「祇園さゝ木」一門会、師弟セッション

Vol.1前編 テーマは「先付」。師匠の春の“掴み”とは?

エキサイティングで前衛的な料理と、“劇場型”と呼ばれるライブ感あるカウンターのもてなしで名高い、日本屈指の人気割烹『祇園さゝ木』。店主・佐々木 浩さんと、その薫陶を受けた一門会のメンバーによる連載がスタート!
会席の品書きをテーマにした師弟セッション、第1回目は「先付」。前編は、師匠・佐々木さんの新作を、『料理屋まえかわ』前川浩一さんが味わいます。

文:船井香緒里 / 撮影:高見尊裕
佐々木 浩さん(『祇園 さゝ木』店主)

1961年、奈良県生まれ。前衛的な味と軽妙な話術で場を盛り上げるカウンターの名手。1997年の開店以降、その独創性で脚光を浴び、2006年現在の地に移転してからはいよいよカリスマ性を発揮。個性豊かな料理人を育て、「一門会」は人気店主の集まりに。

前川浩一さん(『料理屋まえかわ』店主)

1982年、長崎県生まれ。『祇園 さゝ木』での修業は25歳から。13年間勤め、最後は料理長に。2020年6月、京都・西木屋町にて独立。洋も中華も和食に着地させる、枠に囚われぬ感性が評判を呼ぶ。割烹の新星として注目を集めている。

ハマグリを主役に、車海老の泡と発酵キャベツの酸味

前川浩一(以下:前川)
弟子と師匠のセッションということで、担当決めは早いもん勝ちでした。僕が先付を担当させていただきます。まずお聞きしたいのですが、おやっさんにとって「先付」とは?
佐々木 浩(以下:佐々木)
僕が考える先付の極意とは──。「ワクワク感」「掴(つか)み」そして「緊張感」やね。コース料理の最初にお出しする献立やから、まず、お客様に心を開いてもらわないと。そのためには期待感を上げ、ぐっとハートを掴む仕掛けが大切やなと。
前川:
おやっさんらしいですね。

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佐々木:
せやけどそこで、高級食材を何種類も盛り込む…というのではセンスないわな。かといって、素朴な一品やと締まりがなくなり、ワクワク感も期待値も半減する。
前川:
確かに。菜の花のお浸しが出てきたら春を感じますが、面白さには欠けますよね。
佐々木:
そういうことや。高級食材に頼らず、「この後に、どんな料理が続くんだろう…」とお客様に、少しの緊張感と期待感を持っていただくための突破口。それこそが先付の役割やと思う。
前川:
こうして独立しても、おやっさんから学べるのが「祇園さゝ木 一門会」の強みだと思います。

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佐々木:
よっしゃ、それじゃあ、お客様と同じようにお出しさせてもらおかな。天然のハマグリと車海老です。ウドと乳酸発酵させた春キャベツ、そこにハマグリのジュレと車海老の泡を盛りました。どうぞ、お好きなように食べてください。

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前川:
いただきます(黙々と味わう前川さん)。
美味しいです、そして懐かしい…。おやっさんの味って感じです。多分、貝類は使わはるやろなと思ってました。僕の目論見、当たりました!(笑)。
佐々木:
なかなか鋭いヨミやんか。春の貝類は、味が濃くて旨いから大好きやねん。

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前川:
この先付は、ハマグリのエキス感と旨みをダイレクトに感じます。そこに、車海老の泡でさりげなく香りを添える。僕やったら、車海老の香ばしさや旨みをもっと強く出したい思ってしまう…。その点、おやっさんの先付は、クリアな味わいでいて、どこまでも優しいです。
佐々木:
最初の一品やからね、口の中をクリーンにしてもらうのも大切なんや。せやからウチの先付には必ず酸味が入ってるやろ?
前川:
その教えは僕の中に刻まれているんで、『料理屋まえかわ』でも踏襲しています。でも、酸味に乳酸発酵させた春キャベツを持ってくるとは…。おやっさんは想像の一つ上をいきますね。これは想定外でした。

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佐々木:
塩をして発酵床で3日寝かせてる。キュッとくる程よい酸味がえぇやろ。
前川:
春キャベツのすっきりとした味わいで胃が活性化します。その酸味と、ハマグリが放つクリアで清らかな味わい。両者の相性にただただ驚くばかりです!
佐々木:
嬉しいこと言うてくれるねぇ。足して足して味を重ねるよりは、スパッと引くのが大事。主役は一つで良くって、どの部分を際立たせるかに軸足を置くべきやなと。
前川:
この先付の場合、主役は車海老やなくハマグリですね。
佐々木:
そういうことや。車海老は脇役。身は湯引きにしてシンプルに持ち味と食感を楽しませる。オーブンで焼いた頭は昆布だして軽く煮出し、そのエキスを泡にしてふわっと添えるだけ。

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前川:
一口目にハマグリの透き通った旨みを感じ、噛むほどに春キャベツの酸味が追いかけてきて、海老の泡の香りが時間差でやってくる…。春らしさを、立体的に存分に感じる先付です。まさに、次に続く料理に期待感が膨らみます! 勉強になりました。
次は僕の先付を食べていただきます。おやっさんが魚介で攻めてくると思ってましたから、別のアプローチを考えました。期待していてください!(後編に続く)

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