和食のいろは

春(3~5月)の和食に彩りを添える飾り葉・かいしき

料理に添え、季節感の演出や、彩りをプラスする「かいしき」。防腐・防臭など薬効があるものや、長寿の象徴である松葉、「難を転じる」という厄除けに通ずる南天など、ハレの日の料理や祝いの膳に欠かせないものもあります。開花の季節は、かいしきにも花木が多く使われます。この時季ならではの演出法から「やってはいけない」タブーまで、「辻󠄀調理師専門学校」日本料理主任教授を務めた畑 耕一郎先生にお教えいただきます。


畑 耕一郎(はた こういちろう):大阪生まれ。「辻󠄀調理師専門学校」理事・技術顧問。「大阪料理会」会長。TBS「料理天国」やABC「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」など多くのTV番組に出演。『プロのためのわかりやすい日本料理』(柴田書店)など著書も多数。

文:阪口 香 / 撮影:下村亮人

目次


春のかいしきの特徴とは?

本来、日本料理における春のかいしきとは、年明け以降に使われるものを指します。

葉が一対であることから夫婦円満を意味する裏白(うらじろ)は、防腐作用があるため正月の重箱に多く使われますし、世代交代を意味する譲(ゆず)り葉、「茶花の女王」と言われる椿や山茶花(さざんか)なども、この季節を代表するかいしき。また、節分には鬼が苦手とする柊(ひいらぎ)も使われますね。

1月末頃から4月にかけては、花木が多く登場します。順番としては梅→桃→桜で、前菜や八寸など、コース料理の始めや、特に見栄えのする料理に添え、食べ手に印象付けるように使うのが良いでしょう。

蕾が付いた花木を手に入れたら吸水させながら温かい場所に置き、蕾が膨らんで花が咲くまで少しずつかいしきとして使い、季節の移ろいを表現する、というのも趣があります。

春のかいしきのタブーとは

開花の季節とはいえ、花をむやみやたらに使うのは品位がありませんね。また、コースの始めに桃、中盤に桜など、咲く時季が違う花を流れの中で登場させるのも季節感を混在させているように感じます。

ヨモギなど香りが強いものは、食べ物の香りの邪魔になる可能性がありますので、象徴的に使うに留め、多用しないようにしましょう。

また、この後にもお伝えしますが、節句にちなんで使うかいしきは、その節句が終わったら使わない方が望ましいです。節句は季節の節目となる日のことですから、次の日には新しい季節が始まると考えましょう。

春によく使われるかいしき

花木に加え、菜の花やヨモギなど、この季節によく使われるかいしきを紹介します。

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