素朴さとテロワール。民藝のうつわを「食材」として見れば “美味しい”
思想家・柳宗悦(むねよし)が1926(大正15)年に河井寛次郎・濱田庄司らと提唱した民衆的工藝=「民藝」という、新しい美のコンセプト。この言葉が生まれて約100年が経ちます。民藝のうつわといえば「用の美」「素朴」というイメージですが、風土や地域性がもたらす食の豊かさが注目される今、民藝のうつわに、気づかなかった「美味しさ」が見えてきます。
誕生から100年。手仕事ブーム、家庭料理で再評価される民藝
柳 宗悦たちが民藝運動を立ち上げたのが1926年。それから100年になろうとする今、関西でも民藝関連の展覧会が開催されている。「アサヒビール大山崎山荘美術館」の「黒田辰秋展」、「ZENBI」での「河井寛次郎とその系譜展」、そして7月には、「大阪中之島美術館」で「民藝 MINGEI―美は暮らしのなかにある」が開催される予定だ。
左/スリップウェア角皿 イギリス 18世紀後半~19世紀後半 日本民藝館蔵。右/(手前)塗分盆 江戸時代 18世紀。(盆上左から)染付羊歯(しだ)文湯呑、染付蝙蝠(こうもり)文湯呑、染付雨降文猪口 肥前有田 江戸時代 18~19世紀。いずれも日本民藝館蔵。
画像:Yuki Ogawa(大阪中之島美術館「民藝 MINGEI―美は暮らしのなかにある」にて展示)
民藝と聞くと「用の美」という言葉が浮かんで、日用品をイメージする人が多い。柳たちは、名も無い工人がつくった日常のための実用的な道具を「民藝(民衆的工芸)」と名付け、「美は生活の中にある」と説いた。当時の日本は工業化や西欧化の波の中にあり、急激に失われつつあった日用の道具の美しさを再評価し、残そうという民藝の主張には、強いメッセージ性があった。
そして現代、大量生産と使い捨てという消費サイクルへの反省と、持続可能な社会に憧れる「暮らし系」のブームで、民藝がリバイバルしている。「一汁一菜」を提唱する料理研究家の土井善晴さんが「家庭料理は民藝だ」と謳うように、「ハレとケ」のケの食、家庭料理と民藝とは、価値観が共通している。
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