7Chefsの近未来和食

【レシピ付き】11月8日放送 フレンチシェフ・前田 元さん作「ムシ・ムシ定食」後編

世界的な食糧危機が叫ばれる昨今、「近未来は昆虫が常食になってしまうかも!?」と警鐘を鳴らすのは、レストラン『MOTOÏ』店主の前田 元(もとい)さん。MBS 料理エンターテインメント番組「7Chefs」でフレンチの前田シェフが「近未来和食」として提案するのは、未利用魚や規格外の野菜などを活用して“虫を無視する”「ムシ・ムシ定食」。全5品のうち2品のレシピを紹介した前回に続き、今回は春巻き・玄米ご飯・和え物の3品をご紹介します。


MBS 料理エンターテインメント番組「7Chefs」毎月第3水曜 深夜2:30~放送。


味の黄金比を世界へ“ラスボス村田”『菊乃井』村田吉弘氏。和食の新道を切り拓く“ダシザムライ佐々木”『衹園さゝ木』佐々木 浩氏。香辛料という魔法を操る“スパイスマジシャン吉川”『レオーネ』吉川健太郎氏。右脳と左脳で中華料理の枠を破る“チャイニーズフードハッカー東”『AUBE』東 浩司氏。炎と肉の求道者“ミートプロフェッサー岡”『祇園肉料理おか』岡 義隆氏。京フレンチの新風を巻き起こす“ナイト・オブ・モダンフレンチ前田”『レストランMOTOÏ』前田 元氏。そこにもう1人(未発表)を加えた7人のシェフが、さまざまな食の課題解決に挑む、料理エンターテインメント番組。

文:中本由美子 / 撮影:東谷幸一

目次


乾物は未来の食卓を救う!

「昔の人は、収穫した野菜を一年かけて食べるため、様々な工夫をしていました。食糧危機と言われる今こそ、こうした古(いにしえ)の知恵を見直す時です」。

真っ直ぐな目で、きっぱりと語るのは、MBS料理エンターテインメント番組「7Chefs」で、“ナイト・オブ・モダンフレンチ(モダンフレンチの騎士)”と称される、京都のレストラン『MOTOÏ』店主の前田 元シェフ。

“フレンチ×中華”を標ぼうする前田シェフが、「ムシ・ムシ定食」のおかずとして選んだのは、春巻き。その主役素材に用いるのが乾物だ。

干し椎茸・切り干し大根・ドライトマト・芋殻左手前から時計回りに、干しどんこ椎茸、厚みのある切り干し大根、ドライトマト、芋殻(いもがら)。芋殻とは、里芋の葉柄(ズイキ)を乾燥させたもの。

「旬の野菜は味も良くて、価格も手ごろ。これを塩蔵したり、乾燥させたりして、昔から上手に保存してきたのに、今は廃棄してしまうことも多い。我々はもっと乾物に注目し、“捨てない努力”をすべきです!」と、前田シェフは語気を強める。

干すことで生まれる滋味を戻し汁で炒め煮に

MBSアナウンサー・山崎香佳さんと、レストラン『MOTOÏ』前田元シェフ

「ムシ・ムシ定食」をレポートする新人研究員のMBSアナウンサー・山崎香佳さんは、乾物の春巻きと聞いてイメージが湧かないご様子。「乾物を使うと…美味しくなるんですか?」。この素朴な質問には、前田シェフも思わず吹き出した。

「野菜は干すことで水分が飛び、旨みが凝縮します。味わいが深くなり、栄養価も高まるんですね。乾物は水で戻して使いますが、戻し汁にも旨みがたっぷりあるので、これも捨てずに活用します」。

では、と4種の乾物をニンニクとオリーブ油で炒め始めると、ふくよかないい香りが。そこへ戻し汁を加えて炒め煮すると、芳しさがいや増す。「この時点でもう美味しそうです!」と山崎アナは声を上げた。

ここに、前回も活用した未利用魚を合わせ、エスカルゴバターと共に春巻きの皮に包んで揚げれば完成だ。

「未利用魚と乾物の春巻き」の作り方

『MOTOÏ』流・未利用魚と乾物の春巻き

<下準備をする>

芋殻を一晩水に漬けて戻し、5分ほど茹でてから、30分水にさらす。しっかりと絞り、1㎝長さに切る。※芋殻の戻し汁はアクが強いので使わない。
干し椎茸・切り干し大根・ドライトマトを、それぞれ水に一晩漬けて戻す。適宜刻み、戻し汁は合わせて取っておく(画像下右)。

戻した乾物と戻し汁

エスカルゴバターを作る。フードプロセッサーでパセリ→ニンニク・エシャロットの順で攪拌し、室温に戻した無塩バターを加えてさらに攪拌する。

<仕上げる>

フライパンにオリーブ油を熱し、みじん切りにしたニンニクを香りが出るまで炒める。①・②の乾物を加えてざっと炒め、②の戻し汁を注ぎ入れ、煮含めるように炒める。塩・少しの濃口醤油で味を調え、バットに上げて粗熱を取る。

乾物を炒める

未利用魚(ガンゾウヒラメ・メゴチ・オコボ・タモリ)を捌き、皮を引いてそぎ切りにし、軽く塩を振る。
春巻きの皮に⑤と③のエスカルゴバターをのせ、④を加えて包む。160℃で揚げ、半分に切って器に盛る。

『MOTOÏ』流・未利用魚と乾物の春巻きを巻く

「大原の柴漬けと未利用魚のアラの和え物」の作り方

大原の柴漬けと未利用魚のアラの身

続いて、前田シェフは和え物の準備に取り掛かる。
「未利用魚のアラと、大原の柴漬けを刻んで和えただけ。乳酸発酵させた漬物は、肉や魚ととても相性がいいんですよ」。

大原の伝統的な柴漬けは、キュウリではなく、ナスを使う。塩と赤シソを合わせたら樽に入れ、重石をして、乳酸発酵を促す。この製法は1000年も前から変わらないのだと言う。

アラの身は香ばしく焼いてほぐしたもの。「骨周りや頭などの身は美味しいので、食べないのはもったいない!」と前田シェフ。残った骨は煮出してだしを取り、前回ご紹介した「未利用魚のアラ汁 色んな海藻」に仕立てた。

『MOTOI』流・大原の柴漬けと未利用魚のアラの和え物

未利用魚のアラ(頭や中骨など)をサラマンダーで焼き色が付くまで焼く。身をせせり出し、ほぐしておく。
大原の柴漬けを細かく刻む。
①と②を和え、少しの濃口醤油で味を調える。

「玄米ご飯」はひと匙のヨーグルトが決め手

ラストは玄米ご飯。「玄米は食物繊維が白飯の6倍もあるんです。ビタミンなどの栄養素も豊富なんですよ」。白米は糠や胚芽を取り除くため、これがフードロスに繋がる側面もある。健康面でもSDGsの観点からも、玄米にもっと注目すべきだと前田シェフは話す。

山崎アナは祖母の家が米を作っており、玄米には幼い頃から親しんでいたそう。「でも、炊くと少し糠の香りが残りますよね」と言うと、前田シェフは「コレをひと匙入れるだけで、玄米特有の香りが抑えられますよ」とニヤリ。

なんと、その正体はヨーグルト。さてはて、炊き上がりや、いかに。

『MOTOI』流・玄米ご飯

玄米はよく揉み洗いし、一晩水に浸けておく。
鍋に①を入れ、2合に対してスプーン1杯のヨーグルトを加えて水加減し、炊き上げる。

玄米にヨーグルトを加えて炊く

収録開始から約3時間、前田シェフの近未来和食「ムシ・ムシ定食」全5品が出揃った。
未利用魚は、規格外の野菜と合わせた主菜の炒め物、春巻きにするだけでなく、アラでだしを取って汁物に、残った骨周りの身は和え物にと、余すところなく活用。

さらに、塩蔵の海藻、乾物、乳酸発酵させた漬物と、昔ながらの保存食も積極的に使って仕立てた。
「近未来の料理は、最先端の技術や新しい発想で作るだけではなく、伝統的な手法を見直すことも大切。“捨てない”知恵を取り入れることは、現代の食の課題解決に必ず繋がると思います」。

前田シェフの熱いメッセージに大きく頷く山崎アナ。続く試食シーンでは、春巻きの多彩な食感に瞠目! 「切り干し大根の歯ごたえが利いているでしょう」と前田シェフもニッコリ。
玄米は特有のクセがなく、「きれいな味わいです!」。柴漬けとアラの和え物をのせてパクつく愛らしい姿は、MBS「7Chefs」の放送、またはTVer・MBS動画イズムで、ぜひ。

玄米にヨーグルト、焼いた魚のアラ×乳酸発酵の漬物というアイデアは「早速、取り入れます!」と山崎アナ。和食の料理人とは違う、フレンチシェフならではの近未来和食には、意外な提案が散りばめられていた。

MBS 料理エンターテインメント番組「7Chefs」
毎月第2水曜日 深夜2:30~ ※TVer・MBS動画イズムで放送後約1カ月配信。
【公式HP】:https://www.mbs.jp/7chefs/
【TVer 7Chefs】https://tver.jp/lp/series/srnv9mk4or
【MBS動画イズム 7Chefs】https://dizm.mbs.jp/program/7chefs

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