【レシピ付き】東京・銀座『金田中 庵』其の二:大目鮭の焼き物とご飯
料亭『新ばし金田中』の食い切り料理を銀座で受け継ぐ割烹『金田中 庵(あん)』。アラカルトが主体となる夜の品書きには、数十種類の旬の一品が並びます。冒頭には「今月の選りすぐり」として、これぞという食材2種を記載。約1カ月、毎週仕立てを変えて供するスタイルが名物となっています。毎年6月、必ず登場するのが青森から届く大目(おおめ)鮭。時季外れの鮭ですが、脂が多く、旨みも充実しています。「まずは旬味をストレートに楽しんでもらいます」という第1週目の料理のレシピを、料理長・渡邉 厚さんに教えていただきました。
柏原光太郎(かしわばらこうたろう):1963年東京生まれ。慶應義塾大学を卒業後、株式会社文藝春秋に入社。『東京いい店うまい店』編集長、食のEC『文春マルシェ』立ち上げの後、独立。食の社交倶楽部「日本ガストロノミー協会」を設立し、会長に。食べログフォロワー5万人以上。外食産業、地方創生関係者との繋がりも深い。著書に『ニッポン美食立国論』(日刊現代)。
6月の“選りすぐり”は大目鮭
『金田中 庵』の品書きの筆頭には「今月の選りすぐり」とある。渡邉 厚料理長が今の季節を感じさせる一番の食材を産地と共に記したものだ。
特徴的なのは、旬が終わるまで約1カ月間、毎週、料理を変えて提供されること。引き出しが多くなければできない匠の技だ。
6月は青森で揚がる大目鮭。春先から初夏にかけて三陸で水揚げされる鮭の名で、大目マスとも呼ばれる。北海道では時不知(ときしらず)、時鮭として名が通っている。
この日の大目鮭は4.7㎏。体長80㎝の立派な姿。捌いた身は美しい朱色で、特に腹側にたっぷり脂がのっているのが分かる。
鮭は秋が旬なので、大目鮭は季節外れの鮭。とはいえ、冬の海を回遊してきたので脂はのっている。産卵期ではないため、卵巣や白子に栄養を取られておらず、旨みも充実しているのだ。
秋鮭よりも柔らかく、脂はたっぷりとあるが、味わいはしつこくない。そんなこの時季の鮭は、繊細な脂の旨みをどう生かすかが大切だ、と渡邉料理長は言う。
第1週目はシンプルに焼いて、大目鮭の醍醐味を楽しませる。2週目には趣向を変えて、薄切りの大目鮭をゴボウや椎茸などの野菜とだしにさっと潜らせる、沢煮風の小鍋。さらにその翌週は、塩〆して焼き、ゴマやガリと共に寿司飯に混ぜ合わせ、笹で巻いた手こね寿司風に。
季節の食材とはいえ、そこには走りがあり、旬を経て、名残に向かう。その時々に応じて調理法を変える。また、季節の変わり目ならば、週ごとに移ろう気候に応じて調理法を考える。そんな細やかな食材との向き合い方が、常連を惹きつけて離さない『金田中 庵』の強みだと思う。
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