「祇園さゝ木」一門会、師弟セッション

佐々木 浩流、7月の献立の立て方【前編】

梅雨が明け、暑さ厳しくなってくる7月。京都では「鱧祭り」とも言われる祇園祭が行われ、五節句のうちの一つ、七夕(しちせき/たなばた)や夏の土用の丑(うし)の日も迎えます。『衹園 楽味』で行われた試食会でも、暦や行事を意識した料理が登場します。


『衹園 楽味』:料理は先付、造りの後、魚・肉・野菜のネタ箱が豪快に並べられ、どう調理するか、料理人とお客がやり取りをして料理を決めるスタイル。「おすすめ」の品書きから選ぶことも可能で、試食会では先付と「おすすめ」の料理を決めるため、料理人がそれぞれ試作した1~3品を披露。佐々木 浩さんとスタッフ数人が試食し、ブラッシュアップを図る。

文:阪口 香 / 撮影:高見尊裕

目次

佐々木 浩さん(『衹園 さゝ木』店主)

1961年、奈良県生まれ。前衛的な味と軽妙な話術で場を盛り上げるカウンターの名手。98年、36歳で独立し、衹園町北側に『衹園 さゝ木』開店。2006年、現在の地に移転してからはいよいよカリスマ性を発揮。「弟子を育てる店造りを」と再度改装を施し、23年8月、リニューアルオープンを果たす。直営店の『衹園 楽味』は「大人の居酒屋」をコンセプトに掲げ、2013年に開店。アテをつまみながらお酒を楽しめる『食ばぁー 楽味』併設。

佐々木:
夏野菜が美味しい時季になってくるな。冬瓜やナス、トマトにズイキ。見た目にも涼し気な印象を与えられる。7月はそのあたりも意識して取り組んでいってほしいな。
全員:
はい!

gio0001b『衹園 楽味』の料理人。上左/髙橋貴明さん。2015年入店で、煮方を務める。上右/水口直規さん。2016年入店で、焼き場を担当。下左/向板の堀越優希さんは、2022年入店。下右/千谷友哉さん。2021年入店。

gio0002c試食したのは佐々木さんのほか、左/取締役の佐々木結花(以下:結花)さん、中/『衹園 さゝ木』若女将の佐々木志歩(以下:志歩)さん、右/ソムリエの佐々木恭輔(以下:恭輔)さん。

千谷友哉さん・髙橋貴明さん作──先付 いも・たこ・なんきん

千谷:
髙橋さんと合作した先付、「いも・たこ・なんきん」です。 
江戸時代、作家・井原西鶴が詠んだ有名な一節に「とかく女の好むもの 芝居 浄瑠璃 いも たこ なんきん」があり、現代でも3食材の炊合せなどで楽しまれています。

今は夏ですので里芋ではなく長芋を使い、すりおろしたものと叩いたものを合わせて寄せ、上から煎り酒ジュレをかけています。
髙橋:
七夕があるので、オクラは星形2つを添え、織姫と彦星をイメージしています。

gio7624d長芋はすりおろしたものとたたいたもの、塩を加え混ぜてゼラチンと寒天で固めた。炭で炙ったタコ、カボチャの旨煮、茹でて地漬けしたオクラと共に盛り、煎り酒ジュレをかけた。花穂ジソを添えて。

結花:
さっぱりしてて、7月の先付にいいと思います。女性が好みそうな仕立てですし。
佐々木:
うん、美味しいな。見た目にも涼し気でいい。

気をつけなあかんのは長芋。食感を出すためにすりおろしとたたいたものを入れてるけど、口に触って多く感じてしまうねん。鬼おろしのような粗いすりおろしにしたら?
千谷:
食べた時のバランスですね。
佐々木:
そういうこと。
あと、煎り酒に穂ジソは僕も好きなんやけど、この料理には冷たいだしをかけて、振り柚子の方がええと思うなぁ。
髙橋:
それも考えたんですけど、この後に提供したい料理も振り柚子だったのでやめたんです…。
佐々木:
振り柚子はそんなに印象に残るものでもないから、気にせんでも大丈夫やで。一回試してみて。
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