料理のうつわ十問十答

知られざる伊万里【後編】

2022.02.25
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連載:料理のうつわ十問十答

佐賀県の有田を中心とした肥前国で焼物の生産が始まったのは、1616年頃。この時代から1640年までの焼物を初期伊万里と呼びます。素朴な李朝風であった作風は、その後、一変。中国の名産地・景徳鎮(けいとくちん)から渡来した技によって飛躍的な発展を遂げ、国内だけでなく、世界を熱狂させる焼物となっていきます。そんな知られざる伊万里の歴史を、『梶古美術』の梶さん親子が紐解く今回の十問十答。後編では『菊乃井』村田知晴さんが、1640~1690年、加賀ではなく伊万里で焼かれたとされる「古九谷(こくたに)」の謎に迫ります。

文:梶 高明 / 撮影:内藤貞保
答える人:梶 高明さん

『梶 古美術』七代目当主。その見識と目利きを頼りに、京都をはじめ全国の料理人が訪ねてくるという。朝日カルチャーセンターでは骨董講座の講師も担当。現在、「社団法人茶道裏千家淡交会」講師、「NPO法人 日本料理アカデミー」正会員、「京都料理芽生会」賛助会員。
梶 古美術●京都市東山区新門前通東大路通西入ル梅本町260 
https://kajiantiques.com/

質問する人:村田知晴さん

1981年、群馬県生まれ。『株式会社 菊の井』専務取締役を務めながら、京都の名料亭『菊乃井』四代目として料理修業中。35歳で厨房に入り、現在5年目。「京都料理芽生会」「NPO法人 日本料理アカデミー」所属。龍谷大学大学院農学研究科博士後期課程に在籍し、食農科学を専攻している。

共に学ぶ人:梶 燦太さん

1993年、梶さんの次男として京都に生まれる。立命館アジア太平洋大学国際経営学部を卒業後、『梶 古美術』に入り、現在2年目。八代目となるべく勉強中。

(第6問)

古九谷の青手(あおで)とは?

a伊万里(青手)古九谷様式椿文皿。

梶:
この青手古九谷は直径七寸(21㎝)で、数物ではなく一点物としてつくられていて、私は鉢として重宝しています。
半磁器といって、陶石と土の両方を使っています。磁胎(素地)は白色ではなく、くすんだ色のため、それを隠そうとするかのように畳付き以外、全面が釉薬で覆われています。
村田:
随分エキゾチックですね。中東の焼物みたいです。これまた伊万里のイメージとはかけ離れているというか…。
それに青くは…ないですよね。
燦太:
日本では昔から緑色を青と表現しますよね。青葉、青竹…、それに青信号(笑)。
村田:
確かに…。日本料理でも、青煮、青寄せ…どれも緑ですよね。
燦太:
古九谷は、青手古九谷・色絵古九谷・藍九谷・吸坂手(すいさかで)と4種類あります。
青手には磁器と半磁器の製品が存在し、赤を用いない焼物を青手古九谷、用いた場合は色絵古九谷と分類しています。
梶:
古九谷は染付の他に、緑・黄・紫・紺青・赤の九谷五彩と呼ばれる5色が用いられています。青手古九谷は、緑を主として、赤以外の黄、紺青、紫の色釉を使用し、白い余白をほとんど余すことなく「塗り埋め」ていることがその特徴です。
この青手古九谷は、紫・黄・青の三彩で描かれていて、縁には錆釉が塗られています。葉脈や花の黒い輪郭線などは上絵呉須(ごす)が用いられ、裏面全体にも上絵呉須で唐草が描かれています。
村田:
なかなか懐石では使いにくいように思うのですが、梶さんはこの青手古九谷をどんな風に使ったらいいと思いますか?
梶:
私がこの菓子鉢を手に入れたのは、茶室で用いるのに品格も大きさも絶妙と思ったからです。青手古九谷はほぼ一点ものなので、それをみんなで楽しむ意味でも、強肴(しいざかな)を取り回すうつわとして使いたいですね。
村田:
うちでも献立に強肴を入れています。パンチのあるご飯ものの前に、肉料理やフカヒレなどの一品を強肴としてお出ししています。
この青手古九谷は黄色が映えそうですよね。柚子釜とか三宝柑を釜にしてのせると調度いい気がします。
梶:
古い酒器を楽しむようなお席だったら、この鉢に漬物を数種盛り合わせてお出ししたら、コレクターたちを唸らせることが出来るでしょうね。お酒を飲む方は、お料理の合間にもちょっと漬物なんかをつまみたいでしょう。金沢にかつてあった料亭『つる幸(こう)』では、漬物がたっぷり盛られた鉢が出てきて、私はそれがいつも楽しみでした。
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