京都『浜作』、器と設えの美意識
京都『浜作』の暖簾にあるのは、「古都の味 日本の味 浜作」の文字。この書を揮毫したのは、贔屓客でもあった作家、川端康成です。昭和2(1927)年の創業以来、多くの文化人や財界人を迎えてきた同店。その歴史の中で磨かれてきた美学や縁は、さまざまな部分に表れています。三代目主人・森川裕之さんに、『浜作』を構成する美意識を伺いました。
森川裕之さん:京都『浜作』三代目主人。1962年、京都・祇園町生まれ。初代・森川 栄が創業した日本初の板前割烹を1991年に継ぎ、一期一会の精神で日々板場に立つ。お客には川端康成や谷崎潤一郎といった文豪、英国のチャールズ皇太子やチャールズ・チャップリンなど、三代にわたって国内外の貴紳に愛されてきた。通常営業のほか、受講生が延べ4万人を超える「浜作料理教室」も主催。「現代の名工(平成29年度 厚生労働省 卓越技能者)」として表彰される。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」などのテレビ出演多数、著書も「愛蔵版 和食の教科書 ぎをん献立帖」(世界文化社)など、多数執筆している。
100年かけて築いた“縁”が感じられる空間
2027年、『浜作』は創業100年を迎える。
始めに店を構えたのは祇園富永町、平成15年には八坂鳥居前へ移転。現在の新町通にて新装開店したのは令和3(2021)年であるから、建物の歴史としてはわずか5年ということになる。だが、品格、威厳、貫禄、趣——といった、言葉にしづらい力のようなものは変わらず、ともすると、ますます強くなっているように感じるのだ。
川端康成書の暖簾をくぐり、玄関へ。新しく配された屏風に目が留まる。「4年の歳月をかけ、ようやく完成しました」と森川さん。そこには、川端康成、福田平八郎、河井寛次郎、谷崎潤一郎、島崎藤村、湯川秀樹、渋沢栄一、バーナード・リーチ、北大路魯山人……実に、77名の貴紳たちのサインが色紙に写されていた。
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