和食のいろは

【一覧表付き】初秋が旬の魚介

2022.09.07
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連載:和食のいろは

サンマ(秋刀魚)を筆頭に、カジカ(鰍)、秋鯖、秋鮭……名前に秋の字がつく魚は文字通り秋に旬を迎えますが、季節の変わり目に当たる9・10月の海水温はまだ高め。近年は特にその傾向が強いので、サンマや鯖が本格的に出回るのは10月後半頃です。9月中旬頃から楽しめるのは、脂ののった戻りガツオ。また、大阪・泉州(せんしゅう)ではよく肥えたトビアラというエビが揚がります。
そんな9・10月に旬を迎える魚介を一覧でご紹介。「辻調理師専門学校」日本料理主任教授を務めた畑 耕一郎先生と、創業40年の北新地の名割烹『味菜(あじさい)』店主・坂本 晋さんに、代表的な魚介の美味しい調理法も解説いただきます。プロの方も、献立を考えるために、ぜひご活用ください。



畑 耕一郎(はた こういちろう):大阪生まれ。「辻調理師専門学校」理事・技術顧問。「大阪料理会」会長。TBS「料理天国」やABC「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」など多くのTV番組に出演。『プロのためのわかりやすい日本料理』(柴田書店)など著書も多数。


坂本 晋(さかもと すすむ):岐阜県高山市出身。18歳から下呂温泉『吉泉館』で修業し、大阪・北新地の料亭『神田川』へ。割烹『味菜』を開店し、40年が経つ。淀川や大阪湾の地魚に注力しながらも、全国各地から産地直送で旬の食材を取り寄せ、割烹料理に仕立てる。

文:小林明子 / 料理制作:大阪・北新地『味菜』 / 撮影:東谷幸一

初秋が旬の魚介の特徴とは?

“海の中の季節は、陸の季節の一カ月遅れ”とよく言われます。
年毎の天候によってももちろん差はありますが、この言い伝えからすると9月の海はまだ夏。その中でも少しずつ水温が下がる初秋は、日々刻々と獲れる魚の顔ぶれが変わる季節です。

サンマや鯖などの回遊魚は、北の海で豊富なプランクトンをたっぷり食べて、しっかり脂を蓄えます。そして、産卵のため、かつ好みの水温を求めて南下を始めます。

新米も出始める初秋は、夏場は落ちていた食欲が戻り始める時期。甘辛い煮付け、味噌柚庵地に漬けて焼くといった、日本酒やご飯を進ませる味わいの料理が好まれます。

初秋が旬の魚介一覧表

秋を代表する魚、サンマ

北太平洋に広く生息するサンマは冷たい水を好む魚。そのため、日本近海の海水温が高い夏場は遥か北の海を回遊し、秋になると日本列島に近づいてきます。

その名称は、細長い魚を意味する「サマナ(狭真魚)」が変化したという説、群で泳ぐ習性から“大きな群れを作る魚”を意味する「サワンマ」を語源とする説もあります。「秋刀魚」の字を当てるようになったのは大正時代のこと。和歌山県出身の詩人・佐藤春夫が大正11年に書いた「秋刀魚の歌」が知れ渡るようになってからと言われています。

サンマは秋を代表する庶民の味覚でしたが、年々漁獲高が減少。水揚げ量の少ない初秋は高値になりやすい傾向が毎年続いています。

「刀の形をした魚」とは書きますが、他の魚と同じく頭が小さくて胴体が太い個体が上物。正確には、頭が小さく見えるほどボテッと胴が肥えたもの。クチバシが黄色い、目が澄んでいるなども鮮度の目安になります。

苦みある“ワタ”を生かすとより美味

サンマは、脂ののった身はもちろん、ワタも美味。お二人とも、「皮目をパリッと仕上げる、シンプルな塩焼きで楽しんでいただきたい」と口を揃えておっしゃいます。

「胴は二分せずに姿のままで焼きたいですが、魚焼きグリルが小さい場合は無理があります。筒切りにした切り口からワタを抜き取り、身は塩を振って15分間ほどおいてから塩焼きに、ワタは少しのサラダ油を熱したフライパンで香ばしく焼き、塩で薄く味付けをして塩焼きの上にのせて食べましょう。香ばしいいワタの苦味が何とも言えません」(畑先生)。

「酢を加えた水で骨が柔らかくなるまで炊き、甘辛く煮付けるのも良いですね。ショウガや山椒の実も合います。水分を飛ばし、粉カツオをまぶしつけておくと保存食にもなります。お茶漬けに入れると最高ですよ」(坂本さん)。

サンマのワタ入り幽庵焼と、肝煮サンマの幽庵焼きと肝煮。「ワタの美味しさを知ってほしい」と、幽庵地にも炒めたワタを入れ、さらに焼き上げる際にもワタのペーストを塗って。肝煮は、サンマをワタ入りの状態でぶつ切りしてじっくり煮込んでいる。

きずしと言えば、真鯖

世界中の温帯海域に広く分布し、回遊する真鯖(マサバ)。それよりやや暖かい海域を好むゴマ鯖。近年は日本の市場にも多く出回っている、輸入されたタイセイヨウ鯖(別名ノルウェー鯖)。関西で好まれるのは真鯖です。日本の沿岸はもちろん、朝鮮半島南岸から済州島(チェジュトウ)、台湾、フィリピンなどの温帯域に広く生息しています。

「真鯖は美味しいエサや快適な水温を求めて回遊する魚ですが、好みの条件が揃う海域を見つけるとそのエリアに留まる性質があります。これを“根付き”と呼びますが、回遊するストレスがない、餌の状態が良い、水温や水流が適していて脂ののりがよく、身も締まっています。西日本では大分県・佐賀関、愛媛県・三崎町、和歌山・加太などが有名です」(畑先生)。

春から夏にかけての産卵を終え、冬に向かって甲殻類や小魚類、イカ類を活発に食べる秋が美味しくなる季節です。栄養面でも注目されていて、悪玉コレステロールを減らして善玉コレステロールを増やす効果が期待できるDHA(ドコサヘキサエン酸)、中性脂肪を減らす働きを持つEPA(エイコサペンタエン酸)などを多く含有。生活習慣病の予防に役立つと言われています。

脂のりを生かして、身はしっとりと

真鯖の下処理は塩で脱水するのが一般的ですが、砂糖を使っても。
身をガチガチにせず、ソフトに、なめらかな食感に仕立てることができます。また、砂糖が身に染み込むことはないので、甘みは残りません。

調理法については、「大阪で鯖と言えば、塩と酢で〆て作るきずしやバッテラです。脂がのってないと美味しいきずしは作れません」(坂本さん)。

「最近では大阪でもやたら味噌煮が登場しますが、かつて鯖と言えば、鮮度の良い魚と質の良い酒、醤油に恵まれたこともあって、少しの生姜味を効かせた甘味のある煮付けが定番でした。煮上がりに有馬山椒や秋らしく柚子の皮を添えたいものです」(畑先生)。

身の小豆色が濃いほど美味しい、戻りガツオ

初物好きの江戸っ子はことのほか春から初夏の初ガツオには思い入れが強かったようですが、高知県などの有名産地では初ガツオは当然のこと、初秋から秋本番にかけて三陸沖、房総半島沖から南下する戻りガツオ、下りガツオを味わいます。

太平洋の小魚などを思う存分食べた戻りガツオは旨みが濃く、タンパク質も多く含まれます。血合いには、各種ビタミンや鉄分、DHA、EPAなどの栄養素もたっぷり。夏バテした身体にふさわしい食材です。

「カツオは身の小豆色が濃いものが美味しいです。一尾丸ごと求める場合は、目が澄んでいて、魚体にハリがあるものを選んでください。尾の上の部分がザラザラしている個体が新鮮です」(坂本さん)。

たっぷりの香味や薬味と共に

戻りガツオの特徴である脂のりを堪能するなら、皮目だけをサッと炙るいぶし造りなどの刺身がベスト。高知では塩とたっぷりのニンニクで豪快に楽しむといいます。ショウガの千切り、シャキシャキの歯ごたえが持ち味の青ズイキ(ハスイモ)といった薬味たっぷりで味わうのも良い。「漁師さんが船上でカツオの刺身を誤ってマヨネーズに落としてしまったのを食べたら、意外と美味かったそうです。カツオやマグロなどの赤身で血の気が多い魚は意外にイケますよ。マヨネーズに刻みネギ、大葉やおろしニンニク、一味唐辛子は是非ものです」(畑先生)。

「鮮度のいいカツオは細造りにして、大葉やネギと共になめろうのように仕立てると良い肴になります」(坂本さん)。

カツオのなめろう風と塩タタキ右は塩タタキ。ニンニクチップとゲランドの塩(フルール・ド・セル)で。取材時のカツオは少し時季が早いものだったが、「あと一週間も経つと、皮と身の間に白い脂が入り、身はもっと小豆色になりますよ」と坂本さん。左は、大葉や玉ネギ、ミョウガなどと和えた「なめろう風」。ポン酢で薦める。

他にも、戻りガツオはヅケ丼にも向きます。その際の酢飯は薄味を心がけると良いでしょう。また、骨も活用することができるそうで、「アラからは良いだしが引けます。ぶつ切りにしてもフードプロセッサーで砕いても良いです。昆布と水を加えて、鍋の中心がやや強く沸き上がる程度の火加減でしっかりアクを取り続けると、澄んだ上品なだしが引けます。これで味噌汁を作ると驚くほど美味しいですよ」(畑先生)。

大阪人が好む、サワラの幼魚・サゴシ

出世魚のサゴシはサイズで呼び名が変化します。40〜50cmをサゴシ、50〜60cmをナギ(ヤナギ)、60cm以上をサワラと呼びます。ちなみにサゴシは、東日本ではサゴチと呼ばれています。

マグロを細長くしたような体つきが特徴。北海道南部から沖縄まで広く分布していますが、釣りの名所は瀬戸内海。兵庫~岡山辺りで馴染み深い魚です。イワシや鯖をエサにしていて、冬は深い海に移動するため、その前の秋が収穫期になります。

「大阪ではサゴシのきずしは是非もの、適度な脂ともっちりとした身質は格別です。皮は意外と柔らかいので、皮付きでも刺身にできますが、皮目に熱湯やよく熱した油をかけて、氷水に落とした『皮霜造り』もいいですね」(畑先生)。

「身が薄めのサワラは味噌漬けにも向きます。サゴシの場合は、味噌柚庵地に数時間漬けるだけで味が染み込みます」(坂本さん)。

庶民的な小エビ、トビアラ

クルマエビやヨシエビの仲間で、日本近海からインド洋、太平洋にかけて広く生息する、体長10cm前後のエビです。

大阪では大きいものをトビアラ、小さいものをジャコと呼びますが、北陸ではアカエビ、丹後はトノサンエビ、山形はナツエビやナワエビなど、地方名を数多く持つエビでもあります。

「兵庫県ではカワヅエビとも呼びます。芝エビに比べて身質が柔らかく、甘みが強いのが特徴。大阪の泉州地域では小ぶりなものを豆と一緒に煮る『ジャコ豆』『エビジャコ』、郷土料理・じゃここうことして食卓に上がります。じゃここうことは、泉州の水ナスの古漬けを塩抜きしたものと小エビを甘辛く炊き上げたものです」(畑先生)。

「大阪に出回るのは、泉州沖から和歌山辺りで獲れたものが多いですね。サッと塩茹でにして和え物に。かき揚げにするのも美味しいものです」(坂本さん)。

トビアラのかき揚げトビアラに枝豆と三ツ葉をそれぞれ合わせた2種のかき揚げ。煎ってすり鉢ですり、細かくした粗塩で。

ゴマとの相性抜群な、カマス

日本各地に生息するカマスは、温かい海を好む魚です。主に太平洋側で獲れる、サンマによく似た形のヤマトカマス。日本海側で主に獲れるアカカマス(本カマス)の2種類が一般的です。

ヤマトカマスは“ミズカマス”の別名も持つほど水分を多く含むため、主に干物に加工されます。アカカマスは脂がのっていて、焼き物に向きます。

歯が鋭く獰猛な顔つきのアカカマスは、イワシなどの小魚を旺盛に捕食する、攻撃性のある魚としても知られています。2m前後に成長するオニカマス(英語ではバラクーダ)という仲間もいて、人を襲うこともあるそうです。

「鮮度の良いアカカマスは、三枚におろして酢〆すると旨い寿司ネタになります。皮をサッと炙って仕立てる小袖寿司もよく作られます」(畑先生)。

「干物にゴマが散らしてあることからもわかるように、カマスにはゴマが合うと思います。半身の両端をくるっと巻いて香ばしく焼く両褄(りょうづま)焼きにする時も、ゴマ油をサッと塗ってゴマを散らします」(坂本さん)。

➡ご紹介した料理のレシピは、「『味菜』の割烹料理 初秋の魚介編」で配信。店主・坂本 晋さんの調理指南にご注目を!

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