料理人向けのうつわ受注会「TASTES OF KOGEI」レポート 前編
野菜や魚の産地や生産者のことは詳しくても、料理の大事な要素であるうつわとその作り手に縁が薄い料理人は多くいます。その両者の距離を縮めるため、京焼・清水焼の窯元の作り手と直接会ってうつわをカスタムオーダーできる受注会「TASTES OF KOGEI」が11/7〜 9日に開催されました。そのレポートを、2回に渡って配信します。
食のプロ同士による、インタラクティブなうつわイベント
「TASTES OF KOGEI」は、飲食・宿泊事業者が、うつわなどをカスタムオーダーできるサービスを展開するプロジェクトユニット名であり、イベントタイトル。今回開催されたのは、京焼・清水(きよみず)焼のプロ向けのうつわの受注会。祇園・宮川町の町家を改装したコワーキング・バー「SIGHTS KYOTO」にて8つの窯元がうつわを出品した。
会場は、すべてお座敷。
窯元はうつわを並べ、作り手が立ち合って、来場した料理人たちから直接、オーダーの相談を受け付けた。やきもの、京焼に興味があっても、「どこで買えばいいのかわからない」「窯元さんを直接訪問するのは躊躇する」という悩める料理人にとっては、オープンな雰囲気の中、複数の窯元の作品を見た上で相談できる機会はありがたい。
料理人から「こんなうつわが欲しい」という声が聞けるのは、作り手にとってもマーケティングのチャンス。プロ同士のインタラクティブなうつわイベントだ。
うつわの作り手と料理人の間にある、見えない壁を取り払う
展覧会や個展はあっても、作り手自らによる「業務用のオーダー」を主眼にしたイベントは、おそらく初めてのことだろう。
このイベントを企画したのは、アートや工芸イベントに携わった経験のある淺井忠博さん。京焼・清水焼に可能性を見出し、料理人たちと窯元の間をつなぐ仕掛けを考えた。
なにぶん前例のないことゆえ、広報も手探りだった。飲食店や宿泊施設のSNS などに直接アプローチするなどの周知を行ったところ、リアクションは予想以上。プロ向けに特化した半ばクローズドなイベントながら、多くの来場者を迎え、みな真剣に品定めをしていた。
「来場者の中で、オーダーに進んだのは1割強でしたが、複数の窯元にオーダーをした人もいました。飲食店の和洋の割合は、洋食が若干多くて、4:6くらいです」。
洋食のシェフの中には、和食器を使って料理のブラッシュアップをはかる人が増えている。しかし、実際に取り入れるまでにはいくつかのハードルがある。
和食と洋食ではうつわの使われ方が違う。「カトラリーは使えるか」「チップしやすくないか」といった質問がシェフから出たそうだ。現場に即したうつわ作りの工夫も求められる。
コストも然り。手をかければそれだけ値段も高くなるが、導入しやすさのために、いかにコストダウンするのか。作る側、使う側で、折り合えるポイントを探るディスカッションも必要だ。
さらに浅井さんは、そこに「伝え手」の役割も必要と考える。
「京焼・清水焼は価格が高いとは言われますが、求める人に届きさえすれば、そこには食とうつわのいいコラボレーションが生まれるはず。作り手とうつわにまつわるストーリーなども伝えることで、その価値に理解が進むのではないか」。
「今回は、京都のやきものが中心のオーダーメイド会だったが、今後はガラスやカトラリーの作り手にも参加してもらって、ワンステップで工芸のテーブルウエアに出合える場を作りたい」と、浅井さん。今後の「TASTES OF KOGEI」の動きにも注目だ。
受注会と並行して、京都を代表する和食店・レストランと京焼・清水焼の窯元とのコラボレーションも進行している。後編では『祇園 さゝ木』佐々木 浩さんが『蘇嶐窯(そりゅうがま)』にオーダーしたうつわの制作過程をレポートする。
最後に、今回の「TASTES OF KOGEI」に参加した窯元を紹介する。この合同受注会に参加できなかった人にも、窯元とのコラボレーションの門戸は開かれている。参加窯元はオーダーに前向きなので、ぜひ個別でコンタクトをとっていただきたい。
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