【レシピ付き】温まる一品Vol.1 大阪『翠 岡﨑』の先付。白甘鯛と百合根、白菜摺流し
大阪・東心斎橋にある割烹『翠 岡﨑』。「日本料理の伝統と少しの驚き、その調和を大切にしたいです」。そう話す店主の岡﨑直哉さんが冬の先付で心がけたのは「インパクトと、ほっとする味を両立させること」。見るからに芳しい柚子釜の中には、厚みのある白甘鯛。なめらかな百合根(ユリネ)生地や、とろみを利かせた白菜のすり流しが層を成す、コントラストが印象的な一品です。
大阪『翠 岡﨑』岡﨑直哉さん作
白甘鯛と百合根、白菜摺流し
かつて「日本料理 翠(現『翠 大屋』)」で二番手を務め、2023年に暖簾分けの形で独立した岡﨑さん。肌寒い時期の“温まる先付”として提案してくださったのは、冬至らしい素材使いはもちろん「咀嚼のテクスチャー」を重視した料理。
「私の体感なのですが、揚げ物などクリスピーな食感は咀嚼回数も多く、冬向きではないと考えていて。とろりとした質感が、冬の温もりに深みを与えてくれます」。
柚子釜の中には、インパクトある白甘鯛に、まったりとした百合根生地と、程よいとろみがついた白菜のすり流し。「冬らしい甘みや旨みを、じんわりと感じていただけるよう意識しました」。
五感を刺激する温かい先付は、食べる側の期待感を上げ、ハートを掴む仕掛けに満ちている。
もっちり、なめらかな百合根生地に
百合根は蒸したものに水を合わせてフードプロセッサーにかけた後、米油を加えてさらに攪拌。「あらかじめ百合根と水を撹拌させておくことで、後から加える米油との乳化が促進します」。仕上がりは、もっちりとした、まるでトルコアイスのような粘り。「米油を入れすぎると分離するので気をつけてください。乳化がうまくいけば、乳製品を使わずともコクの深い仕上がりになりますね」。
すり流しに白甘鯛の旨みと白菜の甘みを閉じ込める
白菜のすり流しには「冬らしい風味を重ねたい」と、白甘鯛のアラから引いただしを使う。
「白甘鯛の鮮度が良ければ霜降りなどは不要」と、アラに1時間ほど塩をあて、利尻昆布・水・酒を入れて煮たたせ、アクを取ったら95℃で40分、火にかける。曰く「吸地に用いる白甘鯛のだしであれば、もう少し温度を低く設定して繊細な味わいに仕上げる場合も。しかし今回は、甘みの強い白菜と合わせるため、甘鯛の強い旨みと香りを生かすことを目的として95℃をキープ。それ以上の温度で沸かし続けると濁りの原因になり、温度が低すぎるとクリアすぎるだしになるので細心の注意を払います」。
一方、白菜は米油で炒めて甘みを引き出す。水を加えて炊いた後、ミキサーで撹拌したものを裏漉しする。
白甘鯛のだしに葛でとろみを付け、白菜を合わせて加熱。「薄緑色した白菜の色が飛ばないよう、加熱時間は1分弱程度。旨みと甘みを閉じ込める感覚です」。
柚子釜で冬の景色と香りを主張
「この時期ならではの味わいや質感も大切ですが、最も意識したのは“冬の景色と香り”です」と、柚子釜を器にして見た目も麗しく仕上げる。「カウンター前で蒸すので、店内に柚子の香りが立ち込め、お客様との会話も膨らみます」。
その柚子釜に材料を盛り込んでいく。
百合根生地やすり流しは、ややぬるめの温度に。「イメージですが、お風呂に浸かっているようなじんわりとした温かさです」。その上に紀州備長炭で焼き上げた白甘鯛の身をのせたら完成だ。
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