【連載】フロントランナーの視点
『FUJIMARU』藤丸智史さん Vol.2

【連載】フロントランナーの視点『FUJIMARU』藤丸智史さん Vol.2

小規模生産者の食材を、絶やさない取り組み。

「たとえレストランにお客様が戻らなくとも、僕らが食材の流れを止めたら、事態収束後に困るのは自分たち。今もなお、その考えがあります」とは、ワインショップ『FUJIMARU』代表・藤丸智史さん。ブドウ栽培やワイン醸造、さらにはレストランを展開する彼が、緊急事態宣言前には1店舗だけを残し、他の7店舗を休業。その際、東心斎橋『ワインショップ&ダイナー FUJIMARU東心斎橋店』をテイクアウトのみの営業にした理由は、生産者からの仕入れをゼロにしたくなかったから。あの時どうアクションしたのか?さらに。ミナミの一部地域だけの休業・自粛営業要請が解けた今、どう動いているのか? 藤丸さんに話を聞いた。


「『FUJIMARU』では、小規模生産者の食材を大切にしていきたいという思いがあります」。そう言って、藤丸さんは真剣な眼差しを見せる。グループの特徴の一つといえば、大阪・松田牧場「なにわ黒牛」や、岩手・石黒農場「ほろほろ鳥」など、大手の流通にのることが少ない食材を扱っていること。「畜産は餌代など経費がかさむし、肥育日数には限りがあるから止めることができない」。緊急事態宣言中は、東心斎橋店のみの営業だったため、「生産者には本当に迷惑をかけました」と言うが、「3月中に『食肉製品製造業』を、4月中旬には『そうざい製造業』、『食品の冷凍又は冷蔵業』の免許を取得しました」。




(撮影/下村亮人)

そうして4月に始めたのが、生産者応援セット。ある日の「テイクアウト・コース」なら、鳥取産の猪テリーヌ、北海道『村上農場』のジャガイモを用いたポテサラなど作り手のストーリーが窺える4〜5品の前菜盛合せをはじめ、メインは京赤地鶏骨付きモモ肉の軽い煮込み。さらには同店4Fで自家栽培するフレッシュバジルを用いたパスタ・ジェノヴェーゼなどコース3皿にて提供(現在は別メニューを販売)。小規模生産者の食材満載の料理をコース仕立てで。しかも1人前2500円という良心価格で味わえるだけあり、地域住民を中心に需要が広がった。デリバリーに関してはワイン配送の強みを生かし自社で。「他社の出前代行も行いましたが、毎朝検温して健康状態をチェックするうちのスタッフだと安心感があると思って。忙しいときは、僕も自転車を走らせましたね」と当時を振り返る。
"飲食店を応援したい"、"その向こうの生産者を応援したい"。そんな思いを持つ食べ手と、料理人、生産者の美味しい連鎖が生まれた好例といえよう。

テイクアウトやデリバリーなどと並行して、ネットショップでは生産者から届く肉の販売も始めた。「なにわ黒牛」なら、「ローストビーフキット」として、赤身ブロック肉(500g)に特製スパイスソルト、肉を縛るタコ糸、さらには料理長・香原勇気さんのレシピを付けて販売。また、調理のコツを的確にまとめたレシピ動画も作成し、YouTubeで紹介。「ステイホーム期間中、プロの味を皆で一緒になって作り、味わうことができました。美味しい料理を食べて生産者を応援できるのが嬉しかった」とは、小学生の子を持つ、若いご夫婦談。現在、オンラインショップではさらに進化を遂げている。それについては第3弾で紹介させていただくとしよう。


なにわ黒牛ローストビーフキット4320円。赤身ブロック肉(500g)に、オールスパイス、コリアンダーシード、乾燥ローズマリーなどを磨り潰し、「海人の藻塩」とブレンドした特製スパイスなどが付く。YouTubeのレシピ動画も必見。
https://www.youtube.com/watch?v=1WtstDsfLSc現在、なにわ黒牛の一頭買いは行なっていない(店舗の席数減の兼ね合いで消費量が減ってしまったため)。そこで視点を変え、牧場にワインの取引先であるレストランを紹介。各店に情報をシェアすることで、消費に繋げている。

春の兆しを感じることが少ないまま、長い梅雨が終わろうとしていた8月。街に少しだけ活気が戻ってきた矢先...。再びミナミの一部区域のみ、休業・営業自粛要請というニュース。「ただでさえ小さな店。スタッフの安全と感染症対策マニュアルを遵守した結果、席数は約半分...。その上、炭焼きとワインのお店で20時までの営業だと、正直、まともな売り上げも見込めない」と、東心斎橋店ではレストランを休業し、8月21日に営業を再開。しかし街に客足が戻るのはいつになるのか...。「遅い時間の来店を見込むことができない」と、新たに昼営業をスタートさせた。「4月から始め、日々精度が上がってきたテイクアウトをなくすのはもったいない」。
「石黒農場」のホロホロ鳥・コンフィはサラダ仕立てで。「なにわ黒牛」のボロネーゼ(乾麺付き)や、京赤地鶏の炭火焼丼など15種近い単品メニューのテイクアウトを、今なお続けている。
(撮影・文/船井香緒里)

会社情報

株式会社パピーユ
https://www.papilles.net/

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