輪島塗なくしてお椀なし。能登半島地震で被災した工房を応援しよう
「令和6年能登半島地震」によって、輪島塗の工房は多大な被害を受けました。そんな中、支援の輪も広がっています。震災から2週間後、京都『Nunuka life』では漆作家・鎌田克慈(かつじ)さんの個展を敢行。大阪の漆器専門店『舎林(しゃりん)』では、輪島塗のチャリティーセール・個展が開催されます。購入して、使うことが支援になります。今すぐできる、被災地支援情報をお届けします。
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沢田眉香子さん
編集・著述業。雑誌「エルマガジン」編集長を経てフリーに。『世界に教えたい日本のごはんWASHOKU』(淡交社)でグルマン世界料理本大賞受賞。京都新聞美術展評、NHK関西ラジオワイド「アート情報」担当。
能登半島地震の被災地を支援したい
地震の報を耳にして、まっ先に工芸の工房が心配になった。最も震度の大きかった能登半島にとって、人命、ライフラインの復旧は火急の課題。コロナ禍に「美術も工芸も不要不急」といわれたことが頭をよぎったが、今回の地震は、日本の工芸にとってかけがえのない技である輪島塗の産地に壊滅的な被害を与えた。そのショックは大きい。
輪島塗の特徴
1977年に国の「重要無形文化財」に指定されている輪島塗は、分業による精度の高さが持ち味だ。ひとつの椀をつくるにも100近くの工程があり、それぞれを担う専門の職人が同じ産地で連携することで、精密で美しい輪島クオリティが保たれる。輪島は街全体が「工房」なのだ。
輪島塗の生産額は1991年の年間180億円をピークに年々減り続けていて、2018年は38億円。それでも、多くの作家がこの地で育っている。
震災から2週間後、個展を敢行した輪島の漆作家
輪島を制作拠点にしている鎌田克慈さんの乾漆を用いた繊細なうつわは、関西の名店を含む数多くの料理店で愛用されている。1月13日から京都のギャラリー『Nunuka life』で展覧会が予定されていた。
「地震の報を聞いた時、まず鎌田さんとご家族の安否を確認し、安心しました。心の中では、展覧会は中止か延期だろうとも考えていたのですが、鎌田さんのご希望で予定通りに開催。幸い品物は地震の前に梱包が終わっていて、300点以上の作品をご自身で搬入いただけました」とオーナーの高橋周也さん。
鎌田克慈さんのうつわ。
高橋さんと同じように個展の開催を心配していた人も多かったのだろう、予定通りに開幕した日から、多くのお客が来場。作品の多くは早期に売り切れた。うつわを手にした人には「購入を通して、作家さんや産地をサポートできるのではないか」という思いもあったに違いない。
鎌田さんは、主に乾漆(かんしつ)を用いて作品を一貫制作している作家で、木地師と分業する一般的な輪島塗の作家とはスタイルが異なる。それでも「輪島で20年以上制作してきて、知らないうちに輪島の作家になっていた。目に見えない産地の支えや繋がりに支えられていたことに気づいた」という。
布を重ねて形を作る乾漆という手法を用いた漆塗りのうつわ。軽やかな姿が特徴。
現状、鎌田さんの作品は在庫薄の状態だが、『Nunuka life』では、作品の受注を受け付けている。「納期ははっきりお約束できませんが、注文して待っていただけることが、作家さんのモチベーションになります」と高橋さん。
『Nunuka life』
【住所】京都市左京区浄土寺南田町10
【Instagram】https://www.instagram.com/nunuka_life/?hl=ja
【Facebook】https://www.facebook.com/nunuka.life/
大阪の漆器専門店『舎林』で、輪島塗のチャリティーセール・個展を開催
「震災以来、輪島の漆器は多くの注文をいただいています」と、大阪市阿倍野にある漆器専門店『舎林』の山田冨美子さん。
取り扱い作家25名のうち、11名が輪島の作家で、その全員が被災。「皆さんご無事ですが、全員の仕事場や家に被害がありました。震災から1カ月経って、避難所からようやく帰宅して在庫の確認を行なっている方もおられます。漆器の組合には廃業届も届いていると報道にあったのですが、お付き合いのある作家さん達は、前向きに復旧と、仕事の再開に向かっておられます」。
在庫をネット販売する、個人的に義援金を集めるなど、作家たちのアクションは様々だ。山田さんも、在庫の売上から支援を送っているが、他にできることとして「みなさん、SNSで近況を発信しておられます。メッセージなどをお送りすれば、励みにしていただけると思います」。
精緻な蒔絵の作家・箱瀬淳一さんのホームページより。工房の被害は甚大だ。
3月には蒔絵作家・箱瀬淳一さんの個展、5月に塗師(ぬし)・吉田宏之さんの個展が予定されていた。まだ工房の再開は見えないにも関わらず、「箱瀬さんからは『たくさん持っていけないかもしれないけれど、やってみる』とおっしゃっていただけました。吉田さんは、朝市通りにお店があったため大きな被害に遭われましたが、個展をやっていただけることになりました」。漆の仕事を続けるために、産地の作家さんたちは皆、今できることを粛々と行なっている。
「和食のお椀よ永遠なれ」の熱い気持ちで、ぜひこの機会に、産地とご縁を結んでほしい。
『舎林』
【住所】大阪市阿倍野区阿倍野筋2-4-41
【HP】https://u-syarin.blogspot.com/
【Instagram】https://www.instagram.com/urushi_syarin/
輪島を応援・支援する情報
●輪島の作家さんの作品を購入できる、『舎林』のオンラインショップ。
https://psp5.ocnk.net/
●箱瀬淳一さんホームページ。直接の義援金を受け付けている。
https://junichi-hakose.com/
●吉田宏之さんインスタグラム。工房再開に向けた作業を随時発信。
https://www.instagram.com/yoshida.wajimanuri/
●クラウドファンディング「令和6年能登半島地震|壊滅的な輪島塗業界を、立て直したい」。輪島塗の返礼品あり。サードゴールとして2024年2月末までに3000万円の目標を掲げている。
https://readyfor.jp/projects/tayashikki
●【能登半島地震】CAMPFIRE 輪島塗 復興応援プロジェクト
https://camp-fire.jp/projects/view/737187
●輪島漆器商工業組の募金受付
https://wajimanuri.or.jp/
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