「祇園さゝ木」一門会、師弟セッション

『衹園さゝ木』8月の献立会議【前編】

7/31~9/2に提供するコース内容を師弟で話し合う、京都『衹園さゝ木』の献立会議。8月の京都は暑さ厳しく、涼し気な仕立てが求められます。弟子は「自分が考えた料理を提供したい!」とアピール。対して大将・佐々木 浩さんは「今、美味しい食材は何か」「どんな仕立てが求められるのか」も含めて考えながら、献立に反映していきます。前編では先付、八寸、お椀、向付の会議模様をお届けします。


『衹園さゝ木』の献立会議:2023年、リニューアルを経てコンセプトを「師弟で挑む味づくり」に。調理スタッフと共にアイデアを出し合い、若い感性と佐々木さんの経験値を掛け合わせ、献立を組み立てる。夜のコースは基本的に、先付、前菜、椀、向付2品、鮨2カン、焼き物、進肴(すすめざかな)、鉢物、ご飯物、デザート。昼のコースは夜のメニューを取り入れつつ、料理6品、ご飯、デザートで構成する。献立会議を経た後、すべての料理を試作し、改めて試食会でサービススタッフや姉妹店『衹園 楽味』のスタッフが試食、最終チェック。料理内容は、その都度、修正・改良が加えられる。

文:阪口 香 / 撮影:竹中稔彦

目次

佐々木 浩さん(『衹園 さゝ木』店主)

1961年、奈良県生まれ。前衛的な味と軽妙な話術で場を盛り上げるカウンターの名手。97年に独立し、衹園町北側に『衹園 さゝ木』開店。2006年、現在の地に移転してからはいよいよカリスマ性を発揮。「弟子を育てる店造りを」と再度改装を施し、23年8月、リニューアルオープンを果たす。

調理スタッフは、煮方を務める坂東春樹さん、田中涼平さん、千谷友哉さん、桑原汰知(たいち)さん、下澤海里(かいり)さん。他、4月より一年生が入店。また、『衹園さゝ木』監修予定の店舗より2名が参加。


先付

佐々木
8月ということで、盆地の京都はめちゃめちゃ暑い時季。見た目や仕立てとして涼し気なものを取り入れた献立にしたいな。
もう一つ、お盆もある。既に決まっているのが、8月1日からお盆までホオズキの八寸を出すこと。ホオズキは、お盆にご先祖様の魂が帰ってきた時の目印になるように、また、魂が宿る場所と考えられて飾るものやな。花を咲かせた後のガク(実を包んでいる、赤やオレンジ色の袋の部分)を器にし、中に料理を入れて5つほど並べたい。

まず、このホオズキの八寸からいくか、その前に先付を出すか、どうしよか。
坂東:
伊勢海老の焼き霜をソースで食べていただく先付を考えました。
ソースは、伊勢海老の頭でだしをとり、トマトや玉ネギ、パプリカなどの野菜、伊勢海老のミソ、あと酸味を加えたガスパチョのような味わい。周りにズッキーニやゴーヤなどの夏野菜を添えます。
佐々木:
ズッキーニやゴーヤは焼くつもりか?
坂東:
ズッキーニは焼いて、ゴーヤはボイルして苦味を抜き、お浸しにしようかと。
佐々木
なるほど。
この暑い時季、先付けで焼いた料理はやめた方がええ。香ばしさがガツンとくるから。
例えば干した白瓜の浅漬けみたいに、ポリポリした食感のものを添えるほうが夏場はウケるで。
田中:
僕は毛ガニと白ズイキの先付を考えました。
合わせるのは、発酵トマトウォーターのジュレか、冷たいあんか。トマトの甘みと乳酸発酵の自然な酸味で召し上がっていただきます。少し唐辛子も入れて、エッジを立ててもいいかなと思ってます。

千谷:
伊勢海老の焼き霜とズッキーニを組み合わせた先付をと思っています。
ズッキーニは麺状にして湯がき、伊勢海老オイルでマリネします。柑橘のヘベスの酸味を利かせたジュレをかけ、ツルムラサキ、丸くくり抜いたスイカを添え、ヘベスの皮を払います。
桑原:
僕はガスパチョのように、飲める感じの仕立てにできればと考えています。
素麺状にしたイカを器に入れ、ガスパチョだしを注ぎ、ウニをのせる。スイカのグラニテをかけ、花穂ジソを散らします。
佐々木:
グラニテは涼し気でええな。でも、ガスパチョをグラニテにした方がええんちゃうか。
スイカの風味は負けると思うで。
下澤:
毛ガニで考えました。脚とほぐし身をハスの葉盛りにし、湯剥きして刻んだトマトを入れたトマトウォーターゼリーをかけます。三ツ葉の軸を地漬けしたものをほぐし身の方に散らし、辛子を入れた黄身酢をかけます。

佐々木:
うん、おいしそうやね。
さて、どれでいこうか。伊勢海老か、イカか、毛ガニか。全部夏向きでええ案やから、どれでもいけると思うで。

ただ……。伊勢海老の場合、潰すところから板前でやらんと絵にならへんな。とはいえ、始めにそれをすると先付に追われてしまって後のオペレーションに響いてしまう。
伊勢海老は造り(向付)の二品目で出すのがええかもな。サッと湯引きにして、ガスパチョのソースで。あと、桑原が言ってたグラニテええやん。ガスパチョのグラニテをのせて、干した白瓜を食感で添える。

そうなると、先付は毛ガニがええな。田中が言うてたんは……白ズイキと発酵トマトウォーターのジュレか。トマトを別のものに代えやなあかんな。ガスパチョで使うから。
田中:
シンプルに加減酢にするか、ですね。
佐々木:
せやな! やわやわの加減酢ジュレにしたらええんちゃうかな。飲めるくらいの塩梅にして。
野菜は白ズイキに…。
田中:
ミニオクラとか。
佐々木:
ええやん。それでいこう!

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