上野修三の古典

【レシピ付き】淡口醤油で映える「桃の節句」の2品

3月3日は桃の節句。上野修三さんは昔から、割烹らしい料理で節句を表現してきました。雛(ひな)まつりには、食材の持ち色を生かした華やかで可愛らしい料理を。そこには、ヒガシマル醤油の淡口醤油が欠かせないと話します。ちらし寿司の主役は、淡口醤油で色白に煮上げたハマグリ。桜餅をモチーフにした小鯛の一品は、美しい桃色の道明寺蒸しにも、小鯛の骨だしを使ったあんにも、淡口醤油が潜んでいます。


上野修三(うえのしゅうぞう):昭和10年、大阪・河内長野に生まれる。ミナミでの修業時代を経て、1965年、『㐂川』を創業。なにわの伝統野菜を発掘するなど、大阪らしい料理を追求し、浪速割烹のカタチをつくる。60歳で開店した『天神坂上野』は伝説の割烹として名を馳せた。現在は、なにわの食文化を綴る随筆家としても活躍。近著に「浪速割烹㐂川のおいしい野菜図鑑」春夏編・秋冬編(共に西日本出版社)がある。

聞き書き:中本由美子 / 撮影:宮本 進

目次


淡口醤油で雛まつりらしい彩りに

昔は女の子のいる家庭では、桃の節句に華やかな雛飾りをしたもんやけど、はて、今の時代はどうやろか? 

健やかな成長を願って、桃の花を飾り、菱餅やひなあられをお供えし、ちらし寿司やハマグリの吸い物をいただく。こうした節句の風習は、割烹といえども積極的に取り入れるべきや、というのが私の持論でしてネ。昭和の時代からあれこれ料理を工夫してきましたな。

菱型のお盆に、ぼんぼりや雛人形を象(かたど)ったうつわを配して、菜の花のお浸しやシジミとワケギのぬたなんかを盛って前菜としてよぉお出ししましたな。いつもより可愛らしく華やかな見た目になるよう、イクラやウスイエンドウを使ったり、エビの箱寿司を添えたりしてネ。食紅で道明寺粉を桃色に染めて蒸し物を仕立てることもおました。

雛まつりに欠かせない食材といえばハマグリ。二枚貝の貝殻は同じ貝の組合せでなければピタリと噛み合いまへん。それを夫婦になぞらえ、幸せな結婚を願う縁起物として、ハマグリを桃の節句に食したようだす。

この二枚貝の特徴を生かして、平安時代、宮中で行われたのが「貝合わせ」。内側に美しい絵柄を施した多数の貝殻の中から、ペアを探すという雅な遊びですわなぁ。

女の子の節句やから、雛まつりの料理は食材の持ち色を生かして、彩り豊かに仕立てたいもの。となれば、ヒガシマル抜きでは考えられまへん。私流の煮ハマグリは、江戸前の寿司ネタとはひと味違う、色白美人なんでっせぇ。


雛ちらし

雛ちらし——淡口甘八方でぷっくりと煮たハマグリを主役に

桃の節句のご馳走は、ちらし寿司で決まりですな。この時季は貝類の旬でもおますから、私ゃ、アサリやハマグリをよぉ寿司ネタに使ったもんだす。

貝といえば、この時季、貝寄風(かいよせ)が吹きますな。昔々、この風によって大阪の住吉浜に大量の貝が打ち寄せられた。その貝で造花を作り、旧暦2月22日の聖徳太子の命日に四天王寺で行われる「聖霊会(しょうりょうえ)」に献じたそうだす。

そんなお話もカウンターでさせてもらいながら供したんが、この雛ちらし。実はええこと思い付きまして、今回ちょっとリニューアル。まずは寿司酢に淡口醤油をぽとっと落とし、旨みを補強してネ。この時季は生ワカメがおますから、淡口甘八方(みりんで甘めに仕立てた淡口八方)で炊いて、刻んで寿司飯に混ぜましてん。

ハマグリは、ワカメの煮汁を淡口醤油・みりんで少し濃いめに塩梅し直して炊きますねん。湯煎にかけて優しく火を通し、蓋をして余熱で火を入れてネ。沸かした煮汁で急激に炊くと、身がびっくりしてギュッと縮まってしまいまっせ。煮汁とハマグリのどちらも冷めたら再び合わせて、2時間ほど浸けておくれやす。

お江戸の“煮ハマ”と言うたら、濃口醤油と砂糖や酒で煮て、その煮汁で仕立てた濃厚な煮ツメでいただくって寸法やけど、うちは昔から淡口醤油派。ふっくら色白に煮上げるのが私流だす。

そうそう、ハマグリには美味しいヒモがありますわな。これは刻んで、ワカメ入りの寿司飯にのせてネ。煎りゴマにもみ海苔、錦糸玉子。彩りに花麩と菜の花、木の芽。芽カンゾウを添えたら、春の芽吹きも感じられまっしゃろ。

雛ちらしの作り方

<すし飯を仕込む>

米酢100㎖・砂糖60g・塩18g・淡口醤油10㎖を合わせ、昆布を適量浸けて2時間ほど置く。
米4合を洗い、ザルに40~50分上げてから炊く。
①を火にかけて温め、100㎖分を炊きたての②に回しかける。うちわで扇ぎながら、しゃもじで切るように混ぜ合わせる。

淡口醤油入り寿司酢でシャリを作る

<寿司ネタを仕込む>

昆布だしに塩・淡口醤油と少し多めのみりんを合わせ、淡口甘八方とする。
生ワカメを④でさっと煮る。陸上げして、うちわで扇いで急冷し、色止めする。
煮汁をボウルに移し、淡口醤油・みりんを加え、少し濃いめに味を調える。

ワカメを煮て、その煮汁に淡口醤油で味を付ける

鍋にたっぷりの湯を張り、⑥を浮かべる。火にかけて煮汁から湯気が上がってきたらハマグリのむき身を加え、混ぜ合わせながら煮る。軽く火が入ったら蓋をして約10分置き、蓋をしたままボウルを湯から上げてさらに10分置く。※時間は目安。ハマグリに火が入りすぎないよう注意。
⑦のハマグリのヒモを外し、ざっくり刻む。身の片面に鹿の子に庖丁を入れ、煮汁を冷まして2時間ほど浸けておく。

ハマグリを煮て、煮汁に浸す

菜の花と芽カンゾウはさっと塩茹でし、それぞれ淡口八方(昆布だし・淡口醤油・塩・みりん)に2時間以上浸しておく。
桃花麩は水に浸けて戻し、水気を絞ってから④の淡口甘八方で炊く。

<仕上げる>

③に⑤のワカメを刻んで混ぜ合わせ、うつわに盛る。⑧のヒモをのせ、煎りゴマともみ海苔を散らす。錦糸玉子をふんわりと敷き詰め、⑧の身と⑨、⑩を盛り、木の芽を飾る。

ワカメを寿司飯と混ぜ、ハマグリのヒモをのせる


小鯛道明寺蒸し

小鯛道明寺蒸し——桜餅風の蒸し物に、小鯛の骨だしあんをとろり

雛まつりはお祝いごとやから、小さくとも鯛を使ったこんな蒸し物もお出ししましたな。

桜の節句には、なんでか桜餅を食べる習慣がおますやろ。桜餅は関東と関西では違うようで、関西では道明寺糒(ほしいい)を使いますな。藤井寺にある道明寺で最初に作られたことから、この名が付いたそうでっせ。もち米を蒸した後に乾燥させた保存食で、これを粗挽きしたのが道明寺粉だす。

この小鯛を使った道明寺蒸しは、関西風の桜餅をモチーフに仕立ててますねん。コレ、甘鯛でやっても美味いし、レンコ鯛を使ってもよろしいな。道明寺粉は淡口醤油を加えた昆布だしで戻し、食紅で色を付け、塩漬け桜花を塩抜きして忍ばせまひょ。

道明寺粉がご飯くらいの柔らかさになったら軽く握って、塩〆した小鯛をのせ、桜の葉で包んで15分ほど蒸す。その間に、小鯛の骨だしのあんを仕上げておくれやす。

私ゃ、もったいなくて魚のアラをよぉ捨てませんねん。特に鯛はええだしがでまっしゃろ。小鯛の場合は、ちょっと匂いが気になるので焼いてから昆布だしで煮出しまひょ。焼くと言っても、軽く焼き色が付く程度でっせ。絶対に焦がしたらあきまへん。せっかくの小鯛の繊細な風味が台無しや。

この骨だしに淡口醤油と塩で吸い地よりちょっと濃い目に味を付け、葛を引いて完成だす。淡口醤油が小鯛の旨みを存分に生かしてくれますなぁ。

小鯛道明寺蒸しの作り方

<小鯛の下準備をする>

小鯛を三枚におろし、身に塩を当てて1時間以上置いておく。1人前分を切り出し、皮目に飾り庖丁を入れる。

小鯛を塩〆し、飾り庖丁する

小鯛の骨をサラマンダーで軽く焼く。昆布だしと合わせ、約20分とろ火で煮出して漉す。

小鯛の骨を焼いてだしを取る

<仕上げる>

塩漬けの桜花はガクを取り、水に放って塩抜きをする。塩漬けの桜の葉も同様に塩抜きする。
昆布だしを淡口醤油と塩で吸い地程度に味を付けて温め、道明寺粉150gに250㎖合わせる。食紅を少量、③の桜花を適宜加えて混ぜ合わせる。2時間以上置き、ご飯程度に柔らかく戻す。

道明寺粉を戻し、食紅と桜花を加える

④を軽く握って③の葉の上にのせ、①の小鯛を重ねて③の葉をもう一枚のせる。蒸気の上がった蒸し器に入れ、約15分、強火で蒸し上げる。

戻した道明寺粉を小鯛と桜蒸しにする

②の骨だしを熱し、淡口醤油・塩で吸い地より少し濃い目に味を付ける。水溶き吉野葛を溶き入れ、あんとする。
うつわに⑤を盛り、⑥をかける。淡口八方地浸しにした菜の花(「雛ちらし」手順⑨参照)を添え、③の桜花を天に盛る。

ヒガシマル醤油の超特選丸大豆うすくち吟旬芳醇、特選丸大豆うすくちしょうゆ超特選丸大豆うすくち吟旬芳醇(左)
国産原料を100%使用。丸大豆しょうゆと米糀の二段熟成で、まろやかな味わいに。400㎖。
特選丸大豆うすくちしょうゆ(右)
国産原料を100%使用。淡く上品な色合いと、おだやかな香りで素材を生かします。500㎖。

■問合せ:ヒガシマル醤油㈱ お客様相談室 ☏0791-63-4635(受付時間9:00~17:00、土・日曜・祝日・年末年始・夏期休暇除く) https://www.higashimaru.co.jp

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