「祇園さゝ木」一門会、師弟セッション

『衹園さゝ木』11月の献立会議【前編】

京都『衹園さゝ木』の大将・佐々木 浩さんと弟子たちでコースの料理内容を決める献立会議。今回ご紹介するのは、11/3~11/29に提供する夜コースの会議模様です。前編は先付、八寸、お椀の3品について。季節が移ろい、気温が上下するこの時季の料理をどう仕立てるのか。若手の感性と佐々木さんの経験値が重なり、献立が組み立てられます。


『衹園さゝ木』の献立会議:2023年、リニューアルを経てコンセプトを「師弟で挑む味づくり」に。調理スタッフと共にアイデアを出し合い、若い感性と佐々木さんの経験値を掛け合わせ、献立を組み立てる。夜のコースは基本的に、先付、前菜、椀、向付2品、鮨2カン、焼き物、進肴(すすめざかな)、鉢物、ご飯物、デザート。昼のコースは夜のメニューを取り入れつつ、料理6品、ご飯、デザートで構成する。献立会議を経た後、すべての料理を試作し、改めて試食会でサービススタッフや姉妹店『衹園 楽味』のスタッフが試食、最終チェック。料理内容は、その都度、修正・改良が加えられる。

文:阪口 香 / 撮影:内藤貞保

目次

佐々木 浩さん(『衹園 さゝ木』店主)

1961年、奈良県生まれ。前衛的な味と軽妙な話術で場を盛り上げるカウンターの名手。97年に独立し、衹園町北側に『衹園 さゝ木』開店。2006年、現在の地に移転してからはいよいよカリスマ性を発揮。「弟子を育てる店造りを」と再度改装を施し、23年8月、リニューアルオープンを果たす。

調理スタッフは右より、煮方を務める坂東春樹さん、田中涼平さん、堀越優希さん、桑原汰知(たいち)さん、安達康次郎さん、下澤海里(かいり)さん、坂元悠馬さん、橋本來樹さん、松久岳衛(がくえい)さん。


先付

佐々木:
いよいよ秋本番の11月。色鮮やかな錦秋をテーマに献立を立てたいな。

焼き物には今、一番脂がのってて美味い鰻を使いたい。あと、11月17日か18日くらいからカニを献立に入れたいから、それまで何かしら松茸の料理を出したいな。

それらを踏まえてどんどん案を出してってください。
坂東:
寒くなってきたので、温かい玉締めからスタートしたいと思っています。
鯛や甘鯛のだしでカブを炊き、玉締めに。カブを炊いただしで共地あんを作り、刻んだ香茸を混ぜてかける。最後に搾りスダチで酸味を添えます。
下澤:
最初はビールを飲まれる方が多いと思うので、アテっぽいものを一品目にお出ししたいです。
焼き立てのカブにイクラを添え、スダチを搾る。それをドリンクが出ると同時に提供し、追いかけるように温かい料理を出せたらいいな、と。
佐々木
うん、分かるで。急に寒くなったから温かい料理出したいよな。でも、明日は23℃くらいまで上がるし、11月に入ってからも20℃、ヘタしたら25℃まで上がる日もある。季節が移り変わっていく時ってそんなんや。 だから11月は常温の先付を出すのがいいと思う。冷蔵庫から出したような冷製じゃなく、常温や。そこに温かいあんをかけるとか、ゴマ酢を忍ばせるとか。それが季節の移ろう時の先付としてベストやと僕は思う。
田中:
勉強になります。
例えば、酢〆したサワラの皮目だけ炙って、小カブの浅漬け、焼きたてのキノコを合わせる。下に炒り米の香りを付けた重湯を敷いて、上から大徳寺納豆のパウダーか、カラスミをかける、というのはどうでしょう。
堀越:
僕もサワラで考えてました。野菜と合わせ、白酢と柿酢をかけて仕上げます。
安達:
秋の実りものの先付を考えました。
落花生豆腐にイチジクを添え、茹でた銀杏や厚めに輪切りしたシャインマスカットを散らします。クルミのペーストにあたりを打ち、クルミの実を混ぜたソースで召し上がっていただきます。
桑原:
最後の鱧松を先付にできたらと思います。
鱧は低温の油で火入れし、レアでねっとりした舌触りに。水菜か三つ葉のお浸しを敷いて、上から細く裂いた松茸をワサッとかぶせます。割り醤油か、酸味が利いた鱧だしをかけてお出しします。

佐々木:
おお、それ美味そうやな!
水菜は絶対合うんやけど……壬生菜(みぶな)と三つ葉の方がもっと美味いわ。それをお浸しにして、スダチを搾っておく。鱧を2カンか3カン置き、上から松茸、割り醤油で。それでいこう!

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