佐々木 浩流、9月の献立の立て方【前編】
秋の風情が深まりつつありますが、日中の残暑はまだまだ厳しい9月。『祇園 楽味』の献立試食会でも、季節感を取り入れながらもお客に寄り添った料理が考案されました。前後編で7品ずつ紹介します。
『衹園 楽味』:料理は先付、造りの後、魚・肉・野菜のネタ箱が豪快に並べられ、どう調理するか、料理人とお客がやり取りをして料理を決めるスタイル。「おすすめ」の品書きから選ぶことも可能で、試食会では先付と「おすすめ」の料理を決めるため、料理人がそれぞれ試作した1~3品を披露。佐々木 浩さんとスタッフ数人が試食し、ブラッシュアップを図る。
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佐々木 浩さん(『衹園 さゝ木』店主)
1961年、奈良県生まれ。前衛的な味と軽妙な話術で場を盛り上げるカウンターの名手。98年、36歳で独立し、衹園町北側に『衹園 さゝ木』開店。2006年、現在の地に移転してからはいよいよカリスマ性を発揮。「弟子を育てる店造りを」と再度改装を施し、23年8月、リニューアルオープンを果たす。直営店の『衹園 楽味』は「大人の居酒屋」をコンセプトに掲げ、2013年に開店。アテをつまみながらお酒を楽しめる『食ばぁー 楽味』併設。
『衹園 楽味』の料理人。上左/髙橋貴明さん。2015年入店で、煮方を務める。上右/水口直規さん。2016年入店で、焼き場を担当。下左/向板の堀越優希さんは、2022年入店。下中/千谷友哉さん。2021年入店。下右/見習いの山下一我さんは、2024年入店。
試食したのは佐々木さんのほか、左/『衹園さゝ木』女将の佐々木太津子(以下:太津子)さん、中/取締役の佐々木結花(以下:結花)さん、右/ソムリエの佐々木恭輔(以下:恭輔)さん。
水口直規さん作──先付 南京餅と長芋そうめん
- 水口:
- 南京餅と長芋素麺、レアにボイルしたエビの先付です。だしにカボスを搾ってますので、器に口を付けて飲み切っていただくと、さっぱりとしていただけるかと思います。
蒸したカボチャを葛粉、昆布だしと共に煉って流し缶で固めた南京餅、麺状に切って昆布〆にした長芋、半生に茹でたエビ。カツオ昆布だしに塩水・みりん・薄口醤油を加え、カボスを搾った食いだしに青ズイキを浮かべた。
- 結花:
- 9月といってもまだ暑いですし、こういうさっぱりとした料理が一品目に出てくるとお客さんに喜ばれると思います。
- 恭輔:
- 美味しいんですが、デザインとして少しインパクトが欲しいと思いました。9月は重陽の節句もあるので、季節感が出る菊花を散らすとか。
- 佐々木:
- そうやな、大きめの菊花を1~2枚散らすといいかも。
料理の内容でいうと、カボチャは味が薄いので、最低1週間ほど寝かせた方がいい。見て分かるけど、これ、仕入れて間もないやろ。色が薄いねん。茶色っぽくなるまで寝かせたら味も濃くなる。
あと、周りに青ズイキ散らしてもええねんけど、今やったら紫ずきん(丹波黒大豆を品種改良した枝豆専用の品種)も美味しいと思うで。これからまさに旬に入っていくし。
- 水口:
- 味わいとしても、存在感が出そうです。
- 佐々木:
- もう一点。
水口が言ったようにだしも飲んでもらいたいなら、だしの量を増やした方がいいと思う。そしたらお客さんも見た瞬間に「飲みたい!」と思ってくれはると思う。この器なら2㎜ほどアップさせるイメージや。
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