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【レシピ付き】石川・山中温泉『花紫』の「能登寒ブリとカブの薪燻製ポン酢ジュレ」

冬の山中温泉『花紫』を訪れる宿泊客のお目当ては、何といっても能登の寒ブリと加能ガニ。なかでも寒ブリは、能登町鵜川の「日の出大敷」から届く一級品とあれば期待も高まります。今回は、2025年12月から提供を開始した、料理長・中村雅和さん考案の新作メニュー「能登寒ブリとカブの薪燻製ポン酢ジュレ」をレシピ付きでご紹介。カブとポン酢に施した一技にも注目です。

文:坂下有紀 / 撮影:松田咲香

目次


「いいブリは生で食べる」──それでも「ブリしゃぶ」にする理由

『花紫』は『山田屋旅館』として明治35年(1902年)に創業した。当初から内湯を備えた珍しい宿として愛されてきたが、現在は大規模な改装・リニューアルを行い、伝統と現代アート、地域の工芸を融合させた文化サロンのような宿へと進化し、多くの人に親しまれている。

2022年のリニューアルでは茶房・ショップ・ギャラリーを新設、2023・24年に新たなスイートルームも完成させ、若いスタッフの採用や働き方などにも革新の手を入れた。料理は日本食の伝統と哲学に基づいた本格的な懐石料理でありながら、現代の創意を取り入れた新しい食体験を提供。料理長・中村雅和さんが吟味を重ねた旬の献立と粋な器で、石川の風土が詰まった一皿を振る舞っている。

中村さんが『花紫』の料理長に就任したのは2024年。以来、野菜、魚、肉などさまざまな生産地・生産者のもとを訪れ、食材の発掘と魅力の引き出し方を学び続けている。

今回紹介する料理も懇意にする能登町鵜川「日の出大敷」の寒ブリがあってこそ。網元の中田洋助さんとは事前にどのような料理に仕立てるのかを共有し、確かな処理を経て『花紫』に届く。

「船上での活け締めでしっかりと血抜きされたブリは鮮度が良いだけでなく、港に着いてすぐ加工場へ持ち込まれ、神経、内臓、血合いなどが取り除かれているので雑味がありません。さらに熟成させることで旨みが増す。料理やタイミングによって部位を使い分けています」と中村さん。

今回の料理が生まれたのは「なかなか本当においしいブリしゃぶに出会えない」という、中田さんの一言がきっかけだった。生で食べて真価を発揮する寒ブリを、あえて「ブリしゃぶ」にするならどうすべきか。この一皿は、その問いから始まっている。

「日の出大敷」網元の中田洋助さん(左)と『花紫』料理長の中村雅和さん(右)。この日、中村さんは漁船に乗って漁の現場を見学。今回の新作メニューについて共有し、この寒ブリを仕入れた。

中村さんはまず、ブリしゃぶに最適な部位として腹身のなかでも特に脂がのった「ブリトロ」を選んだ。鍋で温めただしにくぐらせ、火を通す時間はごくわずか。口に含むと脂がすっとほどけ、生の刺身とは異なる甘みが広がり、後述するカブやポン酢ジュレとのなじみもよくなる。“火を入れる”というより、ほどよく“脂を溶かす”ための一手間といえるだろう。

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