【連載】フロントランナーの視点
『パティシエ エス コヤマ』
小山進さんVol.2

【連載】フロントランナーの視点『パティシエ エス コヤマ』小山進さんVol.2

小山流、"今"を捉える
SNSでのファンづくり

外出自粛ムードが一気に高まったあの時。『パティシエ エス コヤマ』オーナーシェフ・小山進さんは、あらゆる施策をスピーディーに打ち出してきた。地域住民へのスイーツ配達、ドライブスルー方式の商品受け渡し、オンラインショップの強化...。「コロナ禍を経験しなかったら、考えもしなかった」アイデアを体現する中、小山シェフのオリジナリティが顕著に現れたのが、「デジタル空間の活用」だ。


「お客様に集まっていただける場所づくり」を大切にする『エスコヤマ』に、人を絶対に集めてはならない状況が続いた2020年春。「今、僕ができることは何なのか?」と小山シェフは思案し、一つの結論を出した。「お菓子が好きな人へ向けて、何か役立つことを実践しよう」。
お菓子教室を定期的に開催し、時には小中高大など教育の場で生徒たちへ、あるいは企業での講演など、毎日のように人前で喋っていたシェフが、コロナ禍で話す機会をすっかり失っていた。そこで小山シェフは考えた。「ミュージシャンが曲をリモート配信する感覚で、SNS発信しよう」。
高校時代はハードロック・バンドでギターとヴォーカルを担当し、今でも年に数回はライヴをする、小山シェフならではの発想である。そうして、自らのインスタグラム・アカウントで(@es_koyama)ユニークな発信を始めたのだ。


インスタグラムでのレシピ&動画配信『小山進1人でステイホーム企画』。ご家庭で入手可能な材料を使い、作り上げたスイーツの数々。「お客様のリクエストに応えはじめたら2ヶ月で50種ほどに」と小山シェフ。

その一つに動画配信がある。単に自社商品を紹介するのではない。きっかけは、給食がストップして牛乳が余っているというニュースがあり、「牛乳を使ったレシピを教えて下さい」というメッセージをいただいたことだった。「僕たちもお店を閉めていたし、いつものように牛乳は使えない。だったら全国のスイーツラバーの皆さんにたくさん使っていただこうという考えです。自粛期間中に、お菓子好きの人を増やしていきたい」と、【小山進1人でステイホーム企画】を実施。レシピ紹介と共に、動画ではシェフ自らが作り方を詳しく解説。ある日は「皆さんからのリクエストが多いシフォンケーキを作ります!」とメッセージ。「ステイホームの時間を僕も楽しみたいから」と、ヨーグルトとオリーブオイルという意外な組合せのシフォンケーキを、実践しやすいレシピで紹介。他にも「完熟バナナケーキ」、「キャロットケーキ」などシリーズは、4月24日から5月末まで、ほぼ毎日実施した。大がかりなデジタル機器を用いているのではない。「僕のiPhoneを三脚にセッティングし、撮影していただけ」とシェフは笑う。

フォロワーからの事細かな質問にも、自らが丁寧に返信を入れた。時にはフォロワー同士がコメントし合うこともあり、「小山シェフのファン」のみならず、お菓子作りが好きな人々のコミュニティの場として活性化。そうして回を重ねるごとにフォロワーはうなぎ上りに。「4月に動画配信をはじめ、10月時点でフォロワーは3.1万人増えました」と、シェフは嬉しそう。現在は【NEXT ACTION! たまに小山進レシピ公開企画】として、不定期だが動画配信を続けている。
「クチコミというものを実感しましたね」と小山シェフ。なぜなら「#小山進レシピ」というハッシュタグで、フォロワー自らがお菓子を作り上げ、個々に発信するなど、さらなる広がりが生まれたから。自社の売り上げにすぐ結び付かなくとも、小山シェフの想いの根底にあった「お菓子が大好きっていう人たちを増やしたい」という熱量が、お菓子好きのファンからファンへ、派生した好例といえよう。



【小山進1人でステイホーム企画】から生まれたスイーツの数々。「ご家庭でもできるお菓子の簡単レシピ」を配信する中で、大変反響の大きかったロールケーキを商品化。胡桃と栗のロールケーキ400円(写真上)。「#NEXTACTION小山ぷりん~平窯低温100分焼き~」単品324円、4本入り1404円、6本入り2160円。

インスタグラムで動画配信をする中、「本当はどんな味?」「本家本元の味を確かめたい」といった声も寄せられた。結果、商品化したお菓子も多数ある。その一つが「胡桃と栗のロールケーキ」だ。卵の風味豊かなふわふわとした生地、そして栗とクルミのどこか懐かしい味わいで、「古き良き時代の思い出を胸に、これから新しい時代を作り、生き抜いていく力になれば」という思いが込めている。また、「ステイホームではなく、生きていくために次のアクションを」と、6月には「#NEXTACTION小山ぷりん〜平窯低温100分焼き〜」の販売をスタート。それぞれの商品には「ウイズコロナを意識しながら、様々なことに参加していこう」という、小山シェフならではのメッセージが宿る。

それら商品の魅力は、自社サイトのみならずインスタグラムでも丁寧に発信する。「エスコヤマオンラインショップ@eskoyama_online_shop」に注目してほしい。インスタグラムの「ショッピング機能」を利用しており、気になる商品をタップすると、ダイレクトにエスコヤマのオンラインショップ内にある商品ページに飛び、スムーズな購入が可能に。このように、ユーザーにとっての使いやすさを考慮するなど、消費行動の変化に対応したデジタル化も、ウイズコロナを生き抜くための大きな課題といえよう。
(文/船井香緒里)

「パティシエ エス コヤマ」
https://www.es-koyama.com/

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小山進さんVol.2

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