『衹園 楽味』の料理人。上左／髙橋貴明さん。2015年入店で、煮方を務める。上右／水口直規さん。2016年入店で、焼き場を担当。下左／向板の堀越優希さんは、2022年入店。下右／千谷友哉さん。2021年入店。

試食したのは佐々木さんのほか、左から『衹園さゝ木』女将の佐々木太津子（以下：太津子）さん、取締役の佐々木結花（以下：結花）さん、ソムリエの佐々木恭輔（以下：恭輔）さん。

千谷友哉さん作──新ジャガ饅頭

千谷：

桜エビをたっぷり入れた、新ジャガ饅頭です。

蒸して裏漉しした新ジャガ・一寸豆・桜エビを合わせて丸にとり、砕いた「柿の種」を付けて揚げた。餡はエビの殻からとっただしと昆布だしを合わせ、葛でとろみをつけた。海老オイルをかけ、白髪ネギを盛り、黒コショウを振っている。

恭輔：

女性だとお腹いっぱいになりそうですね。もっと小さくして、餡を多めにした方がいいかも。

佐々木：

それはあるな。ほんで女性、こういうの好きやね。

太津子：

はい、好きですね。とっても美味しい。

佐々木：

ただこれは、今出す料理じゃない。秋の仕事やねん。
なんで秋かって言うと、本来、収穫の実りの芋で作るから。あと、「柿の種」みたいな醤油が利いたせんべいは紅葉の風景も想起させる。

今作るなら、百合根（ゆりね）まんじゅうや。梅雨前って、球根類がビタミンを蓄えて美味しくなるねん。エシャロットやノビル、ニンニクとかもやな。
この新ジャガを百合根に変えて、割ってきれいなグリーンを見せたうすい豆を入れてまんじゅうに。衣は、塩せんべいを砕いたものとか、白い衣にしたら春の演出になるな。

千谷：

ありがとうございます！

佐々木：

この料理には苦い思い出があってな……。僕も料理旅館で修業してる時代に、これをよく作ったんやけど、半分は一口付けて返ってくるねん。なぜか。女性は好きやねんけど、男性はこれで酒飲まれへんねん。そういう意味では、恭輔が言うたみたいに小さくして、餡を多くするというのがええかもしれへんな。