うつわ×食ジャーナル

料理人が“キメ皿”遣いする「赤いうつわ」。山田晶展開催中。

目に飛び込む、鮮やかなショッキングレッド。驚くべきは、その赤の、視線を吸い込むような深さとヴェルヴェットのようなテクスチャー。山田 晶さんの作品は、何を盛ってもお客さんの目を奪うインパクトで、多くの料理人に“キメ皿”として愛用されています。
そんな山田さんの作品展「赤を召しませ」が、9月5日まで、二条麩屋町のギャラリー『六々堂』で開催中。その模様をご紹介いたします。

撮影・文:沢田眉香子

山田 晶さんのうつわは、アクセントとして白や黒も添えられるものの、ほぼ赤一色。シンプルなようでいて、この赤には誰にも真似のできない独自のテクニックがある。
ろくろで成形した磁器に赤い釉薬を施して焼き、金を上絵付けして、磨きながら何度も焼成を重ねている。焼くことで金の輝きは失われるが、代わりに残るのが、この「玉」のように濃厚で深みのある色彩だ。独特のマットな光沢は、磨くことで生まれるものだ。

jou0005サ蜒十IMG-7256黒をアクセントに使った鉢。「料理店では、先付やデザートなど、パッと目を引きたいタイミングで使われているようです」(山田さん)。

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白×赤のコンビネーション。飛びカンナで細かな文様が刻まれていて、涼やかな印象。


晶さんは、陶芸家の山田 喆(てつ)を祖父に、前衛陶芸グループ「走泥社」のメンバーだった山田 光を父に持つ3代目。父の光さんはオブジェ作品とは別にクラフトの工房を営んでいたが、晶さんは、実用品であるうつわにアート的な技巧を注ぎ込む方向を歩んだ。

インスピレーションを受けたのは、アンティークジュエリーの展覧会で見た、「玉(貴石)」の赤だった。それまでのやきものには、上絵の赤はあっても、真っ赤なうつわというものはあまりなかった。
「18年前に、この赤のシリーズを作り始めた時には、 “毒々しい”とも言われることがありました。ずいぶん試行錯誤もして、だんだん受け入れられるようになりました。最近では、和食の料理人の方に使っていただけることも増えてきました」。

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薄作りで軽い、やきものグラス。日本酒でも洋酒でも楽しめる。猪口は、手に吸い付くようなしっとりした手触りが漆器のよう。

晶さんの赤は、そのミステリアスさから、謡曲に描かれる架空の動物にちなんで「猩猩緋(しょうじょうひ)」とも呼ばれる。オブジェ的な美しさゆえに、一眼でそれとわかる作家性。そして和洋の料理を受け入れ、盛付けをアートに高めてくれる機能性。京都のやきものは食を芸術にまで高めたが、まさにその系譜を現在に受け継いでいる。「京都のやきものには、産地の特色というものはありません。個々の作家さんのスタイルが京都らしさを作っていると思います」(山田さん)。

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山田 晶さんは1959年生まれ。現在、滋賀で作陶する。

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器とオブジェとを分けない制作スタンスは、使い手に自由度を与えてくれる。

現在、二条麩屋町のギャラリー『六々堂』で、3度目となる晶さんの作品展「赤を召しませ」が開催されている。開放的な店内には茶室も設えてあり、ゆったりと“赤の趣”を楽しむことができる。
開催は9月5日まで。ぜひ、お急ぎを。
  
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定期的に作家の個展を開催している、街なかにあるギャラリー。店内の茶室でのしつらいも楽しめる。

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