和食のいろは

【レシピ付き】『味菜』の割烹料理 晩秋~初冬(11~12月)の魚介編

旬の魚介をテーマに、素材の持ち味を率直に引き出す割烹らしい仕事を、『味菜(あじさい)』の店主・坂本 晋さんに学ぶ本連載。11月になるといよいよズワイガニが解禁となり、河川ではハゼが身を肥やします。マナガツオも脂がのって大物が揚がる頃。今回は、この3種の魚介のレシピをご紹介。和食一筋50年、経験豊富な坂本さんに、基本の仕事を丁寧に解説していただきます。

坂本 晋(さかもと すすむ):岐阜県高山市出身。18歳から下呂温泉『吉泉館』で修業し、大阪・北新地の料亭『神田川』へ。割烹『味菜』を開店し、40年が経つ。淀川や大阪湾の地魚に注力しながらも、全国各地から産地直送で旬の食材を取り寄せ、割烹料理に仕立てる。

文:中本由美子 / 撮影:東谷幸一

金沢おでんがヒントの「香箱ガニの甲羅煮」

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1kgを超えるオスのズワイガニに比べて、メスのセイコガニは150~200gが主流。その中でも小さいサイズとなると、なかなか食べにくいでしょう。
それで工夫したのが、この甲羅詰め。金沢ではカニ面と呼んで、おでんダネにします。

カニ面はおでんだしの中で煮るので、せっかく詰めた身や内子がはがれないよう、すり身を接着剤として使うことがあります。うちでも、卵黄と昆布だしを合わせたすり身を使って、きれいな形を保つようにしています。

うちは割烹ですから、おでんをお出ししているワケではないのですが、大根やジャガイモをおでん風に炊くことはあります。その野菜の甘みが染み出たおだしが、カニ面にはよく合うんですよ。
ベースとなるのは昆布だしで、塩と淡口醤油、酒にみりん少々で塩梅しますが、このだしで炊くだけでは、やっぱり味に深みが出ません。

さらに、もう一工夫。おでんだしにガラを入れて軽く煮出し、カニの旨みを生かし切ります。うちでは、単品でカニ雑炊をお出しする際も、ガラを入れて煮出しただしを使います。

コツといえば、カニを茹で上げる直前に火を止めて、1分ほどそのままにしておき、引き上げたらすぐに真水をかけて粗熱を取ること。このひと手間で身がしっとり仕上がりますよ。

【作り方】
<セイコガニを甲羅詰めにする>
①    水に酒と塩を加え、吸い地程度に塩梅して沸かし、セイコガニを25~30分茹でる。ポコポコ軽く沸く程度の火加減で、落とし蓋をのせてカニの足が湯から出ないようにして茹でる。茹で上げる直前に火を止め、1分ほどそのままおいてから引き上げる。
②    すぐに真水をかけて粗熱を取り、陸上げして冷ます。
③    ②を胴と足に分け、胴身、内子、外子を取り出す。足は根元を少し切り落とし、殻の両サイドを斜めに切る。関節で折って爪を外し、入口となる関節側を少し切り落としてから、写真のように爪を差し込み、身を押し出す。 
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④    すり鉢で魚のすり身と卵黄をすり合わせ、昆布だしでのばしてペースト状にする。
⑤    甲羅の内側に片栗粉を打って④を薄く塗り、胴のほぐし身、内子、外子を合わせて詰める。片栗粉を付け、再び④を薄く塗って、足の身を敷き詰める。
<おでんだしで煮る>
⑥    大根やジャガイモなどを炊いたおでんだしに、セイコガニのガラを入れ、5分ほど煮出して濾す。
⑦    ⑤の甲羅詰めを入れ、すり身に火が通るまで煮る。引き上げたら、九条ネギをさっと煮る。
⑧    器におでんの大根と⑦を盛り合わせ、煮汁をかける。
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