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【レシピ付き】夏の冷やし鉢 Vol.2 大阪『靱本町がく』

大阪・靱(うつぼ)公園近くにある割烹『靱本町がく』。店主・今川 岳さんは、浪速割烹の心意気を軸に、枠に囚われない料理をコースにて展開します。今回のお題・夏の冷やし鉢には「夏のコース料理の前菜にぴったりの冷たい炊合せ」として、牛スネ肉と豚の耳を用いた煮凝りを提案。乳酸発酵させた毛馬(けま)胡瓜の柔らかな酸味を合わせます。和洋の名店で経験を積んだ、今川さんらしい遊び心にも注目です。

文:船井香緒里 / 撮影:高見尊裕

目次


大阪『靱本町がく』今川 岳さん作 
なにわ黒牛のスネと豚の耳の煮こごり 発酵毛馬胡瓜の八方煮

「鉢物とは通常、コース料理の中で焼物からご飯物へと繋がる“もうひと山”という存在です」と今川さん。
しかし今回は「ビールやシャンパーニュが寄り添うような、前菜に向く夏向きの炊合せを考えました」と、牛スネと豚耳からなる煮凝りの澄んだ旨みに、乳酸発酵させた毛馬胡瓜を組み合わせた。

両者を繋ぐのは、甘酢やスダチの酸味を効かせた香味野菜ダレ。食べ応えをもたせながらも、異なる酸味が舌を喜ばせる、清々しい仕立てだ。

フランス料理をヒントに、和のニュアンスを加えて

あっさりとした脂と赤身の深い旨みが特徴のなにわ黒牛は、「赤身肉の焼物など、いつもは精肉を用いることが多い」という。しかし今回は「煮込むからこそ美味しい部位を」と、牛スネ肉を煮凝りにして、豚の耳を合わせることで小気味良い食感をもたせた。

「発想の源は、フランス料理の豚の頭部のテリーヌ『フロマージュ・ド・テット』です」とは、かつて名ビストロでも経験を積んだ今川さんらしい独創性だ。

いずれの肉も茹でこぼし、水と酒で蒸し煮にした後に、醤油やみりん、塩などで味を煮含める。「野暮ったい味にならないよう、醤油やみりんは控えめに」。塩をベースにした「すっきりとした味」に仕立てるという。さらに、実山椒や針ショウガといった和のニュアンスを煮凝りに忍ばせる。

さらに、もうひと工夫。「フロマージュ・ド・テットには、酸味のあるラヴィコットソースの組合せが定番ですから」と、新ショウガの甘酢漬けやスダチの搾り汁といった、爽やかな酸味を利かせた香味野菜のタレを添える。

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