大阪料理会

【レシピ付き】田芋とうりずん豆のおかき揚げ セミエビ添え——『淺井東迎』東迎高清さん作

心斎橋で浪速割烹『淺井東迎(あさいとうげい)』を営む東迎高清(こうせい)さんは、故郷・沖縄の食材を取り入れ、独自の割烹料理を展開。「大阪料理会」の発表でも、毎回、沖縄の食文化を紹介しています。今回の一品も、ターンムと呼ばれる里芋の一種・田芋、四角豆として名の通ったウリズン豆、セミエビ、ナーベーラー(ヘチマ)と、島の食材が満載です。現地の料理ではなく、あくまで大阪料理として仕立てるのが、東迎流。田芋の素朴な味わいの生かし方、クセのあるヘチマの調理のコツなど、会員からは多くの質問が投げかけられました。


※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/

聞き書き:中本由美子 / 撮影:福本 旭
東迎高清さん(大阪・心斎橋|『淺井東迎』店主)

1959年、沖縄県与那国(よなぐに)島生まれ。高校卒業後、大阪・心斎橋の『㐂川(きがわ) 淺井』にて修業を始め、2008年、そのまま店を引き継ぐ形で独立。『おおさか料理 淺井東迎』と屋号を改める。長きにわたって学んだ大阪料理に、故郷・沖縄の味も取り入れた、独自の割烹スタイル。大阪料理会でも、積極的に地元の食材や調理法を紹介し、会員の興味を誘っている。

夏の島野菜と豪華なセミエビを使って、割烹らしい一品を考えてみました

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田芋は、浅く水を張った畑で栽培されるので、水芋とも呼ばれる里芋の一種です。沖縄ではターンムという名で知られ、たくさん子芋ができることから、子孫繁栄をもたらす縁起物として、正月や盆などの行事料理には欠かせない存在ですね。

里芋に似ていますが、より粘りが強くて、甘みがあります。ざっくり切って水煮し、砂糖で味を付けた「田芋田楽(ターンムディンガク)」や、豚の三枚肉や椎茸と炒め煮にした「ドゥルワカシ―」が沖縄では定番。実は、どちらも田芋は粗く潰したような状態に仕上がります。

田芋は加熱すると、すぐに柔らかくなるんですね。今回は、その特性を生かして生地にし、食感が冴えるウリズン豆を包んで、おかき揚げにしました。
といっても、ペーストにしてしまうと、田芋特有の粘りのある食感が生かせず、もったいない。そこで、子芋のように1時間ほど煮てから、すり鉢で粗く潰しています。

手前に添えたのは、ヘチマの味噌煮。ヘチマは沖縄ではゴーヤと同じくらいポピュラーな島野菜。ぬめりがあって柔らかく、クセのある風味が独特です。味噌との相性が抜群なので、今回は白味噌の土手地でさっと炊いて味を含ませています。

島野菜だけだとあまりにも素朴な一品になるので、セミエビを合わせて豪華に仕上げました。セミエビは駿河湾以南で揚がる高級エビです。体長は30㎝にも達し、伊勢エビより歩留(ぶど)まりがよくて、甘みも強いんですよ。

頭の殻は幅広で長く、ミソもたっぷり詰まっているので、煮出すといいだしが取れると思います。セミエビだしであんを仕立ててアクセントに利かせたかったのですが…、残念ながら1尾しか入手できず、今回はうちで作り置きしている車エビあんで代用しました。

沖縄の食材満載の一品ですが、大阪の割烹でお出しするなら、という視点も忘れずに、全体を旨だしのあんでまとめています。沖縄の郷土料理や食材には、新しい和食のヒントになるものがまだまだあると思うので、今後も故郷の食文化を伝えていきたいと思っています。

osa0017-3c田芋は、生のままでは県外に持ち出すことができないため、皮付きで蒸したものを使用。「里芋とはまた違った甘みと粘りで、ほっこりする味」という感想が多かった。ヘチマとウリズン豆(右)は、島直送。「ヘチマはすぐに崩れるので加熱が難しい」という声に、東迎さん(左)は「水分が多い野菜なので、さっと火を通すことが大事」とアドバイスを。「この時季、揚げて油抜きし、だしで炊いて椀種にしています」と話すベテラン会員も。

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