7Chefsの近未来和食

【レシピ付き】8月9日放送 動物性だしを使わない! 夏味満載の近未来・麺料理

関西のトップシェフ7人が、食品ロスや野菜の摂取量の減少など食の課題解決に挑む、料理エンターテインメント番組「7Chefs」。本連載では、番組内でシェフ達がジャンルを超えて提案する「近未来和食」をご紹介! 第1回目は、いきなり“ラスボス”『菊乃井』村田吉弘さんが登場。“動物性のだしに頼らない”夏の冷たい麺を創作します。透明なだしの主役は、スイカ・トマト・キュウリ。助手を務めた『衹園さゝ木』佐々木 浩さんも驚いた、クリアな水色にするための秘法とは?


MBS 料理エンターテインメント番組「7Chefs」毎月第3水曜 深夜2:30~放送。


味の黄金比を世界へ“ラスボス村田”『菊乃井』村田吉弘氏。和食の新道を切り拓く“ダシザムライ佐々木”『衹園さゝ木』佐々木 浩氏。香辛料という魔法を操る“スパイスマジシャン吉川”『レオーネ』吉川健太郎氏。右脳と左脳で中華料理の枠を破る“チャイニーズフードハッカー東”『AUBE』東 浩司氏。炎と肉の求道者“ミートプロフェッサー岡”『祇園肉料理おか』岡 義隆氏。京フレンチの新風を巻き起こす“ナイト・オブ・モダンフレンチ前田”『レストランMOTOÏ』前田 元氏。そこにもう1人(未発表)を加えた7人のシェフが、さまざまな食の課題解決に挑む、料理エンターテインメント番組。

文:中本由美子 / 撮影:東谷幸一

目次


「近未来和食」第1回目のテーマは冷たい麺料理

『菊乃井』村田吉弘さん

7月某日、京都・東山『菊乃井』のテストキッチンに、“ラスボス”村田吉弘さんのハリのある声が響く。「今日は、エライかさ高い後輩がアシスタントに来てくれはるねん」。

「どうも~」と登場したのは、なんと“ダシザムライ”こと、『衹園さゝ木』佐々木 浩さん。京料理を牽引する豪華タッグによる「近未来和食」第1回目の収録は、にぎやかなムードの中、始まった。

この日のテーマは、冷たい麺料理。村田さん曰く「麺はグルテンフリーのケンミンのビーフン。だしは、カツオ節や鶏などの動物性食材を使わずに、野菜と昆布だけで引く。できるだけ廃棄を出さへん工夫もした、夏の麺料理です」。

主役は、小玉スイカ。アシスタントの佐々木さんが中身をくり抜き始めると、「その皮のとこ、釜にして器にするから、キレイにやってや」と村田さん。これが、廃棄を出さない工夫その1。種も素揚げしてトッピングに使うとか。

『菊乃井』村田吉弘さんと『衹園さゝ木』佐々木 浩さん

夏の果菜でだしを引く!?

「この麺料理のキモは、だし」。
村田さんがだしを引くのに使うのは、スイカ・トマト・キュウリ。夏の代表的な果菜だ。

例えばトマトなら、皮ごとミキサーにかけて鍋へ。離水を促すため0.8%の塩を加えて火を通し、漉すとクリアな“トマトだし”が引ける。
「半日とか、時間をかけてペーパータオルで漉したら、フレッシュなトマトでもクリアな果汁が取れるけど、こうすると早いですねぇ」と、佐々木さんは感心しきり。

とはいえ、これは序章にすぎず、ここからが“村田マジック”本領発揮だ。
キュウリをミキサーにかけ、さらしで搾った“青汁”を、昆布と共に火にかけると…。数分後、緑の色素だけが浮いてきた!

「コレ、どういうことですの?」と、佐々木さんが目を瞠(みは)る。
「昆布は加熱すると粘りが出てくるやろ。その粘り成分が色素を凝集させるねん」。
鍋の液体をキッチンペーパーで濾すと、クリアな“キュウリだし”が! 湯気と共に広がるのは、青々しい瓜の香りだ。

キュウリだし

五味があれば、動物性のうま味いらず

スイカだし・キュウリだし・トマトだし

スイカもキュウリ同様にだしを引き、3種の果菜だしが出来上がった。
「トマトはグルタミン酸が豊富やけど、スイカとキュウリはほとんどが水分やから、昆布でうま味を足したワケやね」。

主となるのは、甘みたっぷりのスイカだし。ここに、うま味豊富なトマトだし、瓜の香りを補うためのキュウリだしを合わせる。「瓜二つ、やな」と村田さん。

レモン果汁と薄口醤油、塩で味を付けて、麺だしの完成。村田さん曰く「甘み、塩味、酸味、キュウリのほのかな苦みと、グルタミン酸のうま味。五味が揃うことで、動物性食材がなくても満足度はあるはずや」。

小玉スイカの釜に、グルテンフリーのビーフンを盛り、麺だしを注ぎ入れ、夏らしい具材を添えて出来上がり。「ゴマやなしに、香ばしく揚げたスイカの種を散らすというアイデアにも感服ですわ!」と、佐々木さんが締めくくった。

「ラスボスの冷たい麺!」作り方

 ラスボスの冷たい麺!

<スイカだしを引く>

小玉スイカの上部1/3あたりに庖丁を入れて割り、下部の果肉をくり抜く。残った皮を釜にする。
①の果肉の種を取り、ミキサーにかける。さらしに取って絞る。

スイカの搾り汁

鍋に②の果汁と、その約1%量の昆布を加えて火にかけ、沸騰させないように昆布を煮出す。赤い色素が浮いてきたら、キッチンペーパーで濾し、冷やしておく。

スイカだしを引く

<キュウリだしを引く>

キュウリを適宜切り、ミキサーにかける。さらしに取って絞る。
鍋に④の果汁と、その約1%量の昆布を加えて火にかけ、沸騰させないように昆布を煮出す。緑の色素が浮いてきたら、キッチンペーパーで濾し、冷やしておく。

キュウリだしを引く

<トマトだしを引く>

トマトはヘタを取り、適宜切ってミキサーにかける。
鍋に⑥と、その0.8%量の塩を加え、軽く火にかける。
キッチンペーパーで濾し、冷やしておく。

トマトだしを引く

<仕上げ>

スイカだし200㎖・キュウリだし100㎖・トマトだし100㎖を合わせ、レモン果汁10㎖・薄口醤油15㎖・水塩10㎖(塩2.5gでも可)を加えて味を調える。
ビーフンをやや柔らかめに茹で、冷水で締めて水気を切る。
①のスイカ釜に⑩を入れ、⑨を注ぎ入れる。ジュンサイ、椎茸の旨煮とキュウリの細切り、種を取ったスイカを盛り、ミョウガ、素揚げしたスイカの種と花穂ジソをあしらう。

村田さんが考える「近未来和食」とは?

『菊乃井』村田吉弘さんと『衹園さゝ木』佐々木 浩さん

座敷に場所を移して、最後は試食会。その和やかな様子は、MBS動画イズムTVerをチェックしていただくとして。

佐々木さんは、冷たいビーフンのコシのある食感が気に入ったご様子。
「最近はアレルギーの人が多いからグルテンフリーの麺を取り寄せて試してみたけど、ケンミンの『お米100%ビーフン』が、冷たい果菜のだしによぉ合(お)うてたんや」と、村田さん。

ケンミン「お米100%ビーフン」ケンミン食品の「お米100%ビーフン」は良質な硬質米を吟味して作った、米だけのピーフン。コシのある食感が特徴。「つるっとした舌触りもいいですね」と佐々木さん。

野菜不足と言われる現代人に向けた、だしまで野菜という冷たい麺料理の提案。しかも、皮ごと用い、スイカは種も使って、ほぼロスはなし。

「トマトの残りカスは、うちではまかないのカレーに入れる。キュウリの搾りカスは、和え衣に使ってもええね。スイカはほとんどが水分やから、あまり残らんかったけど、火を通して濾した後の果肉はめっちゃ甘くて、ジャムにしたら美味しそうやったな」と村田さん。徹底している。

スイカ・キュウリ・トマトのだし

試食を終え、改めて聞いてみた。村田さんの考える「近未来和食」とは?

「少し先の未来に提案したい和食。今、我々が直面している食の課題を解決する提案を盛り込んだ料理、ということになるけど、僕は今回、カツオ節や昆布だけやのうて、いろんな食材からだしが取れることを伝えたかったんや」。

なるほど、それで果菜のだし。そこに込めた想いとは?

「現代人は、豪華な魚介や肉類ばかりに目が行き過ぎて、野菜本来のうま味をしみじみ味わう、ということが足りてへん。
京料理では昔から、少しのたんぱく質で野菜を炊いて、その煮汁まで食べる工夫がされてきた。たんぱく質っていうのは、動物性の食材のことやね。けれど、そこに頼らず、その分のうま味を補う工夫をしたら、新しい料理も生まれるし、いろんな食の課題解決にも繋がっていくと考えたワケやね」。

深く頷きながら話を聞いていた佐々木さん、次回の担当とあって、どうやらプレッシャーが沸き上がってきたご様子。
「こんな高度な料理作られたら、次の僕が困りますやん(笑)。京都は水の文化やから、僕もだしを工夫した一品を考えてます。次のオンエアは9月13日、頑張ります!」。

MBS 料理エンターテインメント番組「7Chefs」
毎月第2水曜日 深夜2:30~ ※TVer・MBS動画イズムで放送後約1カ月配信。
【公式HP】https://www.mbs.jp/7chefs/
【TVer 7Chefs】https://tver.jp/lp/series/srnv9mk4or
【MBS動画イズム 7Chefs】https://dizm.mbs.jp/program/7chefs

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