『㐂川』一門うすくち競演vol.2秋鱧の割鮮
法善寺横丁『浪速割烹 㐂川(きがわ)』の名物の一つに、創意工夫を凝らした割鮮(かっせん:お造り)があります。この時季に欠かせない大阪人好みの旬魚といえば、身を肥やした秋鱧。二代目の上野 修さんと独立組の門下生が料理競演する本企画、第2回目は宗右衛門(そうえもん)町の割烹『和亨(わこう)』店主・杉本 亨さんが登場。秋鱧の割鮮をテーマに、淡口醤油を巧みに使った意外性ある一品を披露していただきます。
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上野 修さん(大阪・法善寺横丁『浪速割烹 㐂川』二代目)
1961年生まれ。81年より三重「志摩観光ホテル」のメインダイニング『ラ・メール』で総料理長・高橋忠之氏の下、フランス料理を学び、85年、『浪速割烹 㐂川』入社。父・修三さんの『天神坂上野』開店に伴い、95年に二代目店主に。伝統と独創を重んじる父の割烹料理を継承しつつも、フレンチの経験や知見を生かした独自の料理世界を構築している。
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杉本 亨さん(大阪・西心斎橋|『和亨』店主)
1970年生まれ。『浪速割烹 㐂川』で研鑽し、『天神坂上野』の創業メンバーとして勤務。上野修三さんと修さん、両方の薫陶を受けて、1999年に独立。品書きに80種以上の単品料理を揃え、大阪流カウンター割烹としてのスタンスを守り続けている。穏やかな気性だが、探求心は旺盛。始末の心を大切にした柔軟な発想に定評がある。
落としでも湯引きでもない、脂ののった秋鱧ならではのお造り
- 上野 修(以下:上野)
- 関西では初夏から鱧をよく食べるけど、大阪の割烹では昔から秋こそが鱧の季節。夏の産卵を経て、身がいよいよ充実してくるのが8月末くらいから。味がいい上に、祭の時季が過ぎると値が落ち着いてコスパもいい。秋鱧は実利的な大阪好みの食材やね。。
- 杉本 亨(以下:杉本)
- 『㐂川』での修業時代、「鱧が旨いのは脂ののった秋」と教わったので、うちは走りの時期は使わずに、7月くらいから魚体の大きな鱧を選んでお出ししています。11月になると「まだ鱧があるんか」とお客様にびっくりされますけど、晩秋も美味いですよね。
- 上野:
- 秋鱧は皮も骨もしっかりしてるから、うちではキノコとさっと炊いたり、揚げたりすることが多いかな。脂がのってるから、火を入れてもパサつかないし、焼き物にも向いてるよね。
- 杉本:
- うちは単品料理が主体なので、賀茂茄子と揚げ出しにした一品や土瓶蒸し、天ぷらが定番です。数年前から、持ち帰り用に鱧カツサンドもやっていて、ご好評をいただいてます。
- 上野:
- 鱧フライ、大好物やわ。タルタルにウスターソースを合わせるのが僕の好みで…。って、思わず脱線してしもたけど、今回のテーマは秋鱧の割鮮。『和亨』では、どんなお造りを出してるのん?
- 杉本:
- 僕は、落としや湯引きがあまり好みじゃないので、夏からずーっと焼き霜です。
- 上野:
- 秋鱧の皮は硬いから、焼き霜は理に適った調理法やね。うちは、骨切りして皮を引いて昆布〆か、皮付きの昆布〆の焼き霜が多いかな。
ほな、まずは杉本君から、秋鱧ならではの割鮮を作ってもらおうかな。
『和亨』杉本 亨さん作・秋鱧の鯖へしこ和え 淡口割り醤油
- 杉本:
- 今回は『㐂川』で学んだことを生かした割鮮を作ろうと思って、パッと思い浮かんだのが、へしこやったんですよ。金沢の珍味「フグの子糠漬け」が大阪でまだ知られていなかった時代に、大親父さん(初代・上野修三さん)が、いち早く取り入れてましたね。
- 上野:
- あぁ、やってたね。魚卵を使った真砂(まさご)和えみたいに、造り身と和えたりしてたなぁ。
- 杉本:
- フグの真子(卵巣)の猛毒が長期間糠漬けにすると消えるという話でお客さんと盛り上がってはりましたよね。なんでも取り入れて、大阪らしい喰い味にする手法がすごいな、と脱帽しました。うちでは、きずし(〆鯖)が余ったら糠床に漬けて、へしこを自家製しているので、今回はこれを割鮮に生かしてみました。
- 上野:
- 秋鱧にへしこを合わせて、淡口醤油で食べさせるのん?
- 杉本:
- 秋鱧は焼き霜にして、焼きへしことワサビを天盛りに。「超特選丸大豆うすくち吟旬芳醇」を酒で割って、造り醤油にしています。実は、へしこの糠床にも淡口醤油をたっぷり使ってて。だしを取った後のカツオ節と昆布を米糠と混ぜ、「特選丸大豆うすくちしょうゆ」で味を引き締めています。
「秋鱧の鯖へしこ和え 淡口割り醤油」の作り方

【材料(9人分)】
秋鱧……1/2尾(900gサイズ)
塩……適量
●鯖へしこ(作りやすい量)
│〆鯖※……2〜3尾
│米糠……240g
│淡口醤油(特選丸大豆うすくちしょうゆ)……100ml
│カツオ昆布だしのだしがら……220g
淡口醤油(超特選丸大豆うすくち吟旬芳醇)・酒・ワサビ……各適量
※〆鯖
鯖の上身にベタ塩をして30分置き、そのまま酢に10分漬ける。
【作り方】
<焼き鯖へしこを作る>
- ①
- カツオ昆布だしのだしがらをミキサーにかけてペースト状にし、米糠・淡口醤油(特選丸大豆うすくちしょうゆ)と混ぜ合わせ、糠床を作る。

- ②
- 〆鯖の身側に①を塗り、真空にして1カ月以上漬ける。

- ③
- ②の糠を拭き取り、バーナーで全面を炙る。そのまま一晩置いて馴染ませる。

<秋鱧を焼き霜にする>
- ④
- 秋鱧を三枚におろし、骨切りする。皮側に薄塩をあてる。
- ⑤
- 炭を熾(おこ)し、④の皮目を直接炭に当てて焼き霜にする。

<仕上げる>
- ⑥
- ⑤を縦半分にしてから、小さめの一口大に切る。③を5㎜角に切ってワサビと共にのせ、器に盛る。
- ⑦
- 淡口醤油(超特選丸大豆うすくち吟旬芳醇)と酒を2:1で合わせた造り醤油を添える。

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上野

- へしこの量が絶妙。塩分も独特のクセもあるけど、量を控えめにしたことで秋鱧の持ち味が生かされてる。淡泊な走りの鱧ではへしこの味に負けてしまうやろから、この時季ならではの仕立てやね。
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杉本

- 食べ続けるとちょっと飽きるかなと思って、酒で割った淡口醤油を添えました。
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上野

- 「吟旬芳醇」は香りがいいから、少しつけて食べると、秋鱧の焼き霜の香ばしさやへしこの旨みと相まって、口の中にふわ〜っと広がる。飲ませる割鮮やね〜。
『浪速割烹 㐂川』上野 修さん作・秋鱧昆布〆 紅玉和え
- 上野:
- 秋は実りの季節やから、僕は秋鱧に何かフルーツを合わせようかなと。甘み控えめで、しっかりと酸味がある紅玉を和え衣にしてね。リンゴは変色しやすいのでスダチで色止めし、淡口醤油で塩味と深みを加えて、オリーブ油はまとめ役やね。
- 杉本:
- 秋鱧は皮を引いて、生で和えてはりますね。
- 上野:
- 焼き霜も考えたけど、あの香ばしさと皮の弾力が紅玉の和え衣とはミスマッチかなと。リンゴに水分があるから、秋鱧は脱水させてから骨切りして、皮を引いて昆布〆にしてる。
塩〆で脱水させる方法もあるけど、和え衣との繋がりを考えて、淡口醤油と煮切り酒を吹きかけてみたんやけどね。ほどよい塩分が付いて、身の水分も最小限に抑えられて、いい感じに仕上がったかな。
- 杉本:
- 浮袋も皮も余さず使っているのが、さすがやなと思いました。
- 上野:
- 皮を引いたから、刻んで揚げて、クルトンみたいな感覚で散らしてる。浮袋は湯引きにしてプツプツっと切って秋鱧と重ね盛りに。クニュっとした弾力と身のもっちり感の食感の違いも楽しんでもらおうと思って。
「秋鱧昆布〆 紅玉和え」の作り方

【材料(8人前)】
秋鱧……1/3尾(800gサイズ)
淡口醤油・煮切り酒・昆布……各適量
●紅玉和え衣
│紅玉……1/2個
│スダチ果汁……1/2個分
│淡口醤油……小さじ1
│オリーブ油……小さじ1
│ディル……適量
小麦粉・揚げ油・ディル……各適量
【作り方】
<秋鱧を昆布〆にする>
- ①
- 秋鱧を三枚におろす。浮袋を外し、適宜切って湯引きにする。
- ②
- 淡口醤油と煮切り酒を3:2で合わせ、①の身側にまんべんなく吹きかける。15分置いて下味を付けたら、表面を軽く拭き、脱水シートに身側をのせて約30分脱水させる。

- ③
- ②を縦半分に切ってから骨切りし、皮を引く。30分ほど昆布〆する。

<紅玉和え衣を作る>
- ④
- 紅玉を皮付きのまま鬼おろしでする。
- ⑤
- ボウルに④とスダチ果汁・オリーブ油・刻んだディルを合わせ、淡口醤油で味を調える。

<仕上げる>
- ⑥
- ③の皮を1㎝角に切り、小麦粉をまぶして160℃で揚げる。
- ⑦
- ③の身を一口大に切って、①の浮袋と重ね盛りにする。⑤をかけ、⑥を天盛りにし、ディルをあしらう。

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杉本

- 塩〆してからスダチ果汁に潜らせてオイルを絡めたマリネ風は『㐂川』ならではの割鮮。うちも、後輩たちも受け継いでます。そのアレンジ版ですね。淡口醤油で味に深みが出ています。リンゴの酸味やディルの風味と、おやっさんはホンマに足し算が巧みやなと思いました。
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上野

- お造りはタレで食べるのが定番やけど、魚の持ち味が引き立つような味を少し付けておいて、タレや和え衣の方は優しい味にする、というのが僕の好みなんやろね。
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杉本

- 秋鱧の旨みがしっかり感じられて、もちもちの食感もいいですね。皮のカリカリ感と、浮袋の弾力がいいアクセントでした。食材を余さず使って、より美味しく仕立てる。これぞ“始末の心”ですね!
超特選丸大豆うすくち吟旬芳醇(左)
国産原料を100%使用。丸大豆しょうゆと米糀の二段熟成で、まろやかな味わいに。400ml。
特選丸大豆うすくちしょうゆ(右)
国産原料を100%使用。淡く上品な色合いと、おだやかな香りで素材を生かします。500ml。
■問合せ:ヒガシマル醤油㈱ お客様相談室 ☏0791-63-4635(受付時間9:00~17:00、土・日曜・祝日・年末年始・夏期休暇を除く)https://www.higashimaru.co.jp
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