大阪料理会

【レシピ付き】時鮭木ノ芽西京焼 道明寺饅頭——『天の川なかなか』岡本正樹さん作

枚方市の『天の川なかなか』店主・岡本正樹さんの一風変わった発想は、大阪料理会で常に注目の的。今回は、「時鮭の焼物を仕立てていくうちに、酸味や辛味を加えたら五味が揃う」と思ったそうで、ワサビ、若ゴボウの葉の佃煮、桜エビに花山椒、大根の甘酢漬には河内晩柑(かわちばんかん)…と、様々な味わいを重ねた一皿を提案。「足し算しすぎました(笑)」と笑いを誘った焼物は、一口ごとに味わいが変わります。その中に、道明寺饅頭を焼いたり、そこに桜エビ油をまとわせたりと、岡本流のアイデアが満載! 会員の興味を大いにそそっていました。


※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/

聞き書き:中本由美子 / 撮影:竹中稔彦
岡本正樹さん(大阪・枚方|『天の川なかなか』店主)

1961年、大阪生まれ。叔父の串揚げ店『串一』を引き継ぎ、開業。構想10年を経て、2004年、古民家を移築、再利用して『天の川なかなか』をオープンする。独学で磨いた和食の腕と発想を生かした、独創的なコースを提供し、評判に。自家菜園で野菜を育てたり、卓上の炊飯釜をデザインしたりと、フットワークが軽い。大阪料理会では、意想外の提案をするアイデアマンとして目されている。

ワサビの辛味、若ゴボウの葉の苦み、大根の甘酢漬の酸味…と五味を重ねてみました

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時鮭のシーズンなので、これを木の芽味噌を使った西京焼にしようと考えていたのですが、それだけでは面白くないので、道明寺粉で饅頭を作って、これに重ねて焼いたらどうかな?と。饅頭だけ、というのも味気ないので、中に早春に仕込んだ若ゴボウの葉の佃煮を射込んでみました。

道明寺饅頭は蒸し物にしたり、椀種にすることが多いのですが、オーブンで焼くと香ばしくて美味しいな~と。でも、オーブンシートにくっついてしまうので、自家製の桜エビ油を塗ってから、時鮭をのせて焼くことにしました。

底にワサビを忍ばせてから盛っているので辛味があって、木の芽味噌の甘みがあって、若ゴボウの葉の苦みがあって、塩気もある。あと酸味があると、一皿で五味を楽しんでもらえるな、と仕込んでいた大根の甘酢漬も添えました。ここに河内晩柑の皮の風味も効いています。

桜エビ油を使ったので、風味を繫げようと、仕上げにかけたあんにも桜エビを加えました。これは、油に桜エビの風味を移した後に残ったものです。
さらに、花山椒の醤油漬をあしらったところ…めっちゃ“足し算の料理”になってしまって(笑)。でも、こういう一皿って、食べていくうちに味が変わって、楽しいなって思うんですよ。

この料理には、濃縮だしを多用しています。コレ、仕込んでおくと重宝しますよ。今回は、道明寺粉に含ませるだけでなく、仕上げにかけた桜エビあんにも使っています。

ベースは、淡口醤油と酒、みりんを同割にしたもの。ここに、カツオ節と干し椎茸の粉、昆布の旨みを足しています。
カツオ節は粉になってしまったものを使っています。若ゴボウの葉も河内晩柑の皮も、捨ててしまう端材でしょう。僕の料理は、こうした端材を上手く使うこともテーマにしているんです。 

osa0015-3c饅頭を割ると、中からはたっぷりの若ゴボウの葉の佃煮が(左)。「一口ごとに次から次へと味が変わる。ものすごく手間のかかった料理」という意見が大半で、畑 耕一郎会長は「まさに複雑怪奇(笑)。素材の味を生かすのが日本料理と言われるけれど、それとは違う、多層的な味の一皿。足し算もここまでやると、面白い。食べ手は喜ぶと思う」と評した。

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