【レシピ付き】子を持つ2~3月のワタリガニを醤油漬と甲羅焼で
だんじり祭りは“カニ祭り”とも称され、ワタリガニは大阪の秋の味覚とされています。ところが、「メスは子を持つ2~3月が一番旨い」と上野修三さん。産卵を前にして、身も内子も持ち味が充実するこの時季ならではの食べ方を、今回は指南いただきます。生のとろけるような食感と甘みを楽しませる醤油漬。ほぐし身と野菜の卵とじを詰めた甲羅焼は、昭和の時代に大阪を席巻したヒット作のアレンジ版。どちらもワタリガニの繊細な味わいを淡口醤油が引き立てます。
上野修三(うえのしゅうぞう):昭和10年、大阪・河内長野に生まれる。ミナミでの修業時代を経て、1965年、『㐂川(きがわ)』を創業。なにわの伝統野菜を発掘するなど、大阪らしい料理を追求し、浪速割烹のカタチをつくる。60歳で開店した『天神坂上野』は伝説の割烹として名を馳せた。2024年11月に「上野修三の仕事 うすくち醤油で仕立てる浪速割烹204品」(クリエテ関西)を上梓するなど、御年90歳ながら、なにわの食文化を綴る随筆家として活躍中。
大阪好みのワタリガニは、2~3月の子持ちを淡口仕立てで
海中を泳いで渡るから、ワタリガニ。他のカニと比べて足が1本多く、その水かきをオールのように使って泳ぐそうですな。標準和名はガザミやけど、大阪では甲羅の形から“菱ガニ”と呼んで、昔から泉州の秋祭りには欠かせまへん。

けどネ、メスが子を持つのは晩秋から春先。私ゃ、この時季こそ旬やと思てますねん。晩秋からはズワイガニの季節やけど、大阪の料理屋が好むのは菱ガニの方。ほのかな甘みがあって、淡泊で上品やから、調理のやり甲斐があるんですな。この繊細な味を生かすのは、淡口醤油をおいて他になし。そこで今回は、私の定番の2品をご紹介しまひょ!

菱ガニ淡口醤油漬——身と内子を生のまま「づけ」にした珍味
一品目は、菱ガニを丸ごと醤油漬けにし、生の旨みをご堪能いただく私のとっておきのレシピだす。 甲羅を外してフンドシを取ったら、「カニは食うてもガニ食うな」と言われるエラをはがしてネ。爪と足を1本ずつ切り落とし、胴身を縦横に4等分。
一番旨いのは、水かきの身(画像左下)ですねん。付け根に庖丁を軽く入れて、そーっと引っ張り出すと、ほれ、たっぷりの身が付いてきまっしゃろ。コレ、洗いにしても旨いんでっせ。足や爪には切り込みを入れておくと、食べる時に身が取り出しやすいですな。そこまで用意したら、一度、泡盛で洗って殺菌しておくれやす。

醤油ダレのベースは、ヒガシマル醤油さんの「超特選丸大豆うすくち 吟旬芳醇」。その名の通り芳醇さが魅力やから、加熱しない調味にはもってこいや。昆布だしにみりん、香味野菜などを入れ、みりんのアルコール分を飛ばしてから加えておくれやす。一緒に加熱したらあきまへんで! 必ず“生合わせ”でお願いしまっせ。あとは、菱ガニの身と内子を別々に3日ほど漬けて完成だす。
淡口醤油ベースのタレに3日漬けた状態。身と内子は分けて漬けると持ち味が生かされてよい。
そのまんまやったら食べにくいって? 切り口を上にして、すりこ木で端から押してみなはれ。足の身も同様にして、身だけを取り出して盛り付けたらよろし。水かきの身はそのまま齧(かぶ)り付いた方が食べやすいですな。
これを甲羅に盛ったら、どないだす? ぐっと見栄えしますやろ。ここで、ひと工夫。甲羅をきれいに掃除して一晩酢に漬けたら、あら、びっくり。ふにゃふにゃになりまっさかい、これをペコッと凹ませて、ちょうどええように固定して蒸し上げておくれやす。大阪らしい遊び心ある器になりまっせ。
菱ガニ淡口醤油漬のレシピ
【材料(作りやすい量)】
ワタリガニ……2ハイ(約1.1㎏)
●醤油ダレ
│淡口醤油(ヒガシマル「超特選丸大豆うすくち 吟旬芳醇」)……700ml
│水……600ml
│昆布……1枚
│みりん……500ml
│白ネギ(青い部分の斜め切り)・ショウガ(薄切り)……各25g
│ブラックペッパー・タカノツメ……各適量
泡盛・酢・大根・白髪ネギ・花丸キュウリ昆布押し※・浜防風……各適量
※花丸キュウリ昆布押し
花丸キュウリを塩ずりし、さっと熱湯に潜らせて冷水に取り、色出しをする。昆布たて塩に5時間以上浸けてから蛇腹(じゃばら)切りにする。
【作り方】
<醤油ダレを作る>
- ①
- 水に昆布を一晩浸けておく。
- ②
- ①にみりん・白ネギ・ショウガ・ブラックペッパーを合わせて火にかけ、みりんのアルコールを煮切る。
- ③
- ②が冷めたら淡口醤油とタカノツメを加える。

<ワタリガニを醤油ダレに漬ける>
- ④
- ワタリガニをよく水洗いし、甲羅を外して、フンドシやガニ(エラ)を取り除く。内子をスプーンでかき出し、爪を切り落とし、縦半分に割る。水かきの根元に庖丁を入れ、引き出す。足を1本ずつ切り落とし、切り込みを入れておく。胴の部分は縦横4等分に切る。
- ⑤
- 殺菌のため、④を泡盛で洗う。
- ⑥
- ⑤の内子と身を別々に3日ほど③に漬ける。
<仕上げる>
- ⑦
- ④のワタリガニの甲羅を一晩酢に漬ける。ベコッと凹ませて両サイドを大根などで固定し、強火で30分蒸す。冷蔵庫で冷やしておく。

- ⑧
- ⑥の身を醤油ダレから引き上げる。足や銅の身の切り口を上に向け、すりこ木で身を押し出す。

- ⑨
- ⑦に⑧と⑥の内子を盛り、白髪ネギ、花丸キュウリの昆布押しを添える。皿にのせ、浜防風をあしらう。

菱ガニ甲羅焼——淡口風味の“かに玉”を甲羅に詰めて焼き上げる
あれは昭和の終わり頃やったかな。ミナミの寿司屋『八三郎』はんが考案した、ワタリガニの甲羅揚が大ヒットしましてネ。ほぐした身と銀杏、ゆり根を溶き卵で半熟にまとめて甲羅に詰め、パン粉を付けて揚げますねん。大胆な発想でっしゃろ。
ちょうど私ゃ、法善寺横丁で『浪速割烹 㐂川』を商っていた頃でネ。ええもんは何でも取り入れる大阪らしい進取の気質で、そのアイデアをちょいと拝借しましてん。ワタリガニをアワビに、卵をベシャメルソースに変えて、「和風コロッケ」として売り出したところ、大いに受けてねぇ。うちの名物になりましたな。
コレ、菱ガニでやっても旨いんやけどネ。“かに玉”の相性を考えたら、卵とじがやっぱり落ち着くんだすな。そこで淡口醤油の力を借りて、『八三郎』はんの一品をもう一度、私流にアレンジしたのが今回の甲羅焼だす。

菱ガニは蒸して、内子も身もほぐしておく。ガラを焼いてだしを取るひと手間が大事でっせ。そのだしで白ネギと椎茸をさっと煮たら、淡口醤油で味を決めてネ。ほぐし身を加え、溶き卵を入れて半煉りに。ゆり根を合わせて、甲羅に詰めますねん。
卵黄入りのマヨネーズを塗ってチーズをかけ、焼き上げたら完成だす。若い頃のアレンジは洋風に寄りすぎてたから、ちょいと和に戻すって寸法やけど…。え? 西洋のもんを使てるやないかって? へへへ、バレたか(笑)。けどネ、淡口醤油はマヨネーズやチーズとよぉ合いますねん。ま、大目に見ておくれやす。
菱ガニ甲羅焼のレシピ
【材料(1人分)】
ワタリガニ……1ハイ(450g)
昆布だし……500ml
酒……70ml
ゆり根……15g
白ネギ……20g
椎茸……1個(25g)
●煮汁
│ワタリガニのガラだし……150ml
│砂糖・塩……各少々
│淡口醤油……10ml
卵……2個
卵黄ネーズ※……大さじ1
パルメザンチーズ・卵白・塩・パセリ……各適量
※卵黄ネーズ
マヨネーズと卵黄を2:1で混ぜ合わせたもの。
【作り方】
<ワタリガニを蒸し、ガラでだしを取る>
- ①
- ワタリガニをよく水洗いし、甲羅をはがし、フンドシを取る。胴身を縦に割り、ガニ(エラ)を取り除く。足や爪、水かきを1本ずつ切り落とし、身を取り出しやすいよう切り込みを入れる。胴身はさらに半分に切る。甲羅はきれいに掃除し、水気を拭き取っておく。
- ②
- 中強火で①を30分ほど蒸し、身をせせりだす。
- ③
- ②のガラにサラマンダーで焼き色を付ける。
- ④
- 昆布だしと酒で③を10分ほど煮出し、漉してガラだしとする。

<甲羅焼にする>
- ⑤
- ゆり根は小羽を選んで蒸す。
- ⑥
- 白ネギは笹打ち、椎茸は薄切りにする。
- ⑦
- ④のガラだし150mlを鍋に入れ、⑥をさっと煮る。砂糖・塩・淡口醤油で味を付ける。
- ⑧
- ②のほぐし身と溶き卵を入れ、半煉りにし、⑤を加える。

- ⑨
- ①の甲羅に⑧を詰める。卵黄ネーズを塗り、パルメザンチーズをかける。

- ⑩
- サラマンダーで⑨に焼き色が付くまで焼く。
- ⑪
- 器に卵白を混ぜ合わせた塩を盛り、その上に⑩をのせ、パセリを添える。

超特選丸大豆うすくち吟旬芳醇(左)
国産原料を100%使用。丸大豆しょうゆと米糀の二段熟成で、まろやかな味わいに。400ml。
特選丸大豆うすくちしょうゆ(右)
国産原料を100%使用。淡く上品な色合いと、おだやかな香りで素材を生かします。500ml。
■問合せ:ヒガシマル醤油㈱ お客様相談室 ☏0791-63-4635(受付時間9:00~17:00、土・日曜・祝日・年末年始・夏期休暇を除く) www.higashimaru.co.jp
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