みりんの特性vol.4みりん煮の可能性
「塩鮭の塩気を和らげるため、みりんに浸けて蒸し煮にしたことがあります」。京都・洛北の料亭『山ばな 平八茶屋』園部晋吾さん考案のみりん煮に、農学博士の川崎寛也先生は興味津々。今回は、水、生みりん、煮切りみりんで比較実験し、みりん煮の可能性を追求します。食材に選んだのは、塩鮭とつくね芋。みりんの調理効果は、動物性と植物性の食材で変わり、さらに生と煮切りでも違います。最後に、2つのみりん煮を組み合わせた園部さん流の土鍋ご飯もご紹介します。
※今回使用するみりんは「本みりん」。「みりん風調味料」「みりんタイプ発酵調味料」ではありません。
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園部晋吾さん(京都・洛北『山ばな 平八茶屋』二十一代目)
昭和45年生まれ。日本大学経済学部を卒業後、大阪の料亭『花外楼』で3年修業。天正年間(安土桃山時代)創業の老舗『山ばな 平八茶屋』二十一代目に。2007年 京都府青年優秀技能者奨励賞(明日の名工)を受賞。「京都料理芽生(めばえ)会」第20代会長、NPO法人「日本料理アカデミー」副理事長などを歴任する。誠実で実直なお人柄。
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川崎寛也さん(農学博士)
1975年、兵庫県生まれ。京都大学大学院農学研究科にて伏木 亨教授に師事し、「おいしさの科学」を研究。「味の素㈱」食品研究所エグゼクティブスペシャリストであり、「日本料理アカデミー」理事。「関西食文化研究会」での基調講演でも活躍している。専門は、調理科学、食品科学など。近著に「おいしさをデザインする」「味・香り『こつ』の科学」(柴田書店)。
みりん煮のメリットは?
- 園部晋吾(以下:園部)
- 以前、京都の日本料理人の勉強会で、みりんをテーマに料理を作ったことがあります。塩鮭と海老芋をみりん煮にし、海老芋の方は炊き込みご飯にして、塩鮭のほぐし身と合わせました。
- 川崎寛也(以下:川崎)
- みりん煮という調理法があるのですか? 僕は初めて聞いたのですが…。
- 園部:
- いや、ないですよ(笑)。この時、初めて作りました。塩鮭をみりんの地に30分浸け、70℃で5分蒸し煮にしたのですが、塩味がほどよく抜けて、しっとり煮上がったんですよ。もしかしたら塩蔵ものの塩分を和らげるのに、みりん煮は有効かもしれません。
- 川崎:
- なるほど、新しい視点ですね。
海老芋の方は、みりんで煮てから米と炊いたのですね。煮くずれしなかったですか?
- 園部:
- みりんの地に浸けたまま100℃で25分蒸し煮にしたのですが、輪郭がしっかり保たれていました。小角に切って米と炊き上げたら、ほどよい食感になって、海老芋の持ち味も生かされていたように記憶しています。
- 川崎:
- 面白いですね。今回は、この料理を題材に比較実験してみませんか? 動物性と植物性の食材では、みりんの調理効果も変わるので。例えば、みりんと共に芋類を加熱するとでんぷんの流出を抑制すると言われています。
- 園部:
- 時期的なことを考えると、海老芋より、つくね芋の方がいいですね。うちは「麦飯とろろ汁」が名物で、つくね芋は常にありますから。
- 川崎:
- では、まず塩鮭の実験から始めましょう。水、生みりん、煮切りみりんで比較した方がいいと思います。煮切りみりんはアルコールが飛んでいるので、生みりんにあるアルコールの効果を知ることもできますから。
【実験1】塩鮭のみりん煮の効果を検証
塩鮭は中辛(塩分相当量3.3%)を使用。左から①水煮、②生みりん煮、③煮切りみりん煮。20:1の割合で薄口醤油を少し加えた浸け地に塩鮭をそれぞれ30分浸け、その地ごと70℃のスチームコンベクションオーブンで5分加熱した。
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