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文化庁主催のイベント、「日本の食文化とわざの継承EXPO」in京都「大和学園」

日本の食文化は、どのように次の世代へ受け継がれていくのか。技術や知識だけでなく、その背景にある姿勢や思想も含めて伝えていくことが、今、改めて問われています。文化庁が主催し、2月1日に京都・太秦の「大和(たいわ)学園」で開催された「日本の食文化とわざの継承EXPO」は、「初めてでも楽しめる、日本の食文化体験」の場として開かれました。会場には、和食、京料理、伝統的酒造り、生菓子、手揉み製茶などの担い手や学生、そして約600人の来場者が集い、共に「継承」の現在地とこれからを考えるイベントとなりました。

文:WA・TO・BI編集部 / 撮影:「日本の食文化とわざの継承EXPO」

目次


“わざ”の継承を、多角的に伝えるイベント

京都「大和学園」校舎

文化庁では、地域に根差した食文化や伝統産業を次の世代へと繋いでいくための取り組みを進めている。その背景には、後継者不足や社会環境の変化などにより、多くの分野で「継承」そのものが揺らぎつつある現状がある。

しかし一方で、各地に息づく文化資源や伝統技術は、現代の感性や新たな発想と交わることで、これまでになかった価値を生み出す可能性を秘めている。今回のEXPOは、そうした可能性を未来へと繋げていくために企画されたものだ。


和食・京料理・酒・菓子・茶──多様な“わざ”が一堂に会した会場

会場では、和食、京料理、伝統的酒造り、菓銘をもつ生菓子(煉切・こなし)、手揉み製茶といった分野の“わざ”に焦点を当て、担い手から直接学び、体験できるプログラムが展開された。それぞれ「ステージコンテンツ」「体験コンテンツ」「ワークショップ」「職人パフォーマンス」「展示」「お食事・物販ブース」など、来場者は職人の手仕事を「見て知る」だけでなく、「学び、体験し、考える」という循環の中で、日本の食文化が持つ奥深さや、次世代へ継ぐ意義を感じ取れる導線が設計されていた。

思想と未来を言葉でつなぐ、ステージコンテンツ

ステージでは、第一線で活躍する職人や有識者が登壇し、それぞれの分野に受け継がれてきた“わざ”の本質と、これからの在り方について語り合った。この日限りの特別シンポジウムとして展開されたのは、「トップ職人が集う 日本の食文化を支える長(おさ)トーク」をはじめ、「生産者と茶の匠が語る『日本の製茶の“わざ”』」「伝統的酒造りとは何か」「日本の四季をかたちにする生菓子の“わざ”」「伝統の先に、未来がある-次世代が語る日本の“わざ”-」など。

「トップ職人が集う 日本の食文化を支える長(おさ)トーク」の模様「トップ職人が集う 日本の食文化を支える長(おさ)トーク」の様子。左より、モデレーターを務めた『京料理 鳥米』六代目当主・田中良典さん、伏見酒造組合 理事長・北川幸宏さん、『たん熊 北店』三代目主人・栗栖正博さん、『御菓子司 塩芳軒』主人・髙家啓太さん、京都府茶業会議所 副会頭・𠮷田利一さん。

写真の「トップ職人が集う 日本の食文化を支える長(おさ)トーク」では、次代を担う人たちに大切にして欲しいことなどが語られた。 『たん熊 北店』の栗栖正博さんは、「厨房で調理するだけ、料理を客室に運ぶだけなど、ただ店の中で働いているだけでは分からないことがたくさんあります。行事ごとやお祝いごとなど、京都ならではの文化を体感しないと。また、他店に積極的に食事に行き、自分の現在地を見直すことも大事です」と語り、『塩芳軒』の髙家啓太さんも「足を運んで、空気感を感じることは重要。技のアウトプットは、インプットをどれだけするかで決まると思います」と続けた。

五感で触れる、“わざ”の体験と展示

体験・展示コンテンツでは、日本の食文化の奥深さと楽しさを五感で体感できるプログラムが並んだ。「銘酒と京料理の日本酒ペアリング体験」や「だしの“わざ”体験」、「茶の飲み比べ体験」など、味覚を通して理解を深める企画に加え、「盛り付けの“わざ”体験」「京菓子・生菓子の“わざ”体験」など、職人の視点に触れられる機会も充実していた。

「日本酒ペアリング体験」では、京都・伏見の『北川本家』『松本酒造』『山本本家』の3酒蔵の銘酒と、京都の料亭『乙文』の八寸が提供された。皿の手前に盛られた菜の花や梅麩など、あっさりした味わいのものにはあっさりした味わいの酒を、奥の鰆幽庵焼きなど濃いめの味付けのものにはどっしりした酒を合わせるとよい、などのナビゲートで来場者を楽しませた。

八寸と日本酒のペアリング料理は鰆幽庵焼き、車海老、獅子唐辛子、鴨ロース、梅麩、菜の花、助子の煮つけ、茗荷。日本酒は、右より『北川本家』の「富翁 丹州山田錦 しぼりたて生原酒」、『松本酒造』の「NEW KYOTO.JP 白緑」、『山本本家』の「神聖 超辛口 特別純米原酒」。セットで1,000円。

「盛り付けの“わざ”体験」では、京都『美濃吉(みのきち)』より、佐竹洋治さんが登場。「お弁当は蓋を開けた時の香りで印象がガラリと変わる」「右利きの人に対しては、右側に明るい色の料理を盛り付けると美味しそうに見える」「高いポイントを作る」など、お弁当を盛り付ける際のコツを伝授した。来場者もそのコツに留意しながら一人一重を盛り付け、試食できるという贅沢なプログラム。会の最後には「炊き物の水分を出さないようにするには?」「味噌幽庵を焦がさずに焼くにはどうすればいい?」といった質問に佐竹さんが答え、終始会場は和やかなムードだった。

『美濃吉』の佐竹洋治さんとお弁当左/『美濃吉』の佐竹洋治さん。撮影:WA・TO・BI編集部

また、「和食・京料理の味の奥行きを知る だしの“わざ”体験」では、『魚三楼』より荒木裕一朗さん、『八尾治』より上田壱盛さん、『たん熊 北店』より栗栖熊一さんがそれぞれの店のだしの取り方を披露し、試飲。

『たん熊 北店』の栗栖熊一さんと会場の様子左/『たん熊 北店』の栗栖熊一さんはスッポンだしを提供。他、『魚三楼』の荒木裕一朗さんは昆布だしとカツオ昆布だし、『八尾治』の上田壱盛さんはどんこ椎茸と昆布の精進だしを提供した。

レシピを公開すると共に、昆布が取れなくなってきているという現状や、使う水の硬度によってだしの味わいが変わることなどが語られた。また、普段あまり触れる機会の少ないどんこ椎茸の精進だしやスッポンだしなど、さまざまな種類のだしに触れ、改めてその奥深さを感じる会となった。

食べて、持ち帰ることで記憶に残る食事や物販

お食事・物販ブースには、京都を代表する料亭や名店によるお弁当や、『福島鰹』や『半兵衛麩』、『村上造酢』といった京都の店の商品が並び、来場者は“わざ”が詰まった味わいをその場で、あるいは持ち帰って楽しむことができた。

「日本の食文化とわざの継承EXPO」の様子

会場を通して強く感じられたのは、日本の食文化が「完成された過去」ではなく、今もなお人の手によって更新され続けているということ。そして、料理人や匠たちの“わざ”は、専門家のものに留まらず、触れる人それぞれに新たな発見や関心を呼び起こす力を持っていること。本EXPOは、「知る」だけで終わらせず、「関わる」ことへと視点を進める場を提示し、日本の食文化を未来へとつないでいくための確かな入口となっていた。


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