和食のいろは

【一覧表付き】晩秋~初冬(11~12月)が旬の魚介

2022.11.18
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連載:和食のいろは

日毎に気温が下がっていくこの頃。同じように海水温も低下する晩秋は、魚も旺盛な食欲を見せ始めます。脂のりが良くなり、身が肥える魚種は豊富。そんな11・12月が旬の魚介を一覧でご紹介します。「辻󠄀調理師専門学校」日本料理主任教授を務めた畑 耕一郎先生と、創業40年の北新地の名割烹『味菜(あじさい)』店主・坂本 晋さんに、代表的な魚介の美味しい調理法も解説いただきます。

畑 耕一郎(はた こういちろう):大阪生まれ。「辻󠄀調理師専門学校」理事・技術顧問。「大阪料理会」会長。TBS「料理天国」やABC「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」など多くのTV番組に出演。『プロのためのわかりやすい日本料理』(柴田書店)など著書も多数。


坂本 晋(さかもと すすむ):岐阜県高山市出身。18歳から下呂温泉『吉泉館』で修業し、大阪・北新地の料亭『神田川』へ。割烹『味菜』を開店し、40年が経つ。淀川や大阪湾の地魚に注力しながらも、全国各地から産地直送で旬の食材を取り寄せ、割烹料理に仕立てる。

文:小林明子 / 料理制作:大阪・北新地『味菜』 / 撮影:東谷幸一

晩秋~初冬が旬の魚介の特徴とは?

冬が近づくにつれて、脂のりが良い魚が増えてきます。これは日に日に低下する海水温に対して、魚が自らの身を守ろうと脂肪を蓄えるからです。

美味しくなる魚種が増える要因はもうひとつ。それは食欲が増すから。魚も水温が高い時期は食が細くなる傾向にありますが、心地よい水温に近づくほどにプランクトンや小魚を旺盛に食べ、春の産卵に向けてエネルギーを蓄えます。

人間にとっても、寒さに備えて栄養をしっかり摂り、免疫力を高めたいタイミング。健康な身体を作るのに役立つ不飽和脂肪酸が多く含まれる魚の脂を摂るといいでしょう。

晩秋~初冬が旬の魚介一覧表

味覚の王者・ズワイガニ

毎年の解禁日を待ちわびるファンも多いのがズワイガニです。

身体の大きなオスは、山陰地方では松葉ガニ、福井県では越前ガニ、石川県では加能ガニなどと、同じ日本海側で水揚げされたものでも呼び名が変わります。

他にも津居山ガニ、柴山ガニ、間人(たいざ)ガニなどの呼び方もありますが、これらは水揚げされた漁港が付けている呼称。皇室への献上ガニとして知られる福井県の越前ガニが黄色のタグを付けたことをきっかけに、津居山は青、柴山はピンク、間人は緑というように、それぞれに基準を設けて色付きのタグを付け、ブランド化を図っています。

産地では、きれいな海水に真水を入れて塩分濃度を調え、大釜で茹でます。「塩分の加減でカニの味わいが変わるので、業者の腕の見せ所でもありますね」(坂本さん)。

解禁日は毎年11月6日。漁期は翌年3月20日まで続きます。

体が小さなメスも呼び方はさまざまで、親ガニ、セコガニ、コッペガニ、セイコガニ、香箱ガニなど、地域によって変わります。

メスは成熟すると脱皮をしなくなるため、甲羅は7~8㎝以上の大きさにはなりません。オスと同じく脚肉も美味ですが、むしろ外子と呼ばれる卵と内子と呼ばれる卵巣を楽しむ傾向があります。

乱獲を防ぎ、資源を保護するため、オスに先がけて1月10日に禁漁になります。

「ズワイガニのズワイ(楚)とは、細く長い小枝という意味の“スワエ”が訛ったもの。そんな脚を持つカニであることを表しています」(畑先生)。

「比較的安価なのはロシアからの輸入物ですが、やはり漁場と漁港が近いズワイガニの方が上物です。近年は福井の三国港揚がりが高値で取引されています。栄養豊富な九頭竜(くずりゅう)川の水が流れ込んだ海域で育つため、甘みが強いと言われています」(坂本さん)。

ズワイガニは火を入れ、甘みを増す

食べ方としては、生で、焼く、茹でる、蒸すなどで賞味します。
「私は生よりも火を通す方が断然カニの甘みが増すと思います。鍋は締めの雑炊が楽しみですね。焼きガニは、殻の色がうっすらと赤くなり、身が膨れ上がり、泡粒が立つようになれば食べ頃です。蒸しガニは中火強の蒸し器でじっくりと。旨みが残って美味しいですね」(畑先生)。

セコガニの脚をめん棒でローラー掛けして身を押し出し、内子、外子と一緒に甲羅に盛り付ける一品も料理屋でよく見かけます。「また、これをフライにする甲羅揚げも美味いです。トマト系のソースをつけるのも良い。天ぷらにして、大根おろしと天つゆで食べるのも美味しいですよ」(畑先生)。

香箱ガニの甲羅煮ズワイガニのメスを塩茹でし、白身魚のすり身を接着剤として、甲羅に胴身と内子、外子、足の身を敷き詰める。これを、おでんだしで煮る。「ガラを先におでんだしで煮出しておいてカニの旨みを深めるといいですね」と坂本さん。

「味の良い魚」という意味の、マナガツオ

マナガツオは温かい海を好む回遊魚で、本州中部以南から東シナ海、朝鮮半島近海に分布。水深100mまでの海域に群れで生息しています。6~8月頃になると産卵のために水深の浅い海域や湾内に入ってくるため漁獲量が上がりますが、身が肥えてくるのは晩秋から春にかけて。高値で取引されます。

近年は北海道近辺でも水揚げされるようですが、かつては「西国に鮭なく、東国にマナガツオなし」と言われたほど、関西で好まれてきた魚です。

関西で好まれる、味噌漬け

カツオとは似ても似つかない、菱形の平べったい魚体。にもかかわらずその名がついたのは、カツオのいない瀬戸内海などで名付けられた「真似鰹(まねがつお)」が訛ったとの説も。マナは真似ではなく、味の良い魚を意味する「真魚(まな)」だという説などもあります。

「マナガツオ科の魚のことを英語ではバターフィッシュなどと呼びます。言い得て妙ですね。サンマやイワシの脂とはまた違う。繊維が柔らかく、ホロホロッと崩れる身が美味しい魚です」(畑先生)。

関西での代表的な食べ方は味噌漬け。漬け込んでも身が硬くなりにくく、冷めても美味しいので、おせちにも向きます。

「低温でじっくり、皮目をパリっと焼き上げたマナガツオは最高です。味噌漬けの場合、特に焦げやすいので、気を付けるあまり中が生っぽい仕上がりになりがち。そうならないためには、切り分ける時に厚みが均等になるように注意が必要です」(畑先生)。

「味噌漬けに使う味噌は良い物をたっぷり使うことが重要。私は、少量の酒で伸ばし、マナガツオをガーゼに包んで漬けます。漬け終わった後の味噌床は、鶏肉などを漬け込んで再利用することもできますよ。また、鮮度の良いマナガツオは刺身にしても旨いのですが、産地でないと難しいかもしれません。小ぶりのマナガツオは唐揚げにしてポン酢で食べるのも良いですよ。天ぷらも向きます」(坂本さん)。

マナガツオの味噌漬け焼き粗味噌にマナガツオを1日漬けて焼き上げる。取材時は2キロ級で、「これだけ大きいと造りで食べても旨い」と坂本さん。泉州玉ネギの酢漬けと、焼きショウガを添えて。

全国からも注目される、大阪・淀川のハゼ

ハゼ類の代表格はマハゼ。河口域や汽水域に群れで泳いでいて、比較的大型になる種類です。環境適合能力が高いため、身近な魚として干物や佃煮などにも加工されてきましたが、河川や河口域の乱開発、環境汚染で激減。近年は高級魚になっています。

そんなハゼが、ここ数年、大阪の淀川でよく獲られるように。その白身は、口の肥えた通をして「鯛の造りよりも美味い」と言わしめるほどです。

➡「産地ルポ これからの和食材」では、淀川産ハゼの歴史や漁場の様子を公開しています。「淀川産のハゼ

王道は天ぷら

大阪や東京で古くからハゼ釣り船で食べられていたように、天ぷらが代表的。「油との相性が良い魚です。洗いすると、クセも取れて美味いんですよ」(畑先生)。

「店では手早く締めて大名おろしにし、カラッと揚げます。まずは塩で。その後、天つゆで、サクサクの衣とふわふわの身を楽しんでいただきます」(坂本さん)。

ハゼの天ぷら尾を残した松葉型に大名おろししたハゼの天ぷら。油の中で優しく泳がせるように何度か返して余分な衣を落とし、薄衣にして170℃で軽やかに揚げる。

関西でも親しまれてきた、コノシロ

出産時などに子どもの健康を祈って地中に埋める風習から「児(こ)の代(しろ)」と呼ばれるようになったとも伝わるコノシロ。一年を通して水揚げがありますが、漢字では「鮗」と書くことからも分かるように、晩秋から冬にかけてが美味しい魚です。

ニシン科のコノシロは出世魚。一般的に、4~5cmの幼魚をシンコ、7~10cmをコハダ、13cm前後をナカズミ、15cm以上をコノシロと呼んでいます。

小骨は骨切りや酢〆して

大阪湾でも多く水揚げされるコノシロ。大阪湾では北部沿岸域で卵を産みます。仔魚(しぎょ)、稚魚も大阪湾の沿岸域で生息。成長と共にやや沖合に生息域を広げますが、一生涯を大阪湾で暮らします。

「江戸前の魚のイメージですが、大阪でもコノシロはよく食べられてきました。最近は、小骨が多くて敬遠されることが多いようですが、旨みのある白身なので、鱧のように骨切りして食べて欲しいと思う魚です」(畑先生)。

「コノシロは酢が合う魚。酢で〆ることで骨も柔らかくなります。塩焼きも良いですよ」(坂本さん)。

➡ご紹介した料理のレシピは、「『味菜』の割烹料理 晩秋~初冬の魚介編」で配信。店主・坂本 晋さんの調理指南にご注目を!

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