佐々木 浩流、4月の献立の立て方【前編】
三寒四温で寒暖が入り混じる4月。『衹園 楽味』で行われた献立の試食会でも、料理の仕立てが話題になりました。『衹園 さゝ木』店主・佐々木 浩さんが説く、春らしいデザインや仕立てとは。スタッフ、『楽味』料理人が膝を付け合わせて意見をぶつけ合う模様を2回にわたってお届けします。
『衹園 楽味』:料理は先付、造りの後、魚・肉・野菜のネタ箱が豪快に並べられ、どう調理するか、料理人とお客がやり取りをして料理を決めるスタイル。「おすすめ」の品書きから選ぶことも可能で、試食会では先付と「おすすめ」の料理を決めるため、料理人がそれぞれ試作した1~3品を披露。佐々木 浩さんとスタッフ数人が試食し、ブラッシュアップを図る。
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佐々木 浩さん(『衹園 さゝ木』店主)
1961年、奈良県生まれ。前衛的な味と軽妙な話術で場を盛り上げるカウンターの名手。98年、36歳で独立し、衹園町北側に『衹園 さゝ木』開店。2006年、現在の地に移転してからはいよいよカリスマ性を発揮。「弟子を育てる店造りを」と再度改装を施し、23年8月、リニューアルオープンを果たす。直営店の『衹園 楽味』は「大人の居酒屋」をコンセプトに掲げ、2013年に開店。アテをつまみながらお酒を楽しめる『食ばぁー 楽味』併設。
4月は春爛漫に!
- 佐々木:
- 4月は寒い日もあれば温かい日もある。とは言え“気分は春”や。気温もだんだん上がってくる。
料理の色味、献立、ほど良い酸味でお客さんに「春が来たなぁ」と感じていただきたい。そのへん留意して取り組んでくれ。
ほな、いこう!
- 全員:
- はい!
『衹園 楽味』の料理人。上左/髙橋貴明さん。2015年入店で、煮方を務める。上右/水口直規さん。2016年入店で、焼き場を担当。下左/向板の堀越優希さんは、2022年入店。下右/千谷友哉さん。2021年入店。
試食したのは佐々木さんのほか、左から『衹園さゝ木』女将の佐々木太津子(以下:太津子)さん、取締役の佐々木結花(以下:結花)さん、ソムリエの佐々木恭輔(以下:恭輔)さん。
千谷友哉さん作──桜鯛と春キャベツの先付
- 千谷:
- 桜鯛と乳酸発酵させた春キャベツを重ね、ライムの酸味を利かせたジュレをかけています。全体をほぐしてお召し上がりください。
昆布〆にした桜鯛、新玉ネギのピクルス、乳酸発酵させた春キャベツを重ね、ライムのジュレをかけている。赤ジソを添えて。
- 恭輔:
- 春らしいデザインがいいですね。そして春キャベツの淡い旨み、桜鯛の昆布〆の塩梅が良くて、先付にとてもいいと思いました。
- 佐々木:
- うん、めっちゃいい!
ただ、赤ジソじゃなくてグリーンのピーテンドリル(スナップエンドウの新芽)を添えたらもっと春らしいデザインになると思うで。さらに炒り玉子をパラパラッと添えたら、春爛漫や!
- 千谷:
- ありがとうございます!
佐々木恭輔さん作──アスパラの冷やし茶わん蒸し
アスパラガスの皮や筋からとっただしと昆布だし、アスパラガスの身、炒めた玉ネギをバイタミックス(ホールフードブレンダー)でミキシングして玉締めに。塩とブラックペッパーを振って蒸したアスパラガスをのせている。
- 恭輔:
- 追い先付かお待ちの間の一品として提供したい、アスパラの冷やし茶わん蒸しです。
爽やかなグリーンアスパラガスの風味を感じていただけたら。
- 太津子:
- 今日が3月の下旬ということもありますが、寒い時に食べると冷えますね。
- 佐々木:
- そうやな……気候によるな。4月に入って桜が咲いても、花冷えで寒い日はある。あったかい料理が欲しい日もあるやろな。
例えば、玉締めを作っておいて、提供する日の気候に合わせて冷やしたり温めたりするのはどうやろ。
- 恭輔:
- 温かいものも作ってみたのですが、玉子の味に負けてしまうんですよね。冷やした状態でも、ちょっと風味が弱いかな…と思っていたくらいで。
- 佐々木:
- アスパラの餡というか、ソースを上からかけたらええんちゃう?
グリーンアスパラガスって、ホワイトアスパラガスに比べると味が薄い。だから玉子の味に負けるねん。
玉締めとソースを作っておいて、寒かったら温めて、温かかったら冷やして出したらいいねん。そしたら気候にも対応できるし、グリーンアスパラガスの風味もしっかり感じてもらえるで!
- 恭輔:
- 確かに。一品としてのまとまりも出そうです。
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