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【レシピ付き】あんかけ料理 Vol.3 東京『銀座 矢部』

2022.11.17
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連載:特集

東京には締めの食事に蕎麦を供する和食店が何軒かありますが、手打ち十割蕎麦を献立に組み入れる『銀座 矢部』の主人・矢部久雄さんは、その先駆者的存在です。国産、天然物の季節の食材を駆使して自由闊達に組み立てた料理の後に供される、清冽な蕎麦。その流れの中で、ほっと一息つくような「京かぶらの皮餡かけ」は、丁寧な仕事に裏打ちされた京かぶらの美味しさを丸ごと余すことなく味わう一品。蓋を開けてふわっと立ち昇るカブの香り、その滋味が忘れがたい印象を残します。

文:瀬川 慧 / 撮影:公文美和

東京・銀座『銀座 矢部』矢部久雄さん作  
京かぶらの皮餡かけ

「京かぶらは京都を代表する冬野菜。関東の漬物用のカブ、聖護院かぶ、天王寺蕪(かぶら)とも違うジューシーさがあり、皮までしっかり甘い。香りも強いんです」。

使い始めた最初の頃は、皮の部分は漬物に。立派な葉の部分は油揚げと炒めて賄(まかな)いにしていたそうだ。だが、食べてみると実に美味い。ジューシーな京かぶらにしっとり寄り添うあん仕立てを考えていた矢部さんは、その皮を使ってあんを作ることを思い立つ。

「旨みの濃い玉ネギを加えたあんも考えましたが、それでは椀の蓋を開けたときの香りが違う。せっかくの京かぶらのいい香りを邪魔してしまいます」。

柔らかく蒸した皮を裏漉しし、葛を引いて作ったあんは、思った通りシンプルに炊いたカブと最高の相性をみせる。加えて、アクセントにほんの少しのせた葉の炒め煮が心地よい苦味を添える。京かぶらを丸ごと味わう、最適な組合せだ。

皮は厚くむき、蒸して裏漉しする

美味しい皮のあんを作るためには、皮を厚くむくことも大切。たまにヒネたカブもあるため、蒸し時間は実際に食べてみて加減するといい。蒸し上がった熱々の皮から、甘い匂いが立ち昇る。初めのうちは、皮を昆布だしで煮ていたが、どうしても水っぽくなるため、蒸すようになったという。これを熱いうちに裏漉し器で粗目、細目と2回丁寧に漉す。

「今の人はすぐにフードプロセッサーにかけちゃうだろうけど、仕上がりのなめらかさが全然違うんです。手間はかかるけれど、こうした仕事が和食では特に大切だと思いますね」。

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