うつわ×食ジャーナル

土がつなぐ人と料理。「清水志郎と12のお店」展

自然の土は何でもやきものになるわけではなく、砂や石が多く混じっていたり、高い温度では溶けてしまう土もあります。そのため多くの作家は、陶芸用の調整された土を使って作陶します。ところが近年、自ら掘った土でやきものをつくる陶芸家が増えています。そんな“土探求派”の一人が、京都の陶芸家・清水志郎さん。料理屋の敷地内で土を採取し、それを使ってつくったうつわにその店の料理を盛る──。そんなチャレンジングな展示会の模様をルポします。

撮影・文:沢田眉香子

作家が自ら土を掘って作陶する

やきものを鑑賞する時に「土味がいいね」という言葉がある。
特に釉薬をかけずに焼く「焼き締め」の雰囲気の良さを表現する言葉だが、初めて聞く人はギョッとするかもしれない。食べるわけでもないうつわをそんな風に「味わう」のは、和のうつわならではの感性だ。

例えば、ポツポツ浮かんだ「石はぜ」がワイルドな「信楽焼」、堅牢なテクスチャーの「備前焼」など、やきもののキャラは産地の土から生まれる。それを風土の魅力として味わう。「土味」は、文字通りテロワールだ。

今、料理の世界に、自ら産地に出向いたり、野菜作りを手掛けたりして、自然や風土を生かした料理を追求するシェフが増えている。実は、やきものの世界も同じく、「土を焼く」という原点に惹きつけられ自ら土を掘って表現する陶芸家が、少しずつ増えている。

2021年5月に、京都市左京区の妙満寺で開催された、その名も「大土友(だいつちとも)展」には、長野から沖縄まで全国から、自分の手で土を掘ってやきものをつくる35名もの“土探求派”の作家が集った。“10人10土”の手掘りの土によるうつわは、一つとして同じものがなく、その味わいも格別であった。

jpu0013a土を探求する作家が全国から集った、妙満寺での「大土友展」。

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