和食のいろは

【一覧表付き】晩秋~初冬(11~12月)が旬の野菜

秋が深まると根菜類が美味しくなり、ネギや白菜、ホウレン草などの葉物野菜も最盛期を迎えます。年の瀬に向かって甘みや旨みが増す野菜を選ぶポイントや、風味を生かす調理法を、「辻󠄀調理師専門学校」日本料理主任教授を務めた畑 耕一郎先生と、創業40年の北新地の名割烹『味菜(あじさい)』店主・坂本 晋さんに解説いただきます。旬の食材一覧表は、献立を考える際などに、ぜひご活用ください。

畑 耕一郎(はた こういちろう):大阪生まれ。「辻󠄀調理師専門学校」理事・技術顧問。「大阪料理会」会長。TBS「料理天国」やABC「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」など多くのTV番組に出演。『プロのためのわかりやすい日本料理』(柴田書店)など著書も多数。


坂本 晋(さかもと すすむ):岐阜県高山市出身。18歳から下呂温泉『吉泉館』で修業し、大阪・北新地の料亭『神田川』へ。割烹『味菜』を開店し、40年が経つ。淀川や大阪湾の地魚に注力しながらも、全国各地から産地直送で旬の食材を取り寄せ、割烹料理に仕立てる。

文:小林明子 / 料理制作:大阪・北新地『味菜』 / 撮影:東谷幸一
2022.11.17配信記事を更新

晩秋~初冬(11~12月)に旬を迎える野菜の特徴とは?

11月の別名は霜月。霜が降り始める時期という意味です。実際の統計を見ると、近畿の山間部は11月下旬頃、平野部では12月の中旬頃までに初霜が降りることが多いようです。

霜に当たらないように育てる野菜もあれば、霜に当たることで甘みが増す野菜もありますが、日に日に深まる寒さに耐えるように、野菜は栄養を蓄え、旨みを増していきます。

晩秋~初冬(11~12月)が旬の野菜一覧

名前(カタカナ) 漢字表記 別名または同種
根野菜
エビイモ 海老芋、蝦芋 クジョウイモ(九条芋)
タケノコイモ 筍芋 キョウイモ(京芋)
キクイモ 菊芋  
アンノウイモ 安納芋  
ナガイモ 長芋  
ヤマトイモ 大和芋  
ジネンジョ 自然薯  
ユリネ 百合根  
カブ カブラ
クワイ 慈姑 タグサ(田草)、エンビソウ(燕尾草)、クワエ
ムカゴ 零余子 シュガ(珠芽)
ダイコン 大根 スズシロ(清白、蘿蔔)、オオネ(大根)
ゴボウ   牛蒡、牛旁
葉菜類 
キクナ 菊菜 シュンギク(春菊)
ネギ ナンバ(難波)、ナンバン(南蛮)
ホウレンソウ 法蓮草、菠薐草、鳳蓮草 カラナ(唐菜)
ワサビナ 山葵菜 アイサイナ(愛彩菜)
ノザワナ 野沢菜 シンシュウナ(信州菜)
タカナ 高菜 オオナ(大菜)、エドナ(江戸菜)
スグキナ 酸茎菜 カモナ(賀茂菜)、ヤシキナ(屋敷菜)、ゴショナ(御所菜)
ハクサイ 白菜  

エビに似た、海老芋

海老芋は、反り返った形と表面の縞模様がエビに見えることからその名がついた京野菜のひとつです。江戸時代に長崎から青蓮院宮(しょうれいいんのみや)が持ち帰った里芋の種を植えたのが始まりと言われています。

京都府の精華町や京田辺市、大阪府の富田林(とんだばやし)市や兵庫県姫路市などで栽培されていますが、全国シェアの8割を占めるのは静岡県の天竜川東岸。日本一の産地になっています。

生長に合わせて株元に土を寄せ集める作業を行うことで特有の縞模様を作るなど、とても手間がかかる作物。棒ダラと一緒にコトコト炊く“いもぼう”が京都名物として親しまれてきました。

海老芋の選び方

ずっしり重みを感じ、ふっくら丸みを帯びているものを選びます。表面に傷が無いかどうかも確かめましょう。

低温障害を起こしやすいので、冷蔵庫には入れないように。土を洗い落としてしまうと乾燥するので、土付きのまま新聞紙などに包み、風通しの良い冷暗所で保存します。

海老芋×エビは、テッパンの組合せ

ねっとりなめらかな肉質、甘みがあって煮崩れしにくいという特徴を持つ海老芋。里芋の仲間ながら里芋とは一線を画す味わいです。

「丸くなっている方は柔らかいので、だしだけでじっくり煮ても美味しい。あごだしで甘めに煮付けたり、あんかけにするのも良いですね。炊いた海老芋に片栗粉などを薄く付け、揚げてからあんかけにするとご馳走が出来上がります。親芋に近い細い方はやや筋張っていますが、炊いてから裏濾し、またはつぶすなどして和風コロッケ、すり流しにすると美味しく楽しめます」(畑先生)。

海老芋の煮物にだしを煮含めたエビを添えるのも、この季節、よく目にするシャレの利いた料理。
「店では、薄味に炊いた海老芋をサッと焼き、柚子味噌をのせてお出しします。海老味噌がけにした“エビ重ね”も良いですよ」(坂本さん)。

海老芋のエビ味噌焼き海老芋は米のとぎ汁で金串がスッと通るくらいまで茹で、さらに昆布カツオだしを塩・薄口醤油で吸地ほどに調味しただしで煮る。麦味噌・砂糖・酒を火にかけて煉ったものを海老芋の切り口に塗り、細かく切って酒煎りした車エビをのせて炭火で焼く。

大きさ・形の幅が広い、カブ

カブは昔から日本に自生していた在来種。ラディッシュのようなミニサイズのものや、病気にかかりにくく、全国で栽培される「ひかり蕪」は小・中・大サイズを収獲できます。千枚漬の原料として知られる「聖護院かぶ」のような大型、滋賀県名産の日野菜のように細長いものまで、大きさも形もさまざまです。

寒くなるほどに甘みが増すカブが最も多く出回るのは11~1月頃。でんぷんの消化酵素として働くアミラーゼを含有し、葉にはビタミンも含まれます。サラダや漬物、煮物に汁物など、クセがないのでどんな料理にも合います。

カブの選び方

葉がみずみずしく、広がっていないものが新鮮。根の部分にツヤがあり、重みを感じるカブを選びましょう。買って帰った後は葉を切り落として、乾燥しないよう別々に包んで冷蔵庫で保存します。葉は1~2日、根は3~4日程度日持ちします。

サラダ、漬け物、蒸し物…変幻自在なカブ料理

大阪でカブと言えば天王寺蕪(かぶら)。江戸時代から栽培されている、なにわの伝統野菜です。「根の大きさは8~10cm程度。肉質が緻密で旨みが濃いため、漬物に、薄くスライスしてサラダにも向きます。煮崩れしにくいのも特徴です」(畑先生)。

➡「上野修三の古典」では、天王寺蕪を余すことなく料(はか)ったレシピを公開しています。「なにわ伝統野菜の料り手として知られる上野流・天王寺蕪三部作

「他の地域では見かけない、関西特有の食べ方は蕪(かぶら)蒸し。甘みのある、きめ細かな肉質をたっぷりのあんと共に味わう冬のご馳走です」。具材として、料亭では甘鯛をよく使いますが、真鯛、マナガツオ、アカムツなどもよく合います。「ウナギの蒲焼や煮穴子でも良いですね。厚揚げや干しエビなど、風味が良い食材と一緒に煮ると、より一層美味しくなります。少し甘めの柚子味噌をのせれば、田楽風の一品が作れますよ」(坂本さん)。

蕪蒸しカブは皮を剥いてすりおろし、水分を自然に落としたものを卵白と合わせ、みりん・塩・薄口醤油少々で調味する。切り出した甘鯛を覆うようにのせ、百合根・ギンナン・エビ・三ツ葉を重ねて蒸す。「あんは、銀あんでもいいですが、甘鯛のアラからとったものを使えばより一体感が出ますよ」と坂本さん。ワサビを添えて。

「ワサビだけはぜひ、本ワサビを使って欲しいですね。手に入らない時は、柚子、ショウガを試してください。目先が変わりますよ」(畑先生)。

各地に根差した、“地物”が多い大根

今や一年中出回っている大根ですが、代表品種である青首大根の旬は11~2月頃にかけて。寒さに耐えるほどにみずみずしく、甘みが増していきます。

主な産地は、北海道、千葉県、青森県などですが、日本人の暮らしに溶け込んでいる野菜だけに、全国には昔から栽培されている地大根が多数あります。神奈川の三浦大根、東京の亀戸ダイコン、石川の源助だいこんなどが一例です。

近年は赤や黒、緑などの色付き大根も人気。赤系は特に種類が多く、皮は白いけれども中は赤い紅芯大根、皮は赤いけれども中は白い赤大根などに分類することができます。赤大根の中でも、皮も実も赤い「くれない総太り大根」などもあります。

大根の選び方

皮にハリがあり、葉もみずみずしいものが新鮮です。葉がしなびている大根は収穫してから日が経っているかもしれません。

麺状にして、鍋に加えてもいい大根

なにわの伝統野菜として認証されているのは田辺大根。大阪市東住吉区の田辺という地域で江戸時代から栽培されてきました。緻密な身質で煮崩れしにくいため、ふろふき、おでんなどにも向いています。

➡「上野修三の古典」では、田辺大根の皮や葉など、丸ごと使った5品のレシピを公開しています。「皮も葉も捨てるとこなし。“田辺大根だけ”で仕立てる往年の名作5品

「私が家でよく作る大根料理は、牛スジ肉との煮込み。午前中に仕込んだら夕食時までそのまま置いて味を染み込ませます。食べる直前に再度火入れして、熱々を勧めます」(畑先生)。

甘みがのった大根は、太めの千切りでサラダにしても美味。
「ピーラーで麺のように切り出し、サッと水にさらした大根を鍋だしでしゃぶしゃぶにしてもいい。ポン酢や麺つゆで食べるといくらでもイケますよ」(畑先生)。

関西の菊菜、関東の春菊

スーパーなどには一年中並びますが、葉や茎が柔らかくなる11~2月が旬の菊菜。

関東では春菊と呼ばれていますが、秋に花が咲く観賞用の菊に対して、春に花が咲く菊であることからその名が付いたと言われています。

菊菜は株が横に広がっていて、葉が広く切れ込みが浅い。苦みは控えめです。一方、春菊は株が上に向かって伸び、葉の切れ込みは深め。苦みは強めです。

菊菜の選び方

色が濃く、葉先までシャキッとしたものが新鮮。茎が太すぎない、かつハリのあるものを選びましょう。保存は冷蔵庫で。濡らしたキッチンペーパーなどで包んで、ビニール袋に入れ、立てておくと茎が曲がらずにキープできます。

鍋だけじゃない、菊菜の調理

代表的な産地は大阪の泉州。クセがなく茎も柔らかいので、鍋はもちろん、サラダにも向きます。「サッと茹でてだしで洗って、お浸しに。ざく切りにして塩揉みし、水分をしっかり切ってから挽肉と練って、市販の皮で包めば香りの良い水餃子が作れます」(畑先生)。

「店では白和えでよくお出しします。キノコやコンニャク、ニンジンなどを取り合わせると彩りも抜群です」(坂本さん)。

実は根っこも美味といいます。「よく洗って土を落とし、薄切りの豚肉としゃぶしゃぶにしてポン酢で味わいます。コリコリとした心地よい歯ごたえが格別です」(畑先生)。

菊菜の袱紗包み菊菜をざく切りにして豚ミンチ・ニラ・塩・ゴマ油・七味唐辛子と混ぜ、シュウマイの皮で包んで蒸し焼きにした一品。芽ネギを添えて。「餃子のタレでもいいですが、カツオ昆布だしと酢、みりん、薄口醤油を3:1:1:1の割合でひと煮立ちさせた割酢も美味しいですよ」と坂本さん。

➡ご紹介した料理のレシピは、「『味菜』の割烹料理 晩秋~初冬の野菜編」で配信。店主・坂本 晋さんの調理指南にご注目を!

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