルバスの、ピストン運行のスケジュールも知らせるという。「バスの運行情報は、チラシにして近隣住民へのポスティングも行います」。『エスコヤマ』には、県内外からお客様が訪れる。「地域住民との繋がりがあってこそ店が存在します。だからこそ慎重にならないと」とシェフはきっぱり。コロナ禍においても、徹底した対策が、至るところで行われていた。(文・船井香緒里)

シリーズ第2弾、「オンラインショップと小山流デジタル活用」へと続く。

駐車場受け取りと、近隣への配達の限定品として、初めてセット販売を行なった。「季節野菜を使ったパン&キッシュセット」も生産者応援のアイテム。宮崎県産スイートコーンと藤原農園さんの季節野菜のタルティーヌ/藤原農園さんの原木しいたけをたっぷり使ったタルティーヌ/宮崎県産のスイートコーンをたっぷり使ったキッシュ(1421円)。※現在は販売なし

「パティシエ エス コヤマ」
https://www.es-koyama.com/

【連載】フロントランナーの視点
『パティシエ エス コヤマ』小山進さんVol.1

この記事をSNSでシェアする

【連載】フロントランナーの視点『パティシエ エス コヤマ』小山進さんVol.1

あわせて読みたい