大阪の“漆専門”ギャラリー『舎林』に聞く、漆のうつわトレンド
懐石料理で重視される料理「椀もの」。料理名にもなるように、漆の椀は和食で最も大切なうつわの一つです。海外では漆を「ジャパン」とも呼び、漆黒の艶やかさは日本の美の象徴でもあるのです。しかし、今、黒や朱だけでない、椀だけでもない、漆のうつわの世界が進化中です。大阪の専門ギャラリー『舎林(しゃりん)』店主・山田冨美子さんに窺った内容をもとに、解説します。
※料理人向けのうつわ受注会「TASTES OF KOGEI」レポート 後編は、次回お届けします。
関西には珍しい、漆器の専門ギャラリー
大阪「あべのハルカス」の足元、賑やかな阿倍野のアーケードにある『舎林』。店主の山田冨美子さんは約20年前、漆に特化したこの店をオープン。全国の作家ものの漆器を集めた、日本でも珍しいうつわギャラリーだ。扱う作家は約30名、定期的に個展も開催している。
左/『舎林』の店内。石川・輪島を拠点にする人気の作家・赤木明登さんの作品も豊富に常設展示している。右/椀は最もバリエーションが多い漆器だが、最近増えているのが和洋を問わず使える、高台のない大ぶりのもの。麺にも丼にも使える。漆器=ハレのうつわというイメージは変わりつつある。
漆器は、木地・塗り・加飾で見分ける
店内に並んでいるのは、大半が漆黒と朱漆(しゅうるし)のうつわ。見慣れていない人には、色以外の違いが分かりづらいかもしれない。そこで、始めにざっくりと漆器の種類を知っておいていただきたい。
まずは、漆の下の木地について。多くの木地は轆轤(ろくろ)で挽いた「挽きもの」だ。これに対してノミなどで板から刳(く)り出した「刳りもの」は、厚手で素朴な風合いがある。時間がかかるので、少々お値段は高めの傾向。また、重箱や弁当箱などに使われる木材を組み合わせて作った「指しもの」「曲げもの」、木ではなく紙や布地に漆を塗って貼り重ねて形を作る「乾漆(かんしつ)」という技法もある。安価なものは木地でなくプラスチックなどが使われている場合もあるので、本物の木地の漆器を手に入れるには、信頼できるお店から買うことが大切だ。
次に漆の塗り方の違い。木地に生漆(きうるし)と呼ばれる透けた漆を刷り込み、美しい艶と木目が透けて見えるように仕上げる「拭き漆(擦り漆)」、朱またはベンガラで漆塗りして乾燥させた後、透漆 (すきうるし) で上塗りした「溜め塗り」がある。こちらは下の層の色が透けて見える。
木目がきれいな拭き漆の器。使い込むほどに、艶が出てくる。
加飾には金などの金属粉を漆で描いた文様の上に“蒔く”蒔絵、貝などをはめ込む螺鈿(らでん)がおなじみだ。
伝統的には木地と塗りの工程は分業で行われてきたが、近年の若手作家は、木地から塗りまで一貫して手がけることも増えている。
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