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【レシピ付き】魚介におけるスチコンの活用術 Vol.1 貝類編

「ウチの店の魚介の加熱は、蒸し器やスチームコンベクションオーブン(スチコン)で蒸すか、炭火で焼くか。同じ道具を使っていたとしても、洋の料理人さんは火入れのアプローチや考え方が違うのかな、と思って」とは、奈良で『割烹 まつ㐂』を営む松室克哉さん。
伺ったのは、神戸・北野にあるシチリア料理『ヴァカンツァ』。明石出身の店主・島田英明さんは、シチリアでの修業経験があり、地元の港に揚がる旬満載のフルコースに定評があります。「食べ手の印象に深く残る料理には、火入れの強弱がある、と常々感じています。スチコンさえあれば、その表現の幅は広がります」と、島田シェフが提案してくれたのは、魚介を主役にしたスチコンの活用術。素材の本質を捉えたアプローチは必見です。

文:船井香緒里 / 撮影:太田恭史
島田英明さん(『ヴァカンツァ』店主)

1972年兵庫県明石市出身。高校時代、飲食店でアルバイトを経験した後、イタリア・シチリアへ。タオルミーナにあるリストランテで1年半経験を積み、帰国。1999年、26歳で『ヴァカンツァ』を開く。明石や垂水など地元の港に揚がる旬魚をメインに、組合せの妙が光る料理をおまかせで提供する。2020年秋には、感染症対策を施したフロアに全面リニューアル。

松室克哉さん(『割烹 まつ㐂』店主)

1975年大阪府八尾市出身。奈良・新大宮『川波』で10年、器も野菜も作る“土の料理人”奥田眞明さんに薫陶を受ける。その後、大阪『味𠮷兆』で8年勤めた後、2017年3月に、ならまちにて独立。町家を改装した趣ある空間の特等席はカウンター。大和野菜などを用いた懐石料理に定評がある松室さんらしい、生産者の背景などの奈良トークが食べ手を魅了する。

「牡蛎を、より牡蛎らしく調える」下処理と加熱法

松室克哉(以下:松室)
シチリア料理といえば、魚介の素材らしさを生かした料理が多いと思います。島田シェフが日々心掛けていらっしゃることは?
島田英明(以下:島田)
素材の本質をいかに見極め、調理するかですね。だけど、“美味しすぎる”料理を並べるだけじゃダメだと日々、感じています。
松室:
和食は引き算の料理と言われますが、それとは違うニュアンスでしょうか?

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島田:
ちょっと音楽の話に逸れますが…、ギタリストのプレイにも同じことが言えると思うんです。音の大きさやテンポ、演奏方法などによる強弱の振り幅が大きければ、演奏に表情とダイナミクスが生まれます。そして、ベテランになるほど“弱”の効かせ方が上手。
料理人にも同じことが言えます。ベテランの腕利きは、コースの中で“弱”をうまく表現している。その点で、スチコンが使えるんです。
松室:
島田シェフが考えていらっしゃる表現の幅、コースの中で“弱”をどのように効かせるのかを、今日は学ばせていただきたいです。
島田:
任せてください。
まずは、貝類の加熱法をレクチャーしますね。
松室:
よろしくお願いいたします!

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島田:
こちらは、兵庫県赤穂市の東部・坂越(さこし)の牡蛎です。加熱する前に…、ある下拵えをしました。
松室:
えっ? もしかして、少し熱を通されましたか?
島田:
沸騰した湯に5秒くぐらせ、引き上げたらすぐ、塩分濃度5%の塩水に5分漬けました。
ここでわずかに下味をつけ、浸透圧で身を引き締めるイメージです。
料理人の友人が「エビを、生まれ育った海に戻す」と塩水に漬けていたのを見て。なんだかストーリー性もあるでしょう?
松室:
本当に。その発想、僕にはないですね。
松室:
塩水からあげたら、燻した桜のチップで軽く燻製します。松室さん、まずはこれを味見してください。

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松室:
燻香は優しく、牡蛎らしい、海の香りがします。厚みがある身の甘みにも驚きです! 独特の臭みを一切感じないのは、茹でたからですか?
島田:
いえ、おそらく牡蛎を養殖されている『かましま水産』のおかげだなと。とにかく鮮度がいいから。しかも、ここの生牡蛎に熱を通したら1.2倍には膨れます。栄養分が豊富な海域で養殖し、紫外線殺菌水で殺菌するなど常に新たな取り組みをされていますからね。
松室さん、それでは厨房へ。スチコンの出番ですよ。
松室:
では中に入らせていただきます(一礼して厨房の中へ)。
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コメント
2
kaori 2022.09.29

返信遅くなり失礼いたしました。

担当編集の阪口です。

コメント頂戴し、とても嬉しいです!

精密な温度設定ができるスチコン、魅力的ですよね。

ヒラタ 2022.06.12

とても勉強になりました。
スチコンほしくなりました。


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