【レシピ付き】大阪料理に見る、始末の心
良い食材を選び、無駄なく使い切る。“始末の料理”ともいわれる大阪料理の精神です。今回は、大阪の割烹『翠 大屋』(取材時は『翠』)の大屋友和さんに、その心と、お店で提供している料理、さらに挑戦しやすい始末の料理のレシピを教わります。
始末の料理とは
始末の料理。その意味を、ナニワ商人のドケチ根性が生んだ倹約料理と誤解してはおられまいか。
昭和52年創業『浪速割烹 㐂川』で11年。「おやっさん(二代目・上野 修さん)から、それはもうコンコンと骨の髄まで教わりました」と言う日本料理『翠』店主・大屋友和さん。初めの頃は、野菜の外葉や皮を何気なく捨ててどやされたこともあったとか。
一尾の魚も、身は造りに、骨や頭はだしに、内臓も余さず食べ尽くすのが当たり前。「店の残り物でまかないを作ろうと思ったら、何も残っていない。衝撃的でしたね(笑)」。今でいう“食品ロス削減”を、半世紀近くも前から意図せず実践していたわけだ。
上等な食材を選び、創意工夫に遊び心を加えて、無駄なく美味しく使い切る。“始末の心”を以(もっ)て仕立てるのが大阪料理。それは命を戴くこと、作物や家畜を育てた自然や人への感謝の想いに繋がる。
「“始末の心”は『いただきます』『ごちそうさま』という日本固有の美しい言葉にも通じるものだと思います」。
始末の料理例
『翠』で提供していた、始末の心を感じる料理をご紹介。
左/鯛醸し焼き。大根の皮や軸を発酵させた麹床に、鯛の頭と身を一晩漬け込み炭火焼きに。中骨と大根葉で取っただしで茹でた大根のお浸しを添えて。ウロコせんべいがアクセントに。右/伊勢海老共味噌煮。火を入れて照りをつけた白味噌に海老のミソやガラで取っただしを合わせた共味噌で身を炊いて。まるごと一尾使うことで、伊勢海老の持ち味を深めている。
左/蕪釜蒸し。深緑の地は蕪の葉のピュレ。昆布だけで取っただしを合わせ、優しい甘みを生かす。柔らかく炊いた蕪の釜に魚介を蒸して詰め、銀あんを。蕪の軸のささがきを天に。右/鴨燻製骨出汁椀。藁で燻した鴨の骨でとっただし。ロースは炭火焼、モモ肉はズリや肝ごと叩いてつくねに。大和橘の果汁で香りを加え、葉は椀種として添え、皮は天に盛って。
始末の料理レシピ
お得だからと安く手に入れた野菜も、外葉や皮を捨てれば使えるところが少なくなって、かえって高く付く。良い食材を選べば、安心して最後まで使い切れるというもの。その心が“始末の料理”への第一歩。割烹的始末の料理を『翠』の大屋さんに伝授いただいた。
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