世界No.1フーディー浜田岳文×和食を“変える”料理人

山形『出羽屋(でわや)』佐藤治樹編。Vol.1 老舗を継ぎ、時代にフィットさせる

山形県西村山郡西川町。一年の半分近くが雪に閉ざされる、日本有数の豪雪地帯です。神おわす聖地として信仰される月山(がっさん)・羽黒山・湯殿山の出羽三山があり、その麓に構えるのが、1918年創業の料理屋兼宿(料理旅館)の『出羽屋』です。現在四代目の佐藤治樹さんが修業から戻って12年。近年では、全国から新幹線や飛行機を使ってお客が訪れています。代々受け継いだ味を守りつつ、新たなお客を呼ぶアイデアとは。数回に分けてご紹介します。

文:阪口 香 / 撮影:長谷川 潤

目次

浜田岳文さん(「株式会社アクセス・オール・エリア」代表)

1974年、兵庫県宝塚市生まれ。米国・イェール大学卒業(政治学専攻)。大学在学中、学生寮の不味い食事から逃れるため、ニューヨークを中心に食べ歩きを開始。卒業後、本格的に美食を追求するためフランス・パリに留学。南極から北朝鮮まで、世界約127カ国を踏破。一年の5カ月を海外、3カ月を東京、4カ月を地方で食べ歩く。「OAD Top Restaurants」(世界規模のレストラン投票システム)のレビュアーランキングで2018年度から6年連続で1位を獲得、国内外のメディアで食や旅に関する情報を発信している。2024年、自身初となる著書「美食の教養 -世界一の美食家が知っていること-」(ダイヤモンド社)を出版。

佐藤治樹さん(山形『出羽屋』店主)

1988年、山形県生まれ。東京の大学、そして「辻󠄀調理師専門学校」に通いつつ、『つきぢ田村』で修業を積む。祖父の急逝に伴い、『出羽屋』に入る。山菜採りの名人や近くの料理人、さらに近所の伝統食を知る方々の教えを吸収し、家族・スタッフと協力しながら『出羽屋』を営む。2023年より「シェフズテーブル」を新設し、全国からお客を呼ぶ店に。「ゴ・エ・ミヨ2024」にてテロワール賞を受賞した。

「山菜料理」を謳って、もうすぐ100年

浜田:
山深いこのエリアで山菜が食べ始められたのははるか昔。客人に振る舞う「山菜料理」として旗を揚げ、お商売を始めたのは『出羽屋』が始めと聞いています。
佐藤:
現在で創業97年。僕で四代目ですね。
浜田:
長い歴史の中で培われたお料理も素晴らしいのですが、僕がまずお聞きしたいのは「老舗の継ぎ方」についてです。
規模の小さいお店であれば思いっきり舵を切ることもできますが、『出羽屋』のように地元の方が軽食をとったり、法事やお祝いごとなど大きな集会ができたり。さらに出羽三山への観光や山岳信仰のため訪れる方々も受け入れる。それだけで十分、経営が成り立ちそうですし、スタイルを変えることはなかなか難しそうです。
でも近年、佐藤さんは1日1組限定の「シェフズテーブル」を作って新たな層を取り込み、今では数カ月先までグルメな人で予約が埋まるほど。新しい挑戦をしているのが素晴らしいな、と思っています。

新設したシェフズテーブル。調理場を囲むカウンターに、8席が設けられている。

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