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【レシピ付き】大阪・北新地の天ぷら店『ぬま田』沼田和也さん作 赤酒を使った料理

予約が取れない大阪・北新地の天ぷら店『ぬま田』。店主・沼田和也さんは、全国から極上の食材を厳選する中で、自然と自身の出身地・熊本の食材を組み込むようになったと話します。中でも、最近のヒットは熊本・和水(なごみ)町で醸される『花の香(はなのか)酒造』の日本酒と赤酒。今回は、「調味料としても素晴らしい!」という赤酒の料理を教えていただきました。

文:阪口 香 / 撮影:東谷幸一

目次


赤酒を調味料として使えば“キレ”の良い料理に

赤酒とは、もろみに木灰を投入して保存性を高めた日本古来のお酒のこと。熊本では、お屠蘇(とそ)やお神酒(みき)、祝い酒、あるいは料理酒として今なお愛され続けている。

日本酒の「産土(うぶすな)」で注目を集める『花の香酒造』では、2022年11月、伝統製法を用いて徹底的に味わいを追求した赤酒を発表。近年、多くの赤酒が醸造用アルコールやうま味成分を添加して製造される中、米と水、木灰のみで造り、極めてきれいな味わいを引き出すことに成功した。

fea0324b『花の香酒造』の赤酒。2019年の赤酒免許取得から毎シーズン醸されてきた4シーズン分をアッサンブラージュした2021ヴィンテージ。貴腐ワインを思わせる気品あふれる味わいが楽しめる。(撮影:竹内さくら)

その噂を聞いていた大阪・北新地の天ぷら店『ぬま田』の沼田和也さんは興味津々。7月、取材班と共に『花の香酒造』へ訪れ、そのこだわりの造りや杜氏・神田清隆さんの想いに感銘を受ける。

「子どもの頃から慣れ親しんでいた赤酒とは全く違います。ソーテルヌのようなデザートワインの代わりになるし、チーズやバニラアイスと共にいただくのもいいかもしれません」。

一方で、調味料として使うメリットもあると話す。「最大の特長は“キレ”。コース料理の場合、甘ったるさや雑味があると流れが悪くなります。『花の香酒造』さんの赤酒は余計なものが入っていないので、料理酒やみりんの代わりに使えば素材の味を引き立て、スッキリとした後味に。また、貴腐ワインにも似た複雑な香りがあるので、風味も良くなりますね」。

帰阪後、赤酒を調味料として使った料理を試作。合わせ酢に利かせた「うざく」と、タレにした「エビバーガー」のレシピが完成した。

合わせ酢に赤酒を利かせた「うざく」

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『天ぷら ぬま田』で8月の先付として提供される「うざく」。
鰻は熊本・有明海で獲れる天然の海鰻で、甲殻類などをエサとするため旨み濃厚、身の弾力も強靭。合わせるのは、海鰻の存在感に負けないよう、キュウリではなくセロリをチョイス。

「普段は、マグロと昆布からとっただしに米酢・薄口醤油・酒・みりんを合わせるのですが、今回は酒とみりんの代わりに赤酒を使います」。量は、酒とみりんを合わせるのと同量。赤酒の風味を利かせたい場合は、少し多めに入れてもいいという。

いただくと、味わいの主役はあくまでも海鰻。セロリが食感と香りを添え、赤酒の存在感は実にささやか。だが、合わせ酢を飲み干した後もスッキリ爽やかであるところに、赤酒の効果を感じられる。

「うざく」のレシピ

セロリは筋を取って薄切りにする。サッと塩茹でし、昆布を加えた塩水に浸けておく。
マグロ昆布だし、米酢、薄口醤油、赤酒を16:1.2:1.2:1の割合で合わせ酢を作る。
捌いた鰻に串を打ち、両面に塩を振る。熾した炭で皮側→身側→皮側→身側の順に焼く。

fea6864d海鰻の場合は皮が硬いため、焼く前に細かく庖丁を入れておく。炭で皮側を焼いた後も串などで穴を開け、食べやすいようにしておく。

①の水分を切って②で洗い、水分を切る。再度②を注ぎ、金ゴマ・③の鰻の細切りを適宜加えて和える。

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器に、短冊に切った③を2カン盛り、④の具材をのせ、残った合わせ酢を注ぐ。

赤酒のタレが決め手の「エビバーガー」

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『ぬま田』の系列店『天星』で人気の、天ぷらを使ったミニバーガー。「アジや穴子を主役にしたり、秋には月見バーガーも。コース中盤でお出しするのですが、盛り上がりますね」。

定番のエビバーガーは、天然のクルマエビを使用。かき揚げにした後、赤酒を使ったタレにくぐらせる。「煮切ったら適度な粘度が出るので、煮詰めなくてもいい。赤酒や醤油の風味が損なわれません。また、やはりこちらも食べた後に余計な甘さが口中に残らないので、天ぷらの合間に出してもくどくならないんです」。

玉ネギのマヨネーズ和えと共にバンズに挟んで提供。沼田さんの言葉通り、タレの甘さは喉を通るとスッと引き、マヨネーズの酸味が爽やかに鼻を抜ける。

「エビバーガー」のレシピ

赤酒をひと煮立ちさせ、アルコール分を飛ばす。火を止め、濃口醤油を約1/7量加えて混ぜる。
玉ネギをみじん切りにし、マヨネーズで和える。
クルマエビは殻を剥いてぶつ切りにする。天ぷら衣を絡めて太白ゴマ油でかき揚げにし、①にくぐらせる。

fea0001g『ぬま田』の衣は、全卵と水に少量の小麦粉を加えたものを使う。

直径約4㎝のパンを横半分に切ってオーブンで焼き、下側のパンに②、④をのせて、上側のパンで挟む。

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赤酒とアイスクリームは、テッパンの相性

fea6988iクネルしたアイスクリームに、サツマイモの天ぷらを添え、赤酒をかけて。

上品な甘さの赤酒は、アイスクリームにかけると極上のデザートに。「ラム酒と同じように使ったらいいと思います。ラムレーズンやカヌレに使うと、風味が変わって面白そうです」と沼田さん。

以上の3メニューは、9/12(火)に行われるイベントでも提供。ぜひ、ご応募ください!

fea6958j沼田和也さんは1985年、熊本・天草出身。高校卒業後、辻󠄀調理師専門学校に進学し、日本料理店を経て26歳でカジュアルに天ぷらを味わえる店を開く。その後、天神橋筋七丁目に天ぷら店『ぬま田』や、本格的ながら気軽なスタイルの『天星』を開業。2020年秋、『ぬま田』は北新地に移転。ミシュランガイド大阪2023では二つ星に掲載されている。


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