【レシピ付き】大根が主役の一品 Vol.2 東京『割烹 有いち』
閑静な住宅地が広がる東京・荻窪。駅前ロータリーの一角にひっそりとたたずむ『割烹 有(ゆう)いち』は、地元で長く愛されている小さな日本料理店です。酒飲みならずとも思わず頬が緩む気の利いた酒肴、手間を惜しまぬ八寸、ふっくらと焼き上がった魚、締めの手打ち蕎麦まで、店主・橘 光太郎さんの丁寧で真摯な仕事ぶりが随所に光ります。
ことに評判が高いのが、10種類ほどの季節野菜をそれぞれに合うだしで煮含めた“炊合せ”。この時季の主役は、何といっても甘く柔らかな冬大根です。きちんと手をかけたからこその美味しさが伝わる「煮穴子と大根の砧(きぬた)巻き」は、常備菜や椀種としても重宝する汎用性の高い師走の一品です。
東京・荻窪『割烹 有いち』橘 光太郎さん作
煮穴子と大根の砧巻き
「冬大根の甘く柔らかな特徴を生かして、一品料理や八寸、椀種にも使える“砧巻き”にしました」と橘さん。桂剥きにして蒸し上げた大根を何層にも巻いてミルフィーユ状にした大根のとろけるような食感、大根の甘みと穴子の旨みが渾然一体になった深い滋味に驚かされる。「煮穴子のほかに針ショウガや京にんじんを挟んでも美味しくできますが、今回はあくまで大根が主役。冬大根の美味しさをストレートに味わえるようシンプルに仕上げました。煮穴子の代わりに、身欠きニシン(ニシンの干物)などを巻いてもいいですね」。店ではこのまま冷製または温製の小鉢で。また、季節の八寸に盛り込むことも。春菊と一緒に炊合せにするのもおすすめだ。
煮穴子との一体感を生む、桂剥き
大根は幅広の桂剥きにし、ロール状に巻いて蒸し上げる。「火を入れますから、厚さも刺身のツマのように薄ければいいというわけではありません。程よい厚さの桂剥きにすることで、柔らかな煮穴子と一体感が生まれ、食べた時に口にとろっと溶けます」と橘さん。気を付けたいのは、大根によって火の通りが違うこと。20分で蒸し上がるものもあれば、40分かかる硬めのものもあるため、おおよそ30分程度を目安に調整する。
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