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【レシピ付き】和食のデザート Vol.2 大阪『日本酒 福』

大阪天満宮近くにある居酒屋『日本酒 福』。店主の藤原一秀さん曰く、「日本酒がとめどなく進む肴と、肴が止まらぬ旨い酒。この両輪を大切にしています」。気の利いたアテは、かまぼこなら魚のすり身を練るところから始めるなど、「作れるものは全て自分の手で」。手数をかけるその味づくりは、デザートにも見て取れます。品書きを賑わす、常時5種近いアイスはすべて自家製。なかでも奈良『今西酒造』の「みむろ杉」の酒粕と梅酒を用いたアイスは、酒処におけるデザートの意義を感じさせる、左党も喜ぶ一品です。

文:船井香緒里 / 撮影:東谷幸一

大阪・大阪天満宮『日本酒 福』藤原一秀さん作
みむろ杉の酒粕と梅酒のアイス

「日本酒専門の居酒屋ですが、デザートも抜かりはないです」とは、自称「左党で甘党」の藤原さんらしい。しかし「すべてのお客さんが甘味を注文するわけではないし、デザートが全く出ない日だってあります」。そこで藤原さんは、冷凍庫にストックでき、かつ日持ちするアイスに着眼。「ケーキを作っていた頃に比べて、食材ロスが随分減りましたね」。

今では、季節のフルーツを用いたものから、ゴボウや白味噌、本ワサビの鮮烈な香りを生かしたものまで、素材感がみなぎるアイスが常時5種程度。なかでも、「みむろ杉」が主役のアイスには、締めでありながら“飲ませる”工夫が見え隠れする。

店主が惚れ込んだ「三諸杉(みむろすぎ) 菩提酛(ぼだいもと)」を醸す、蔵の酒粕が主役

「常時ストックする酒の一つが『三諸杉 菩提酛』です」。同じく『今西酒造』が醸す、地元限定流通の酒だ。菩提酛とは、室町時代に奈良で生み出されたとされる、伝統的な酒母(酛)のこと。『菩提山 正暦寺(しょうりゃくじ)』で仕込むこの酒母は、奈良の酒蔵が共有し、それぞれの蔵で独自の酒を醸す。

藤原さんが言うには「『三諸杉 菩提酛』は独特の旨み、さらには上品な甘みや苦味も健在。定点観測をすると年々、味の変化も。だから、僕をずっと魅了し続けています」。

同蔵の酒粕を、メニューに取り入れられないか…。そう考えた藤原さんは、「みむろ杉 特別純米辛口 露葉風(つゆばかぜ)」の酒粕に出合う。「雑味のない味わいと、ふくよかな旨みを、アイスで表現します」。酒粕の単体使いもありかもしれないが、あえて梅酒を組み合わせる。「『今西酒造』さんで味わった酒粕アイスがとても美味しくて。ここに梅酒を入れてもありでは?と。思いつきです。ルーツが同じだから美味しいに決まっている」。

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