和食のいろは

大阪『魚菜処 光悦』の自家製イカの塩辛レシピvol.2

名産地のアワビやクエから珍しい魚まで、多種多彩な魚介をコースで楽しませる大阪・心斎橋の『魚菜(さかな)処 光悦』。店主・原田 実さんに、3種のイカの塩辛作りを学びます。vol.2は、定番のスルメイカを使ったレシピと、そのアレンジ版の塩辛をご紹介。年中手に入るスルメイカですが、冬場から3月までが身が肥え、肝も大きく、塩辛に向くと原田さんは言います。鮮度を生かしたフレッシュ感を楽しませる『光悦』流の塩辛のコツと、残った肝ダレで作るオツな一品もご披露いただきました!

文:中本由美子 / 撮影:東谷幸一

フレッシュ感を楽しませる『光悦』流の塩辛

モンゴイカの塩辛、スルメイカの塩辛、モンゴイカとスルメイカの塩辛

左はモンゴイカの塩辛、右はスルメイカの塩辛。色が全然違うでしょう。真ん中は、肝だけをブレンドしたもの。vol.1では、この中からモンゴイカの塩辛レシピをご紹介しました。

今回は、残りの2つをご紹介します。
どれも2~3日で食べきるイメージで、調味料もぐっと控えめにしています。イカの塩辛というより、肝ダレ和えみたいな味ですね。そのフレッシュ感がうちでは好評なんですよ。

スルメイカの塩辛の作り方

スルメイカ「釣りものなので、ピカピカでしょう!」というスルメイカ。手前は体長40㎝と特に立派だ。

スルメイカは、安価で、年中出回るので、イカの塩辛の定番素材。特に冬場から春先までは、40㎝を超える大物も手に入る時季で、肝も大きく、塩辛向きです。

スルメイカの肝は独特のクセがあって、塩辛にすると深い旨みが楽しめます。うちのは塩分が低いので、鮮度のよさから来るフレッシュ感が楽しめるのは2~3日。さらに少し置くとツンッとくるような刺激が出てくるので、早く使い切るようにしています。

『作り方』
<スルメイカをさばく>
① スルメイカの胴の入り口に指を入れ、内臓をはがし、引っ張り出す。
スルメイカのワタを取り出す
② 肝についている墨袋をはがす。口の下に庖丁を入れ、肝と足を切り離す。
スルメイカの墨袋を外す
③ 胴に切り込みを入れて開き、残った内臓を取り除く。
スルメイカをさばく
④ エンペラをはずし、外皮をタオルなどで掴んで引っ張りはがす。内側の薄皮もタオルなどで丁寧にこそげ取る。
スルメイカの外皮と薄皮をはがす
<肝ダレを作る>
⑤ 肝に切り込みを入れ、庖丁で中身をこそげ出す。
スルメイカの肝をこそげ出す
⑥ 軽く塩を振り、酒を適宜かける。濃口醤油を好みで加え、庖丁で叩きながら調味料をしっかりとなじませる。
スルメイカの肝ダレを作る
<塩辛を仕上げる>
⑦ ボウルに⑥を入れ、スルメイカの身を適宜切って加え、混ぜ合わせて1日置く。
スルメイカの塩辛

2種のイカの肝ダレを合わせてもよし!

うちでは、肝はヤリイカ、身は剣先イカという組合せの塩辛も作ります。剣先イカは、身質が柔らかで、味はピカイチですから。

マイルドなモンゴイカの肝ダレと、独特のコクとキレがあるスルメイカの肝ダレを合わせて、複雑味を増す、というのも手です。今日は、大きなモンゴイカが手に入ったので、このねっとりした身を生かして、2つの肝ダレを同割でブレンドした塩辛も作りました。こちらも1日置いてから、2~3日が食べ頃ですね。
 
スルメイカとモンゴイカの肝ダレを合わせた塩辛

イカの肝ダレはアレンジが利く!

例えば、イカをさっと湯引きして、肝ダレと和える。そこに、季節の野菜を加えたら、立派な一品になりますよね。

肝ダレは、甘みが足りなければみりんを加えたり、味噌で風味付けしたりと、塩辛にするにしても、もっと自由でいいと思っています。

焼くと香ばしくなりますから、炒め物や焼物のタレにも向いています。白身魚を漬けてから焼いたり、バターで炒めたり。キャベツやネギ、ジャガイモをこのタレで炒めても面白い。

今日は、数日前に仕込んだスルメイカの塩辛の肝ダレだけを濾して使います。これで、モンゴイカのゲソを炒めます。行者ニンニクを合わせて、少し焦げつくくらいまで炒めると、オツな一品ができますよ。

タレは濃厚ですが、表面だけにまとわせているので、分厚いモンゴイカのゲソを噛んでいくと、その旨みと口の中でちょうどいいバランスになると思います。

モンゴイカのゲソのスルメイカ肝ダレ炒め
 
モンゴイカのゲソのスルメイカ肝ダレ炒め

【作り方】
①    スルメイカの塩辛を漉し、肝ダレと身に分ける。
スルメイカの肝ダレ
②    モンゴイカのゲソをぶつ切りにする。行者ニンニクは5㎝長さに切る。
③    フライパンにオリーブ油(ゴマ油でもOK)を熱し、②のモンゴイカを強火で炒める。火が通ってきたら、行者ニンニクを加えて、強火で炒め合わせる。
④    ①の肝ダレを回しかけ、焦げつくくらいまでしっかりと強火で炒める。
モンゴイカをスルメイカの肝ダレで炒める
⑤    皿に④を盛り、揚げ白髪ネギ※を天に盛る。
※白髪ネギを160℃の油で色づくまでじっくりと揚げたもの。

大阪・心斎橋『魚菜処 光悦』店主・原田実さん20年来の付き合いの鮮魚店から仕入れるピカイチの魚介を、シンプルながらアイデアのある料理に仕立て、コースで楽しませる『魚菜処 光悦』。店主・原田 実さんは、1970年、大阪府生まれ。『船場𠮷兆』(閉店)にて日本料理を学び、大阪市内の割烹などで料理長を経て、2001年、同店の店長になる。3年後、独立し、店主に。2018年、東心斎橋に『天ぷら 悦』を開店。

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