「祇園さゝ木」一門会、師弟セッション

『衹園さゝ木』3月の献立会議【前編】

京都『衹園さゝ木』で3/11~4/8に提供する夜コースの内容を決める献立会議前編。弟子からは積極的な提案が上がり、店主・佐々木 浩さんは長年の経験をもとに献立の絵を描いていきます。いい意見は柔軟に取り入れ、自らが考えた献立も提案。「師弟」の関係性としても参考になります。


『衹園さゝ木』の献立会議:2023年、リニューアルを経てコンセプトを「師弟で挑む味づくり」に。調理スタッフと共にアイデアを出し合い、若い感性と佐々木さんの経験値を掛け合わせ、献立を組み立てる。夜のコースは基本的に、先付、前菜、椀、向付2品、鮨2カン、焼き物、進肴(すすめざかな)、鉢物、ご飯物、デザート。昼のコースは夜のメニューを取り入れつつ、料理6品、ご飯、デザートで構成する。献立会議を経た後、すべての料理を試作し、改めて試食会でサービススタッフや姉妹店『衹園 楽味』のスタッフが試食、最終チェック。料理内容は、その都度、修正・改良が加えられる。

文:阪口 香 / 撮影:高見尊裕

目次

佐々木 浩さん(『衹園 さゝ木』店主)

1961年、奈良県生まれ。前衛的な味と軽妙な話術で場を盛り上げるカウンターの名手。97年に独立し、衹園町北側に『衹園 さゝ木』開店。2006年、現在の地に移転してからはいよいよカリスマ性を発揮。「弟子を育てる店造りを」と改装を施し、23年8月、リニューアルオープンを果たす。

調理スタッフは、右より煮方を務める坂東春樹さん、田中涼平さん、千谷友哉さん、桑原汰知(たいち)さん、ピスケルニック・ナディアさん、下澤海里(かいり)さん。

先付

佐々木:
えー、今回決めるのは3/11から4/8の献立ですね。予報では今日(2/25)以降どんどんあったかくなっていく。でも、寒波の影響で市場にまだ出てこない食材も多いし「春満開!」という料理は4月に。3月は「春めいた」感じでいきましょう。

ほな、じゃんじゃん意見を出していこう!
まずは先付からいきましょか。
坂東:
塩焼きしたフグ白子をメインに考えました。器に焼いた春キャベツとフグだしを合わせたピュレを敷き、泡状のスダチ果汁で酸味を添えます。
佐々木
うーん、それは食材の扱い方としてどうかな。
なんでせっかく出てきた春キャベツをピュレにするんや?食材には「走り」「旬」「名残」があって、走りは高価で珍しいもの。そのままストレートに仕立てるのが一番なんや。旬は華やいだ料理に仕立て、名残はつぶしてどう使うかで料理人の技量を見せる。それが一番いい料理の姿やと僕は思う。
つぶしてピュレにするなら、春キャベツじゃなくていいんじゃないの。もったいないと思うわ。
田中:
僕は、生春巻きの皮に炭火で焼くか蒸した春キャベツを重ね、具とソースを巻いた2カンでお出しするのはどうかと思ってます。
一つは炒めたホタテ、ウルイ、菜の花、ウドを巻き、カリフラワーと飯(いい)のソースで。
もう一つはホタテの代わりにホタルイカを使い、辛子酢味噌を合わせたもの。
春キャベツのグリーンが透けて見え、キレイな一品に仕上がると思います。
佐々木:
それなら、春キャベツは蒸すか茹でるかする方がええんちゃうかな。焼くとムラができると思うわ。
もしくは春キャベツは巻かずに千切りをサッと炒め、具の芯に入れた方がうまい気がする。
ナディア:
フキノトウの天ぷらに、味噌をのせたものはどうでしょう。
佐々木:
それやと箸休めになっちゃうねんなぁ。
千谷:
アサリだしに炒めた新玉ネギ、菜の花を合わせた冷製スープがいいかな、と思ってます。具材はスナップエンドウとウド。
下澤:
僕が考えたのは、器に練りゴマ入りの白酢ソースを敷き、奥に地漬けしたウルイとコゴミ、手前にサクラマスを盛った一品。サクラマスは皮目をしっかり焼いて、中はレアに。ラディッシュを添え、クレソンのオイルをかけます。
佐々木:
クレソンのオイルか、なかなかオシャレやんか。
桑原:
僕は2品仕立てで考えました。一つは、この時季、先付からお椀まで野菜がメインになるので、そのヘタでとった野菜だし。食感に炊いたラッキョウを1つ入れ、春菊のオイルを落とします。
もう一つは白エビの料理。セルクルに炒めたネギとピクルス液に漬けたネギ、刻んだショウガを詰め、シロエビを盛ります。スダチの酸味とアサツキの香り、長芋で食感を足す。野菜だしを飲んだ後に、シロエビと酸味で口の中をリセットするイメージです。

佐々木:
なるほど。
でもそれならシロエビと野菜を盛った皿に、ジュレ状の野菜だしをかけて一皿にした方がええと思う。その方が春っぽいわ。野菜はウルイ、ウドの酒煎り、スナップエンドウあたり。

よし、一旦、これを先付としよか。他の料理とのバランスをみて、調整していこう。

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