佐々木 浩流、3月の献立の立て方【前編】
上巳(じょうし)の節句や春分を迎える3月。日が延び、気候も穏やかになる季節です。京都『衹園 さゝ木』直営の『衹園 楽味』では、2月下旬に3月の献立の試食会が行われました。店主・佐々木 浩さんとスタッフ、『楽味』料理人が膝を付け合わせて意見をぶつけ合う模様を2回にわたってお届けします。
『衹園 楽味』:料理は先付、造りの後、魚・肉・野菜のネタ箱が豪快に並べられ、どう調理するか、料理人とお客がやり取りをして料理を決めるスタイル。「おすすめ」の品書きから選ぶことも可能で、試食会では先付と「おすすめ」の料理を決めるため、料理人がそれぞれ試作した1~3品を披露。佐々木 浩さんとスタッフ数人が試食し、ブラッシュアップを図る。
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佐々木 浩さん(『衹園 さゝ木』店主)
1961年、奈良県生まれ。前衛的な味と軽妙な話術で場を盛り上げるカウンターの名手。98年、36歳で独立し、衹園町北側に『衹園 さゝ木』開店。2006年、現在の地に移転してからはいよいよカリスマ性を発揮。「弟子を育てる店造りを」と再度改装を施し、23年8月、リニューアルオープンを果たす。直営店の『衹園 楽味』は「大人の居酒屋」をコンセプトに掲げ、2013年に開店。アテをつまみながらお酒を楽しめる『食ばぁー 楽味』併設。
3月は春食材を盛り込んで
- 佐々木:
- 3月は次第に気温が上がり始め、食材もいろんなものが出てくるな。器の中から春を感じられる料理を出していって欲しい。もちろん、盛り付け=デザインからも春を感じられることが大事。
ほな、早速いこう!
- 全員:
- はい!
『衹園 楽味』の料理人。上左/髙橋貴明さん。2015年入店で、煮方を務める。上右/水口直規さん。2016年入店で、焼き場を担当。下左/向板の堀越優希さんは、2022年入店。下右/千谷友哉さん。2021年入店。
試食したのは佐々木さんのほか、左からソムリエの佐々木恭輔(以下:恭輔)さん、取締役の佐々木結花(以下:結花)さん、『衹園さゝ木』女将の佐々木太津子(以下:太津子)さん。
千谷友哉さん作──先付 山菜と魚介 金柑ジュレ
- 千谷:
- 3月なので山菜の淡い苦みを意識しています。ウルイとコゴミ、魚介はミル貝とシラウオです。細かく刻んだ金柑(キンカン)を混ぜた金柑ジュレでご用意しています。
塩茹で・地漬けしたウルイとコゴミ、塩茹でしたミル貝とシラウオを重ね、カツオ昆布だしジュレに細かく刻んだ金柑を混ぜてかけた。
- 佐々木:
- 千谷、金柑は3月いっぱいまでないで。覚えとき、中国の春節※がピークやねん。2月終わったら金柑の実、全部落ちるで。
※春節は中国の三大節句(春節・端午節・中秋節)のひとつで、旧正月のこと。2024年は2月8~18日。金柑の木は「吉祥と富をもたらす縁起の良い木」とされ、家の玄関やベランダ、店頭などに飾られる。
- 結花:
- 金柑、他のものに替えた方がいいですね。ちょっと香りも薄い気がするし。
- 佐々木:
- せやな。三宝柑(サンポウカン)か……八朔(ハッサク)ええんちゃう? ボロボロっと実をほぐして。ジュレとの相性も良さそうや。
- 千谷:
- ありがとうございます。魚介との相性も良さそうです。
- 佐々木:
- 気を付けて欲しいのがシラウオ。気候によって値段がかなり上下するねん。塩茹でするんやったら、ええ時に多めに仕入れて冷凍しとくとか、原価もしっかり考えやなあかんで。
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