「祇園さゝ木」一門会、師弟セッション

佐々木 浩流、2月の献立の立て方【前編】

京都『衹園 さゝ木』直営の『衹園 楽味』では、毎月中~下旬頃、「試食会」を行い、翌月の先付と「おすすめ」の献立を決めます。カウンターには『衹園 さゝ木』店主・佐々木 浩さんとスタッフ数人が席に着き、『楽味』の料理人が試作した料理を試食。お客に出す料理にブラッシュアップするため、意見を真正面からぶつけます。今回は2月の料理の試食会を2回にわたってお届けします。

文:阪口 香 / 撮影:高見尊裕 

目次

佐々木 浩さん(『衹園 さゝ木』店主)

1961年、奈良県生まれ。前衛的な味と軽妙な話術で場を盛り上げるカウンターの名手。98年、36歳で独立し、衹園町北側に『衹園 さゝ木』開店。2006年、現在の地に移転してからはいよいよカリスマ性を発揮。「弟子を育てる店造りを」と再度改装を施し、23年8月、リニューアルオープンを果たす。直営店の『衹園 楽味』は「大人の居酒屋」をコンセプトに掲げ、2013年に開店。アテをつまみながらお酒を楽しめる『食ばぁー 楽味』併設。

2月はほっこりとした仕立てを意識

『衹園 楽味』は先付、造りの後、魚・肉・野菜のネタ箱が豪快に並べられ、どう調理するか、料理人とお客がやり取りをして料理を決めるスタイル。「おすすめ」の品書きから選ぶことも可能で、試食会では先付と「おすすめ」の料理を決めるため、料理人がそれぞれ試作した1~3品を披露。佐々木 浩さんとスタッフ数人が試食し、ブラッシュアップを図る。

gio0001c『衹園 楽味』の料理人。上左/髙橋貴明さん。2015年入店で、煮方を務める。上右/水口直規さん。2016年入店で、焼き場を担当。下左/向板の堀越優希さんは、2022年入店。下右/千谷友哉さん。2021年入店。

gio7388d試食したのは、佐々木さんのほか、左からソムリエの佐々木恭輔(以下:恭輔)さん、『衹園さゝ木』女将の佐々木太津子(以下:太津子)さん、『衹園さゝ木』仲居の杉本弥生さん。

佐々木:
えー、今回は2月の献立。立春という言葉があるように暦の上では春なんやけど、京都はまだまだ寒い。ほっこりする料理が喜ばれる時季や。お客さんに「コレ食べたい!」と思っていただける仕立てやセールスポイントをアピールしていってくれ。

ほな、やろう!

千谷友哉さん作──冷たいカブラ蒸し

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千谷:
先付の「冷たいカブラ蒸し」です!
メインは霜降りしたホタテと甘エビ。早春を感じさせる芽キャベツと菜の花はだしで味を含めてサッと焼き、文旦の果肉を添えています。上にはすり下ろして卵白や塩と合わせ、蒸して冷やしたカブラをのせました。
佐々木:
いただきます!……どう食べるん?
千谷:
全体を崩しながら召し上がっていただけたら。
佐々木:
その説明が必要やな。カブラだけで食べてしまいそうや。
…千谷、この料理にカブラをのせた意図は何や?
千谷:
2月なんで、雪をイメージしました。
佐々木:
確かに季節感を演出するために、見た目のデザインは大事や。けどこの料理、カブラの味が主張してないし、一体感がない。味わいとしてのせてる意味がないねん。
お客さんに「冬の京都と言えばカブラ蒸しやけど、冷やしたのも美味しいやん」って言わさなあかん。さてどうするか。
例えば、食材とカブラを繋ぐ餡(あん)を忍ばせたらどうやろ。カツオ昆布だしに葛でとろみを付けたものを常温にして、食材にスプーン2 杯ほどかけるんや。ほんでカブラをのせたら、もっとまとわりついて絡むはず。アクセントにワサビかスダチを添えるとええかもな。
千谷:
ありがとうございます。
全体の味のバランスをみて、調整してみます!
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