ウィズコロナの食

Vol.10笑顔が見えるマスク。会食にも!「近畿大学」の「感染症支援対策プロジェクト」

マグロの次はマスク?! 全面が透明で笑顔が見える! 上げ下げが簡単だからマスク会食にもピッタリ!――というプラスチック製の飛沫防止マウスシールド「近大マスク」。近畿大学が全学を挙げて取り組んでいる「“オール近大”新型コロナウイルス感染症対策支援プロジェクト」の一環として開発されたものだ。
2020年12月には、「コロナ禍からミナミの飲食店を救え!」と、このマスク3000個がミナミの飲食店約40社に寄贈された。「飲食店では従業員の表情も大切でしょう」と話す開発者の西籔(にしやぶ)和明教授に、マスクに託した想いを聞いた。

文:団田芳子 / 撮影:東谷幸一 

学生街には、安くて美味しいお好み焼き屋が付きもの。西日本有数のマンモス校である近畿大学の側には、創業50年の『お好み焼き てらまえ』がある。コロナ禍でなければ鉄板を囲む学生たちの笑顔が満開のはずだが、近頃は……。いや、ここでは笑顔が花開いている。
「はい、『近大マスク』ならこの通り!」と鉄板前で笑顔を見せるのは、近畿大学理工学部機械工学科の西籔和明教授だ。

「近大マスク」の本体は3D立体形状の透明カップ。見た目よりも軟らかくしなやかで、軽くて薄いので顔にフィットしつつ着け心地は軽やか。息苦しさも軽減される。メガネのように耳にかけるツルは取り外し可能。「グイグイ曲げても折れへん強い素材なので、自分の顔に合わせて調節してもらえますよ」と関西弁で教授は気取りなく話す。

wit0006逕サ蜒十_67A8327食べる時はひょいとカップを上げて、会話の時は下げて。マスク会食に最適だ。飲食店にとっても笑顔の接客が可能になる。「飲食店の活性化に繋がれば」と教授は期待する。

2020年3月、不織布マスクが不足し始めた頃、「マスクは、どうやって作るのか」との問合せが西籔教授のもとに入った。マスクの素材となる不織布は、布ではなくプラスチックがほとんど。教授の専門は、CFRPという航空機やスポーツ用品に使われる最先端のプラスチック材料の研究だそうで、その専門知識を生かして、世界標準のマスクを開発できないだろうかと考えた。

「これまでは、生産コストの関係で素材も生産も他国に頼っていましたが、コロナ禍においては自国でのモノづくりが重要になる。僕たちはモノづくりのプロ。そして大学のある東大阪はモノづくりの町。連携すればできるはず」。目指したのは、安価で大量に生産できる、毎日着けたくなるような次世代を感じられるデザイン性に優れたもの。同大文芸学部文化デザイン学科の柳橋 肇准教授と、多彩なプラスチック部品を製造している東大阪の町工場「モールドサポート」の協力を得て、2020年11月、発売にこぎ着けた。

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上/「高速度カメラで飛沫の計測検証も行い、安全性も確認済み。今後は女性や子供用サイズなども開発していけたら」と研究室で語る西籔教授。下/「近大マスク」の製造数は、21年8月には10万個を超えたとか。

「マスクの下は笑顔です」という貼り紙、ピースマークをあしらったマスクなど、街中ではさまざまに工夫が凝らされているが、やはり本物の笑顔が一番。まずこのマスクに飛びついたのは芸人さんたちだった。

「この頃、吉本の芸人さんがこのマスクを着けているのを、しょっちゅうテレビで見かけて驚いてます」と言いつつ、教授はマスクのカップをカパッと上げてお好み焼きをパクリ。ええっ自動?と驚いていたら、「このヒモです」と種明かし。ツルの先端に開けた穴にヒモを通して胸の前に下げておき、それを引っ張ることでカップを上げ下げしていたのだ。

食事中いちいち外すよりずっと簡単。マスク会食にうってつけだ。「今のようにウイルスが蔓延し続けている時期を過ぎ、少し収まってきたニューノーマルな世の中で、24時間着けていられるマスクになれば」と教授は期待している。

wit0006逕サ蜒十_67A8412西籔教授は近大卒業生で、『お好み焼き てらまえ』には、学生時代から通算30数年通っているとか。「僕のイチオシはモダン焼き!」と好物を前にご機嫌なご様子。嬉しそうな表情も近大マスクなら、よく見える。

マスクだけでなく、近大の同プロジェクトから生まれたものは他にも色々。例えば、「近大せっけん」。和歌山にある近大附属湯浅(ゆあさ)農場で育てた12種の柑橘の間引き果から採った精油を香料に使用して開発。

パッケージには、同プロジェクトの一環で製作した「ぬりえ」に、近大附属小学校、幼稚園、近大奈良病院の小児病棟に入院していた子どもたちが色づけした作品があしらわれている。ナチュラルな柑橘の香りが心地よく、泡立ちも滑らか。

また、同じく湯浅農場産「近大マンゴー」を100%使用した「フリーズドライマンゴー100%近大です。」も登場。砂糖も添加物も不使用で、厚めにスライスしたマンゴーをそのまんま凍らせ、真空状態で乾燥させている。

囓(かじ)ればさっくり、すぐに口の中でふわっと泡雪のように溶け消える不思議な食感はクセになりそう。コロナ禍に食の喜びと癒しを届けたいと、農場のある湯浅町の小学校・幼稚園に寄贈も。コロナ禍のストレス社会に、旬の夏以外にも手軽にビタミン・ミネラルが補給できる逸品だ。

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左/「近大せっけん」は、農場のある地元の小中学校や「アドベンチャーワールド」に寄贈された。右/「フリーズドライマンゴー100%近大です。」も、町内の小学校・幼稚園へ。コロナ禍にある子どもたちに食の喜びと癒しを提供した。

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