京都『獨歩』2月の献立の立て方【後編】料理内容
「“2月だから”という考えはなく、“今感じていること”を常に軸にしています」。京都・北大路『獨歩(どっぽ)』店主・宮澤政人さんが心の赴くままに編んだ2月の献立は、真冬の時季に相応しい楚々とした装い。だしポン酢を意外な工程で用いた松葉ガニの椀物や、どぶ酢の乳酸感を生かしたすぐき白和えでいただく伊勢海老の天ぷらなど、積年の経験と知識あっての直感力に誘(いざな)われた“出合い”の連続です。
宮澤政人さん:1975年神奈川県生まれ。実家が寿司店を営んでいたことから、高校卒業後に地元の寿司割烹で料理修業を開始。茶懐石で有名な『柿傳』ほか『高台寺 和久傳』など京都の名店で腕を磨き、2007年に京都『じき 宮ざわ』にて独立開業。茶懐石の美学を感じる質実とした料理や器使いで定評を得る。2014年に『ごだん 宮ざわ』を、2023年に『獨歩』を開き、現在は京都市内3軒の日本料理店の主を務めている。
古典の復興と創造
「日本料理における“献立”とは、単なる料理の羅列ではありません。季節の移ろい、館や器の風情、そして作り手と食べ手の感性。それらすべてが交差することで、ようやく完成するものだと思っています」と宮澤さん。献立作りに関してしきりに「考えない」と口にするのは、ひとえに作り手と食べ手のどちらの思考も狭めたくないからだ。
ただ、本当の無からは何も生み出せない。「強いて言えば、“古典の復興と創造”という願いは込めています」と吐露する宮澤さん。
宮澤さんが深い学びと敬意を抱く古典とは、飛躍的に成長を遂げた昭和初期の日本芸術。当時発刊された希少な陶芸専門書「陶説」や北大路魯山人らの芸術家が寄稿・編纂していた月刊誌「星岡」や「獨歩(どっぽ)」を読み込み、荒川豊蔵や北大路魯山人といった先人たちの精神性を汲み取る作業は、宮澤さんにとって日常的なプロセス。「先人たちがその料理や器に込めた“想い”や“美意識”を現代の感性で捉え直し、自身の料理に“重ねて映す”。そのあたりが軸になっているかもしれません」。
白菜の塩漬けを半年間発酵させたり、その白菜の発酵液でフキノトウを漬け込んでみたり。茎レタスを味噌漬けにしてみるなど、発酵の要素を随所に取り入れているのは、古き佳き昭和の手仕事の復興とも言える。
「陶説」「星岡」「獨歩」などの古書は熱狂的なファンも多い希少品。「昭和初期を生き抜いた人々の言葉には深い学びがあります」。折に触れ、何度なく読み返しているそう。
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